3-22. 魔王と天空の誓い アイリの大脱走!?
アルとアイリがゼエルと戦っている間にカケル達に何があり、どのような成長をしたのかは外伝で語ります!
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趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
応援、よろしくお願いします。
Twitter:@TamaSala_novel 次回予告を呟くとかつぶやかないとか
外伝:https://ncode.syosetu.com/n5068ex/1/ カケル君達紅蓮隊メインの外伝ストーリーです。2話まで更新済み
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「ところでアイリ、話がある。」
諸々の話が終わり、アイリと二人きりになったこのタイミングで、最大の問題をアイリに切り出そうと考えていた。
俺が帝都で魔王になんかなっていなければ、アイリはとっくに奴隷の身分から解放されて自由になっていた筈だった。
そして俺なんかにつれ回される事もなく、ゼエルみたいな危ないやつに狙われる事もなった。
だからこそ、ちゃんアイリに話しておかなきゃいけない。
全部俺の責任なんだから。
「あ~~~!!」
その瞬間にアイリが突然叫び声を上げた。
「ど、どうした!?」
アイリは嬉しそうに人差し指を立てている。
「御主人さま!喉渇きませんか!?」
「え!?あ、あぁ、言われてみれば確かに。」
そう応えると、アイリは満足そうに鼻をふんと鳴らすかのように腰に手を当てて仁王立ちになった。
正直に言うと喉は渇いていなかったが、女性にあんな風に聞かれて渇いていないと言う程鈍感ではない。
「実はリオーレアさんから高級茶葉を頂いたんです!ほら、ミレーリアさんの私室で頂いたあれです!」
「あ、あぁ。ありがとう。」
アイリはそそくさと立ち上がり室内に設置されている給湯魔導器を起動させる。
暫く時間が掛かるのだから一度座れば良いのに、湯が沸くまでの間もずっと魔導器とにらめっこしている。
「アイリ、お湯が沸くまでの間位座ってくつろいだら?話したい事も。」
「う、うわぁ!この魔導器!素敵だなぁ!かっこいいなぁ!」
何故だかわざとらしく聞こえないフリをして、楽しそうに魔導器を眺めている。
「ホント、アイリは魔導器が好きだよな?」
魔導器を眺めながら問いかけにも応えず鼻歌を歌うアイリ。
「ま、紅茶でも飲みながらの方がいいか?」
これは自分自身への問いかけ。
今から話す内容についてアイリの反応が少しだけ怖い。
多分、アイリの普段の振る舞いからは何の問題もないと答えてくれるとは思うんだけど。
最近漸く自覚し始めたんだけど、どうやら俺は相手の感情を読み取るのが苦手らしい。
ウェンディの件にしたって、まったく気づきもしなかったのだから。
俺は自分の心臓がバクバクと高鳴るのを感じていた。
果たしてアイリはどんな反応をするんだろう?
ビロピロリン♪
軽快な音が鳴り湯が沸騰した事を告げてくれる。
アイリはティーポットにお湯を注ぎ、少し経ってから薄茶色に色づいたカップ紅茶をティーカッブに注ぐ。
ちらりと、俺を見てから砂糖は別の小皿に二個入れて一人分の紅茶を用意してきた。
俺は紅茶に砂糖はあまり入れないけど、今は入れたい気分だ!
普段は入れないんだけど、別に甘いのが嫌いな訳じゃない。
よっぽど疲れている時、『今!体が糖分を欲しがっている!』と感じる時は砂糖は入れる。
そして、今は心身共に糖分を欲しがっていた!
俺の様子から、その辺を察してくれたんだろう。
さすがアイリだなと思うんだけど。
「あれ?なんで一人分?」
「あ、あたし、、、ほら、あれ!あれ買うの忘れちゃったので!ちょっと買い物に!」
そういうと、足早に立ち去ろうとする。
「え?あ、ち、ちょっと待って!先に話を!」
「いやだ!」
明確な拒絶。
こんな、アイリは珍しい。
俺はアイリの口調と勢いに気圧されて一瞬たじろいでしまった。
俺達の間に流れる刻が一瞬凍りつく。
その一瞬を見逃さずにアイリは一気に扉のソバに詰めてドアを開けると、もう一度俺の方に向き直った。
「ま、待って!アイリ!」
「行ってきます!」
俺は直ぐに立ち上がり、アイリの腕を掴もうとする。
アイリは素早い身のこなしでするりと躱すと、バンッとドアを閉めて颯爽と出て行ってしまった。
「くそっ!」
俺も慌てて部屋の外に出ると、アイリは既に長い廊下の奥まで移動し、廊下の窓を開けて外に飛び出していた。
今見失うのは不味い!
あんな事があったばかりなのに。
俺も人目を気にせずに窓の外に飛び出す!
ミレーリアが準備してくれた最上階の高い部屋。
それは値段だけでなく、実際に高いのだった。
ロビーからは転移装置であがったので実感しにくかったが、部屋の窓から見えた景色は相当の高さに有ることが見てとれた。
俺は自由落下に身を任せ、お腹の辺りがゾワゾワする中で必死に下を見渡してアイリの姿を探す。
いくらアイリでもまだそんなに遠くには行っていない筈だ。
そして彼女は飛翔魔法が使えない。
絶対に俺より下にいる筈だ。
「あ!いた!あれか!!」
ものすごいスピードで屋根伝いに移動している。
「いた!っておい!そっちは!」
さらに不味い事に街の外、浮遊島の端に向かっていた。
「飛翔魔法:フライ!!」
自由落下でつけた勢いをそのまま推進力として利用して一気にアイリに近づいた。
「アイリ!!待て!」
「やだやだやだやだやだ!」
叫びながらさらに加速するアイリ!
「何が嫌なんだ!まだ何も!」
正直なところ彼女が何故いきなりこんな行動に出ているのか、皆目検討がつかない。
すると、アイリがその疑問に答えてくれた。
「言わなくたってわかるもん!御主人さま帝都にいたときと同じ顔してたもん!またあたしにここで好きに生きろっていうんだ!」
しまった!
そういう事か!
アイリは、この国においていかれることを恐れているんだ。
もし、本当にそうだったら、逃げたからと言ってどうなる訳でも無いのだけど。
「ち、違う違う!!勘違いだ!」
「何がよ!どうせまた、あいつらが危ないからって置いてきぼりにしようとするんだ!」
「そんな事しないから、止まって!」
アイリはさらにギアを上げて逃げる。
全力でにげるアイリを捕まえるのは至難の技だ。
フライの出力を最大限に上げてなお、ついて行くのが精一杯。
「ったく!あの華奢に見える体のどこにそんな力隠してんだよ!」
既に街の範囲からは出てしまい、遠くに浮遊島の端が見える。
あいつ、あそこから先はとうするつもりだ?
アイリに飛翔魔法は扱えない筈。
そう思い、再びアイリに注目する。
パッバッパと世話しなく動いている。
「あいつ!まさか!?」
悪い予感が的中して召喚ゲートが開かれ始める。
「フェンリルか!!」
フェンリルが出たら、絶対に追い付けない!
さっき休ませるために帰らせたフェンリルをふたたび呼び出すあたり、アイリは既にまともに物事を考えられないパニック状態か。
だが、逃げ続けるアイリに追い付けないまま召喚ゲートが発動して直ぐにフェンリルが現れてしまった。
グオォォォン!
叫びながら、聖獣の姿で現れたフェンリルの背にアイリが飛び乗る。
「フェンちゃん!飛んで!御主人さまから逃げるわよ!」
フェンリルはフライで飛翔している俺のさらに上空に一瞬で移動した。
「御主人さまぁ!朝に戻ります!」
アイリは逃げ切ったと確信したのだろう。
さっきまでの緊張感が薄れ緩んだ笑顔を俺に向けた。
俺じゃ絶対に追い付けないフェンリルに跨がったアイリを見て、俺は勝利を確信した。
アイリ、残念だったな。
このおいかけっこは俺の勝ちだ!