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特訓開始

「ヒロトのくせにやり返そうとかしてんじゃねぇ! 避けろ! 防げ! 守れ! 受け流せ! バカヤロウ! 目つぶるな! 」


 猛特訓中だ。


「切ろうとするな! 殴れ! 大振り過ぎる! 脇締めろ! そう! 隙が出来たら引け! 目を逸らすな! バカヤロウ! 背中向けてんじゃねぇ!」


 もう、ボロクソだ。そしてボロボロだ。


「ハザン、休憩、も、無理」


 仰向けに倒れる。ああ、空が青いな。



「とーたん、あい!」


 ハナが俺の顔を覗き込み、ビシャビシャに濡れた布を被せる。


 ああ、冷たくてめっちゃ気持ちいい。でもハナ、お父さん息が出来ないかも。


 どうにか上半身を起こし、ハナを抱く。





 あの日、なんとか大岩ファミリーに、旅立ちの承諾を得た。リュートは最後まで、俺はヒロトの家族だから一緒に行く、と言い張っていた。妊娠中のラーナを置いて行ける訳ねぇじゃねぇか。アホか。


 つぎはキャラバンの連中に話を通そうと、シュメリルールに行って全員集めた。ロレンの店の会議室っぽい部屋で、


『ナナミらしき耳なしがいる街、または確実に手紙が届いた街の教会』が特定出来次第、三人で旅立つつもりでいる事を伝えた。


 まぁ、多少は反対されるだろうとは思っていた。俺の戦闘力なんて、あいつらに比べたらない(チマ)みたいなもんだ。


 大反対だった。


「俺の大事なハルとハナを危険な目に合わすつもりか!」と、ハザンに言われた。


 誰がおまえのだよ。ハルもハナも俺のだ! それだけは譲らん!



 自分の嫁を迎えに行くのに護衛付きじゃ、格好つかねぇじゃねぇか。


 そんな風に言ってみた。


「今更ですね。ラーザも、ポーラポーラも、ちゃんと商売になりました。ザトバランガ地方は、おいしい匂いがします。ヒロトのためじゃありません」


 ロレンが言った。ツンデレ気味な応えになってるぞ。


「ハナを連れて行きたい。どうしても」


 商会の立場としては、許容出来ない話なのだ。ロレンが口籠くちごもる。


 すまんなロレン。俺はおまえを言い負かしたい訳じゃないんだ。上手く説明出来ないけど、願掛け、とか大切な儀式、みたいな気持ちに近い。


 ナナミを家族揃って迎えに行く。この世界に飛ばされて来た日から、そうしたいとずっと思っていた。でも、それは余りにも、余りにも無謀が過ぎた。言葉もわからず、身を守るすべもなく、移動の方法すらなかった。


 まだ万全には程遠い。だが、万全なんて、きっとずっと無理だ。無茶も危険も承知の上で、それでも俺は、三人で旅立つ事を望んでいた。


「まぁ、ヒロトの気持ちは、みんな本当はわかってるさ」


 ガンザが言った。


「おまえら、惚れた女を迎えに行くのに、誰かの手が借りたいか? 仕事のついでに迎えに行く、それでいいのか?」


 ヒロトの男の意地、通させてやれよ。今のヒロトなら、きっとハルとハナを守れるさ。信じてやれよ。







 そんなやり取りの後の、この特訓である。俺に拒否権はない。この後、アンガーによる武器を使わない徒手空拳としゅくうけんの特訓が待っている。その後は、トプルの防御術の為の足捌きの練習。


 まだまだ終わらない。ヤーモとガンザのサバイバル術の訓練、ロレンのこの世界の常識と詐欺師や拐かしへの対抗策の座学。


 繰り返し言うが、俺に拒否権はない。




 ああ、空が、本当に青い。

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