4-9. 魔王の国造り 旧魔王領の悪魔(3)
前のを読み返して見ると恥ずかしい誤字脱字が(-_-;)
すいません、そのうち直します。
アル様がフェンリルと飛び立ってから3時間は経っただろうか。
ボスの暗殺に意外と手こずってる?
いや、その割りには戦闘による魔力の発動が感じられない。
小さな小競り合いなら、城からかなり離れているしここからじゃわからない事もあるだろうけど、、、
あのアルが手こずるような戦いが始まっているならそんなレベルの戦いで収まる筈がない。
隙を伺っているうちに時間が経っていて、まだ突入していないことも考えられる。
念話を繋げば早いのだけど、それがアル様の邪魔になる可能性もある。
トラブル?ううん、、、ちがうな、、、多分、、、。
体よくおいていかれた!
怒りがふつふつとわいてくるのがわかる。
「ねぇ?アイリ様、、、あれ、、、」
沸き上がる怒りに両手をわなわなさせていたところに、不意にウェンディが話しかけてきた。
「え!?あ、どうしたの?」
「あっちの森の中から誰かくるにゃ!沢山にゃよ!」
「え?どこだ?」
「わ、わたしには見えないけど」
カケル君とシルフィがウェンディの指差す方向にじっと目を凝らすが何も見えない。
あたしも隠れている木々の隙間から顔を覗かせて、目を凝らすけど特に何も変わったところはない。
「ウェンディの勘違いじゃないのか?」
「違うにゃ!よく見るにゃ!」
そんな嘘をつく子じゃないし、勘違いっぽくもない。
影移動の時に使うスキル、影サーチを展開してみる。
移動できそうな影を探るスキルだけど、同時に動く影を感知するのに使う事も出きる。
範囲はそれほど広くはないけど、サーチ方向を絞れば距離を伸ばす事ができる。
サーチ範囲をウェンディの言う方向だけに絞り、その代わりに距離を少しだけ伸ばす。
でも、人らしき影の移動は感じられない?
やっぱり、、、なにもいなっ!?
「ヤバッ!隠れて!みんな!」
「影隠し!」
あたしの反応を見たウェンディが即座にスキルを発動させる
その少し後に近くを通る足音が聞こえてくる。
影の中から外の様子がわかるようにウェンディが映像を出してくれている。
この子、、、当たり前のように高等スキルを使っている。
凄いかも。
「それにしても、こんなに接近されるまで気付けなかったなんて。」
「ウェンディは良くわかったな?アイリ様も気づいて無かったのに!」
「えっへんにゃ!匂いと音が聞こえるにゃ!でも、凄く小さかったからもっと離れているとおもってたにゃー。」
「それでも凄いよ!ウェンディちゃん!」
みんなから誉められて照れるウェンディ。
照れている姿がとても可愛い。
それにしても、影サーチにすら掛からないなんて普通じゃない。
認識阻害のスキルをもっている敵がいる?
獣人であるウェンディだからこそ、漏れでた僅かな匂いと音に気づけたのかも。
あんなに大勢を隠せるなんて並みの術者じゃない。
全員で100人以上はいそう。
その中で半分の50人位の魔族と人の兵が10人位。
護衛?っぽい兵士、、、人と魔族の混成!?
残り半分は民間人っぽいけど。
「みんな捕まっているにゃ。」
「捕まった人達だ、、、」
兵士の後ろに続く人々は、ボロボロの身なりに、体を縄で縛られ、そしてそれぞれの縄が線上に繋がっていて、見るからに奴隷として連れてこられている。
皆がうつむき暗い表情で絶望に苛まれている。
「殆どが魔族の兵だけど、中には人族の兵、多分正規兵もいる。」
「ど、どうします?」
シルフィが不安気にこちらを見つめる。
「えっと、、、」
進行方向はディアボロス城だから魔族に捕まえられている事には間違いないのだろうけど、何でそこに人族連合加盟国の兵がいるの?
そもそも、この事はアル様は知っているの?
知らずにアル様の邪魔になるならあたしが処理すべき?
どうしよう、、、アル様に念話、、、ううん。
駄目だ!この程度のことはあたしが判断しないと!
でも、あの規模の隊列の認識阻害ができるとなると、強敵の存在が容易に想像できる。
強そうなのは先頭の悪魔と一番後ろの人間の隊長クラスだと思うけど。
最優先は認識阻害スキルを張った奴、多分後ろの人族。
もし一人でも取り逃がしたら応援をよばれてしまう。
そしたら城側の警戒がつよくなる?
アル様にまで迷惑かけちゃうかもしれない。
それはダメ、、、だけど、人の方はかなり強い。
「こ、ここは我慢だよ。アル様の策が成功したら助けに行けるから。」
そう言って、子供達の方を振り向いた。
「カケル君!」
「うにゃ!?」「え??」
咄嗟に影空間の外に飛び出そうとしていたカケル君の手を掴む。
「ダメ!!」
「なんで。助けなきゃ!」
「今は我慢して!アル様が敵のボスを倒してくれているから。」
焦った口調から、徐々に諭すような口調に変化させる。
「大丈夫、あの人達も、ちょっとだけ我慢してもらうことになるけど、必ず助けられるから。」
とにかく落ち着かせなきゃ。
「大丈夫だから。」
「大丈夫って何が?全然大丈夫じゃない!」
「お願い、わかって?アル様が。」
そこまで言いかけた私の言葉を遮って、カケル君は怒った口調で声を上げた。
「わかっていないのはアイリ様だよ!あいつは城を混乱させて敵を減らすつもりだ!」
「だ、だから!そのあと助けに行けば。」
「魔族同士が殺し合うような場所に連れていかれて、あの人達が無事に済むわけないじゃん!!」
「っ!!」
痛いところを突かれた。
「で、でも。」
あなた達を守りながらだと、かなりきつい。
そう言いかけて口をつぐんだ。
駄目だ、それは言っちゃ駄目だ!
でも、、、不味い、それ以外でこの子を納得させられる自信がない。
刹那、城の方からとても強い魔力の解放を感じる。
やっぱり嘘だった、アルが攫われた人を見捨てるわけないもん。
子供達を置いていくため、私を子供達の傍に置いておくための嘘。
でも、まさかカケル君がそこに気づけるなんて。
「だからって、、、君がっ」
しまった!
そこまで言って言葉を止める。
その先は言ってはいけない。
「わかってる。僕じゃ勝てない!だから、戦わない! 何とか時間を引き延ばす。あいつが戻って来るまで。」
「え!?」
「僕は紅蓮族、魔族だから。戦わない足止めはできるはず!!」
この子、冷静だ。
アル様がこの子を「強くなる」と言っていたのを思い出す。
普通なら無謀な義憤に駆られて突撃するか、恐怖に怯えて震えるかなのに。
「アイリ様!」
そう言ってカケル君は微笑んだ。
「大丈夫!いってきます!」
(アイリ。大丈夫だよ。)
「あ、アルさ、、、ま」
一瞬、あたしを助けてくれた頃の幼いアル様とカケル君の顔が重なった。
カケル君を掴んでいた手が緩む。
カケル君はほんのちょっと大きくなった背中をこちらに向けて、影の中から飛び出していった。