表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/181

ポーラポーラ

更新が滞りました。もし、待っている方がいらしたとしたら、ごめんなさい! 安定しない更新で、不安に感じる方がいるのでしょうか。安心して下さい! 放置など絶対にしません。私もヒロトも絶対に諦めたりしません。


必ず皆さんを、この旅の終着地点へと連れてゆきます。だからどうか、ヒロトの旅を一緒に楽しんで下さいね。












 砂嵐をなんとか、まあ、そこそこ無事に乗り切ってから2日。俺たちはほぼ予定通りに砂漠を越え、宝石の産地『ポーラポーラ』へと到着した。


 この街の警備は、他の街とは比べものにならないくらい厳重だった。街へと続く道は、そびえ立つ岩山に挟まれた一本道のみ。この道の入り口と、街の手前二ヶ所に門があり、衛兵がいるのだ。


 この世界における宝石の定義は、地球とあまり変わらない。つまり、少ししか産出されないのに、綺麗だからみんなが欲しがって、値段が高くなった石だ。俺は地球の宝石の事さえ良く知らないので、この世界の宝石の事など、全然わからない。とても綺麗だという事以外は。


 金になる物には、人が群がる。中には人の道から外れても、手に入れたいやからもいる。そんな事情がこの街に門を作り、衛兵を立たせるのだろう。





 ポーラポーラは、宝石を買いに来た人と、それにたずさわる人しかいない、ある意味完成された、そしていびつな街だった。


 ほとんどの人は、砂漠とは反対の海側からやってくる。街道の途切れた砂漠を、わざわざ越えて来る商人は少ない。つまり、サラサスーンに宝石が入ってくるルートは、海側から大きく回り込んでいるのだ。ポーラポーラの宝石は、そのルートを辿たどるうちに、いくつもの人の手を経由して、その度に値が上がって行く。


 ロレンはこのルートを、強引にショートカットしようとしているのだ。成功すれば、さぞかしもうかるのだろう。


 なんとなく、ロレンと大儲けがイコールで繋がらない。少なくとも俺が見てきたロレンとは。


 今回の取引とりひきは、安く仕入れて高く売る、という商売の鉄則を守りながらも、誰かが困る訳ではない。自分のお人好しを恥じているロレンが、負ける人が誰もいない商売を模索もさくしているのだろう。


 バカだなぁロレン。おまえのお人好しは、いい仕事をしているじゃねぇか。チョマ族の族長の尾羽は開いていたし、ドルンゾ山のふもとの村はラーザの干物を楽しみにしている。


 砂漠の小さな集落の女の子が、サラサスーン産のトマトをかじった時の顔、見ただろう? あの顔は、おまえのものなんだよ。


 ロレンがあの顔を見たいと言うから、おまえのキャラバンの面子メンツは砂漠を越えちまうじゃねぇか。あいつらも大概たいがいなお人好しだ。


 おまえは、大儲けしたとしても大金持ちには、たぶんなれねぇな。みんなわかってるさ。だから思うようにやれよ。





 とまぁ、いつかロレンにそんな事を言ってやりたいとは思う。俺の異世界語レベルがあと30も上がったら、伝わるように言えるだろうか。


 一年後くらいを目標にしよう。素面しらふで言える気もしないけどな。あ、俺酒に酔わねぇ体質だった! まぁいいか。




 ロレンが宝石の買い付けという鉄火場てっかばいどむ頃、俺とハルはポーラポーラの街を出て海辺の街『ミトト』を目指す。


 ミトトは港のある大きな街だ。この世界にも、荷物や人を運ぶ大きな船があるそうだ。往復で二、三日。少しみんなを待たせてしまう事になる。


 せめて何かナナミに関する情報が欲しい。


 ああ、また俺は期待値の上限を下げているな。ナナミに逢えなかった場合を想定して、自分を守ろうとしている。


 気がつくと俺は、小さな声でビートルズのlet it beを口ずさんでいた。


 この曲は歌い始めると、いつまでも終わらない。エンドレスで繰り返してしまう。そのうちにハルも覚えて一緒に歌い出した。


 俺たちは砂漠の名残りの風にあおられながら、あくびの背中でいつまでも同じフレーズを、繰り返し口ずさんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ