3-16.魔王と闇の邂逅 ゼエルの本気
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趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
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距離が離れた所で一転して遠隔攻撃の撃ち合いが始まった。
「はぜろ!ダーク・マター!」
モヤモヤとした黒い物体がゼエルの周囲に無数に発生し、彼の合図と共に俺達に襲い掛かる。
直線軌道の魔法を躱しながら地面スレスレの位置から剣に魔力を乗せて振り上げ、頂点に達したところで思い切り振り下ろす。
「アイゼン3式:飛燕斬!」
剣の軌道に沿って逆V字の衝撃波がゼエルを襲う。
「影魔法:シャドウ・ウィップ!」
ほぼ同時にアイリの影が宙に浮き上がり鞭の様にしなりながらゼエルに伸びていく。
「タイタン・ウォール!!」
ゼエルの正面に巨大な足が出現衝撃波は防がれたが、アイリのシャドウ・ウィップは大きな弧を描くように足の範囲外を通ってゼエルに襲い掛かる。
「はぁっ!!」
ゼエルは、シャドウ・ウィップが直撃する瞬間に全身に黒いオーラを纏い、その肉体でアイリの攻撃を弾いて見せた。
「くそ、流石に堅い!!」
「はい、まさか避けすらしないなんて、、、。」
アイリの口調が暗いのはアタッカーとしての自尊心を傷つけられたからかな?
「仕方ないさ、相手はタンクだし。先ずは彼の防御力を崩す所から始めないと。」
「はい!」
タンク職の中でも超位クラスの暗黒騎士だけあって、その防御力は凄まじい。
まず、彼の装備や、魔法障壁を破壊して出来る限り防御力を削らないとまともなダメージは見込めない。
そういうレベルの相手だ。
それから何度も、遠隔攻撃による戦いが何度も何度も繰り返されるがお互いに決め手が無いままに時間だけが過ぎて行く。
相手を牽制するような魔法を小出しに撃ち合い、避け、受け止める。
魔法同士が衝突し爆発を繰り返しているせいで、真ん中辺りの床はかなり激しく破壊されている。
どれだけ撃ち合ったのかわからないけど、戦闘が始まってから数時間、、、いやもしかしたら日が変わっているのかもしれない。
流石に体中に疲労が蓄積されてきているが、互いにリスクを避ける戦い方をしている為に長期戦の様相を呈している。
「おかしい、、、」
彼の態度に違和感を感じつづけていた俺は、攻撃の手を止めて、防御に専念しながら彼の様子をうかがう。
ゼエルも俺の様子を感じ取って攻撃の手を止めた。
一転して闘技場を静寂が支配する。
このまま互いに相手の出方をうかがう感じで時間だけが過ぎていけば俺に有利だと思うけど、、、ゼエルの態度が気にくわない
元々、彼を捕獲して色々聞き出したい俺は持久戦でじわじわ追い詰めようとしてきた。
現時点で2対1、ドラゴンの方もじっとして回復に専念しているのでそのうちに参戦してくるだろう。
そうなると3対1。
さらにはこれだけ激しくやりあっていれば、異変を感じ取った警備隊が駆けつける筈だ。
そこまで粘ればチェックメイトだ、、、その筈だ。
だがあの頭の切れそうな男がそれに気づかない筈が無いのに、焦る様子をみせないどころか長期戦を望んですらいそうだ。
「あぁ、そう言えば。」
不意にゼエルが口を開いた。
「救援なら直ぐには来ないと思いますよ?」
「な、に?」
やはりこちらが持久戦に持ち込もうとしている事はばれている。
だが、救援は来ないと確認しているのは何故だ?
「今頃は街がワイバーンの群れに襲われて大変な事になっている筈なので、こちらにまで手は回らないと思います。」
「ワイバーン、、、遺跡に挑戦するような有名な冒険者もいる街がエリアル・ワイバーン程度に手間どるとは思えませんが?」
「あぁ。」
ゼエルは軽く笑うと、俺の疑問に答え始めた。
「塔の頂上に巣くうエリアル・ワイバーンを狩りに来たと言っていましたね?実は私達があそこにエリアルを連れてきた、というよりは閉じ込めたんですが?」
「とじ込めた、、、まさか!」
「ええ、最初はバーサク状態で空腹にしてある若い個体を四五体程ね。減る度に追加し続けて、今日実験に成功したんですよ。」
そこまで聞いて、冷たい予感が背筋を走る。
「まさか、、、蠱毒か!!」
「ご明察です!お互いに殺しあい、喰い合い最後に残った一体は進化を迎える。その目は赤く血走り、顔に現れた赤い紋様はまるで血化粧の様に。」
「まさか!ブラッディ・ワイバーンか!?」
「えぇ、それがエリアル・ワイバーンの群れを率いて街を襲うのです。流石に滅びはしないでしょうが、味方のドラゴンが守るこちらを気にしているような余裕は無いとおもいます。」
一体で一軍団に匹敵するとも言われる、普通にはお目にかかる事は出来ない魔獣だ。
「そう言えば、連れの子らはどうしたのですか?塔に残してきたとか?」
「あぁ、あの塔で修行をさせているからな。」
「そうですか、今頃はブラッディの最初の食事になっているかもしれませんね。」
「あの子達に手を出したら許さないからっ!」
アイリが憤り、今にも飛び出していきそうなのを手で制する。
それにしても、優しい表情で残酷な事を言う奴だな。
カケル達には今のところ問題は起きていない筈だけど、、、。
ちょっとだけ心配になり、念話でアイリに確認してみる。
(アイリ、カケル達の状況確認できる?)
(はい、さっきあの子と念話で確認しました。今は順調に塔を登っている見たいです。十階辺りにいるって。)
(十階!?手助けはしてないんだよね?)
予想よりもずいぶん早い!!
あの子達の力を見誤ったか?
(は、はい。不味いですか?ペースを抑えさせますか?)
(あ、いや、、、ま、彼がついているし大丈夫だろう。)
今、カケル達は何だかんだと文句は言いながらもモチベーションは高く、大きく成長しようとしている。
下手に調整してあの子達の気を削ぐようなことはしたくない。
ただ、こちらの状況が思っている以上に時間が掛かりそうなのが問題だ。
とりあえずの懸念がなくなった俺はそれを気取られないようにあせり始める演技をした。
「お前、まさかあの子達にけしかけるつもりか!」
文句のつけようもない完璧な演技だ!
「いえ、そんなつもりではありません。ただそうなる可能性もあるなと思っただけですが、、、」
今度はゼエルが不思議そうな表情で俺をみる。
「何だか焦りが全く見えませんね。」
ば馬鹿な!何故見破った!
(ご主人さま、、、演技が酷いです、、、)
アイリの指摘は聞こえない!
「そんな事はない、焦った所で下手な手を打てば返り討ちにされる。お前がそう言う相手だって事位は理解しているさ。」
「そうですか、、、。」
ゼエルは納得いかない様子で首を僅かに傾げると、背にした壁に手を当ててなにやらぶつぶつと独り言を喋っている。
「おかしいですね、、、ワイバーンが移動していない?頂上の封印は先程解いたし、街を襲う様に暗示もかけているのに、、、。何かしましたね?」
「あー、、、子供達が俺がいない間に間違ってワイバーンと戦闘始めないように塔の最上階を封印したんだよね。ごめんね、、、知らなくってさ。」
おどけて見せながら心のこもらない謝罪をする。
ま、ブラッディの存在には気付いていたけどワイバーン達のボス位にしか考えていなかったからな。
勿論カケル達の手におえる相手じゃないが常に自分よりも遥かな強者との命の削り合いの中で成長を促すアイゼン式修行に丁度良いと思って放置していた。
ま、今のカケル達は彼が守ってくれている筈なので最悪は何とかなるとは思っているが。
「なるほど、私ごときの付け焼き刃の策はやはり通じませんか。結局のところ長期戦は私が不利な状況、、、流石です。」
「い、いやぁ、、、たまたまなんだけどね?ホントに。」
本当にたまたまだ、ゼエルの差し金だなんて気付いていなかったし。
「現時点では不利とは考えていないのか?」
「勇者の頃の貴方が相手なら、既に私は地を舐めていたでしょうが、今のお二人ではね。」
つまり勝てると思っているわけか。
「なめられたものだな。」
その時、ゼエルのオーラが先程迄とは比べ物にならない位に激しいものに変わっていることに気づいた。
「残念です。楽しかった時間を終わらせなきゃいけないなんて。」
闘技場の温度が一気に上昇したかのような錯覚を覚えた。
「我が奥義にて終演とさせてもらうぞ!魔王よ!」
カケル達の塔攻略は外伝にしたいと思います。