3-23. 魔王と天空の誓い アルベルトの複雑な想い
アルとアイリがゼエルと戦っている間にカケル達に何があり、どのような成長をしたのかは外伝で語ります!
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趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
応援、よろしくお願いします。
Twitter:@TamaSala_novel 次回予告を呟くとかつぶやかないとか
外伝:https://ncode.syosetu.com/n5068ex/1/ カケル君達紅蓮隊メインの外伝ストーリーです。2話まで更新済み
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「アイリ、最後まで油断したらダメだと師匠に言われたよな?」
「え!?」
勝利を確信していたアイリの顔が微妙に歪む。
彼女は気づいたんだろう、俺もまた勝利を確信したこと、そして、そういう場合の俺は必ず策を持っているということに。
「お前がフェンリルに乗った瞬間に移動を始めていたら俺は追い付けないまま終わっていたよ。」
俺は魔王スキルを発動させた。
既に実験してある。
部下の部下もまた俺の支配下とされる!!
「魔王スキル:主命!フェンリル!その場で今すぐ帰れ!」
「ク、クォォォン」
「あ!あぁぁ!フェンちゃん!ダメよこらえて!」
フェンリルは苦しそうに鳴きながら体をよじらせている。
「アイリ、こらえられるものじゃないことは、お前が身を持って知っているだろ?」
主命を初めて受けてその強制力の凄さを教えてくれたのは、他でもないアイリ自身なのだから。
フェンリルは抵抗虚しく、アイリを地上に下ろす事も出来ずにその場で消えていった。
「あ!あぁぁぁぁ!」
飛翔魔法の使えないアイリがそのまま落下を始める。
これが地上近くであったなら、そのまま再び走って逃げる事だって可能だったのだろう。
自分自身が飛翔手段を持たないのに不用意に上空に飛ばせてしまったこともアイリの敗因の一つ。
この辺は今後は気を付けてもらいたい。
「そんな!」
アイリは狼狽しながらも、ワイヤーを近くの巨木に向かって発射したが、俺はそのワイヤーの先端に投てき剣を当てて弾いた。
「ああああああああ!」
俺はアイリの真下に移動して落ちてくるアイリを受け止める。
お姫様抱っこの形で俺の腕の中に納まるアイリ。
「きゃっ!」
「アイリ、捕まえたよ?」
ニヤリとして見せるとアイリはさらに顔を赤くして怒り始めた。
「御主人さま!離して!離してよ!!」
「こ、こら!暴れるな!」
「ずるい!ずるいもん!あんなのずるいもん!」
腕の中でギャーギャーと、暴れるアイリをなだめながら地上の開けた野原に降り立った。
既に街から遠く離れていて周囲に明かりはなく、月明かりが辺りを照らすのみだった。
夜空を見上げると大小の兄弟月が寄り添うように空のてっぺんから俺達を見下ろしていた。
「生活魔法:ライト」
俺はアイリを下ろすと、生活魔法で辺りを明るくした。
アイリはぶすっとした表情でソッポを向いている。
まるで親に怒られて拗ねている子供のようだ。
こんなアイリも可愛くて少しだけいじめたくなる気持ちが湧いてきてしまう。
でも、今の状況で今回みたいな事は、大事になりかねない。
ちゃんと怒っておかないと。
「アイリ!あんな事があったばかりなのに何を考えているんだ!またゼエルみたいなのに狙われたらどうする!」
「知らないもん!御主人さまが悪いんだ!また、あたしを邪魔者扱いするから!」
「だから勘違いだって言ってるじゃないか。」
「だって!帝都ではあたしを皇帝に押し付けようとしたもん!絶対に許さないんだからね!」
「あれはアイリの事を考えて!」
「なんで!?あたしの事を?あたしは!」
アイリが激しく怒りながら俺に詰めよってきた。
目から大粒の涙がこぼれ始めた。
「約束したくせに!ずっとそばにいてくれるって!約束した癖に!なんでよ!」
俺の胸に顔を埋めてぎゅっとしがみついてきた。
「あたし頑張るから!何でも出来るようになるから、、、もぅ、あんな奴に負けないから!今さら、、、捨てないで、、、お願いだから。」
「アイリ、、、。」
アイリは自分もウェンディと同じだと語っていたのを思い出した。
彼女は未だに恐れているんだ、、、俺に捨てられる事を。
俺はアイリをそのまま強く抱き締めた。
「あっ。」
アイリの体がビクリと硬直する。
両肩を掴み少しだけ体を離してアイリの目を見つめる。
「アイリ。聞いてくれ。」
アイリの目が怯えてうろちょろとせわしなくうごいている。
まわりくどい言い方は逆効果だろうな?
ストレートに、まず、今のアイリに伝えることは。
「一生俺の近くにいて欲しいって伝えたかったんだよ?」
「えっ!?」
アイリは想像していない言葉に驚き目を大きく見開いてキョトンとしている。
「またいつ、ゼエルが襲ってくるかもわからない。アイリが目に見える所にいないとすごく不安になる。」
「ご、御主人さま。」
俺の素直なきもち。
死と隣り合わせの俺のそばにいるのは危ないからアイリから離れよう、離れなきゃいいけないと思っていた。
そう、自分に言い聞かせて、仕方ない事だと諦めた。
「アイリ、俺にとっても、、、その、、、アイリが一番大事な家族だから。もぅ、二度と俺のそばから離れるようなことはするな。」
この時、俺は魔王になってしまった事もアイリが狙われてしまった事も、心の中で少しだけ喜んでしまっている自分に改めて気づいていた。
もぅ、アイリを手放さなくてもいいんだと。