3-13.突撃☆紅蓮隊!! ☆浮遊島の鳥肉を求めて☆(4)
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塔の内部に入ると内部は真っ直ぐに奥まで廊下が続き、左右両側に小さな扉と、突き当たりに大きめの綺麗な装飾のある扉が見えた。
廊下には左右等間隔でランプが設置されていて、廊下を明るく照らしている。
「先客さんが付けていったのかな?」
「いや、この明かりは低級な魔獣を寄せ付けない為に常に付いていた筈だよ?」
なるほど、言われてみれば確かにランプから何らかの魔力が漏れ出しているのがわかる。
「じ、じゃあ魔獣は少なそうだし安心して進めるね。」
「あぁ、その代わりここにいる魔獣に低級なものはいないってことになるんだけどね。」
アルベルトは僕が考えないようにした事実を軽めに突きつけながら、突き当たりの一番豪華な扉をバンッ!と強く開いた。
その音に驚いた中の住人達の視線が一気に僕らに向けられた。
ぶつぶつの顔に低い背丈は前のめりに曲がっていて、表情は邪悪に歪み、口からはヨダレが垂れている。
一方で半裸の上半身は痩せ型ではあるものの、どちらかと言えば筋肉質で手にもつ棍棒は血で黒く汚れている。
「ご、ゴブリンだ。」
「ゴブリン?」
「アレが、、、」
二人の様子から多分ゴブリンを見るのは初めて何だろう。
僕は、父様と一緒に砦付近に住み着いたゴブリン退治に出た事があるから知っていた。
その時父様が言っていた言葉を思い出す。
「アイツらはこれまでの魔獣よりも危険だから気をつけて。」
「ヴォーグの方が強そうにゃ!」
「私もそう思うけど。」
確かに、見た目の強さはヴォーグの方が強そうに見える。
実際、あのとき感じた絶望的な死が迫っている感じはない。
僕が二人の意見に流されそうになっていると、アルベルトが僕の頭をポンポンと軽く叩いた。
「カケルが正解だよ。彼ら個体ではヴォーグに劣るかもしれないけど、戦略を練る知恵とそれを実現する技を持っている。何より彼らはパーティーを組んで攻めてくるし厄介だよ?」
もう一度ゴブリンを見ると盾を持っている奴や杖のような棒を持っているのもいる。
どうやら、この部屋の主であるゴブリンは盾、ヒーラー、近接と遠隔アタッカーの4匹でパーティーを組んでいるみたいだ。
数と構成では三人の僕らよりもバランスが良い。
「大丈夫。お前らならいける!」
そう言うとアルベルトは僕らに防御魔法を掛けてから、一歩下がって壁に持たれるような姿勢を取った。
紅蓮隊で訓練するときはファランクスのようなダメージバリアじゃなくダメージ軽減の魔法を掛けてくれているようだ。
アイリさんも同じく一歩後ろに下がる。
「精霊達よわたし達を守って!防御魔法:《精霊の加護スピリッツプロテクション》」
淡い光がアルベルトの防御魔法に重ね掛けされる。
「猛き精霊よ我が刃となれ!強化魔法:《ダイレクトアタッカー》」
シルフィの新しい魔法発動と共に、僕の視界がより鮮明に明るくなった気がする。
敵の動きがクリアに伝わってきて、どこを攻撃するべきかが手に取るような感覚を覚えた。
どうやら、対象者の感覚を研ぎ澄まさせる強化魔法のようだ。
僕は手にした小枝に僅かな魔力を通す。
「凄い!」
手にもつ枝の強度やあとどのくらい魔力を通すと折れてしまうのか、ギリギリのラインがなんとなくボンヤリとだけど感じ取れるようだ。
ここまでに大体十本程折ってしまっているが、何とか枝を折らずに壁を思い切り叩きつけても折れないようにはなった。
ウェンディはすぐに要領を覚えた見たいで壁に傷をつけれるところまで出来ているのが悔しいけど、今はとにかくやるしかない。
僕は小枝を敵に向かって構えて叫んだ!
「この気色の悪い雑魚め!お前らなんか小枝で十分だ!<<挑発>>」
ゴブリン達の視線が僕に集中する。
よし!ここから、僕はとにかくシルフィとウェンディに攻撃が向かないようにターゲットを維持し続ける!
ゴブリン達はゆっくりと僕の方に歩みを進めながら隊列を組んだ。
先頭にシールドゴブリンが立ち、その直ぐ後ろにゴブリンアタッカー、少し離れてゴブリンアーチャーにゴブリンヒーラーという隊列だ。
シルフィはそれを見てすぐに僕とウェンディの後方に下がる。
ウェンディは戦いたくてウズウズしているのかむしろ僕より少し前に出てしまっている。
どうみてもパーティーとしてはゴブリンに劣る、後で話をした方が良いかも。
「グギャ!」
僕とディフェンダゴブリンの距離が二歩位になった時、ゴブリンアタッカーが大声をあげながら、一気に僕に襲いかかってきた!
「当たるか!」
「グギャギャギャッ!」
僕がアタッカーの攻撃を弾こうとした瞬間にディフェンダゴブリンの挑発スキルが発動して、一瞬アタッカーから意識が外れた。
「ガッ!」
アタッカーの棍棒攻撃への対処が遅れてモロに受けてしまい、体中を痛みが走る。
二人のダメージ軽減魔法のおかげで傷は浅くてすんだか、打たれた部分が赤くなっている。
「くそっ!」
挑発スキルってあんな使い方までてまきるのか!
単に敵の注意を引く為だけに無駄打ちした自分が情けない!
追い討ちを掛けようとしたアタッカーの横からウェンディの影手裏剣が命中してアタッカーを弾き飛ばす。
ビュッ!
同時に僕に目掛けてアーチャーの矢が襲いかかるが、何とか小枝で弾く。
「あっ!」
シルフィの魔法で感覚が研ぎ澄まされているおかげで、弾くことに成功はしたものの、小枝が折れてしまった。
「ギャ~、ババババ!」
ゴブリン達が僕を指差しながら嫌らしい目を向けて嘲笑してくる。
僕らを完全に嘗めているようで、アタッカーは舌なめずりをしながらポンポンと棍棒で左手を叩きながらニヤニヤしている。
すぐに新しい小枝に入れ替わるが、矢を弾くだけで折れていてはアタッカーやディフェンダの近接攻撃を受け止めるなんて出来るわけがない。
僕はさっきよりも少しだけ多目に小枝に魔力を通す。
一瞬だけ小枝が震えたけど、なんとかおれずに形を保っている。
というか、さっきよりも小枝の状態がクリアに伝わってきて、なんとなくギリギリのラインが読めそうだ。
その間にヒーラーの回復魔法でアタッカーの傷が癒されている。
くそ!厄介だ!
「ウェンディ!ヒーラーだ!」
僕はウェンディにそう叫ぶと、より魔力強化した枝を振り上げてディフェンダとアタッカーの間に陣取り、めちゃくちゃに振り回した。
無軌道でめちゃくちゃな攻撃が連続で二匹に襲いかかり明らかに嫌そうな顔をしている。
勿論そんな攻撃が有効打になるわけもなく適当にいなされているが、二匹同時に敵視を稼ぐには十分だった。
ギャギャギャ!
そんな断末魔が部屋に響き、ヒーラーの方に僕とゴブリンが注意を取られると、ウェンディがヒーラーを仕留めていた。
「よし!次はアーチャーだ!」
僕の号令と共にウェンディがアーチャーに飛びかかる。
「ギギャッ!」
動きに気づいたディフェンダが挑発をウェンディに向けようとした瞬間に、僕の小枝が奴の喉元を真横に薙いだ。
咄嗟に後方に仰け反ったものの、ディフェンダの喉が真横に斬れて緑色の血が滴り落ちている。
「グカァ!」
アタッカーが大きく吼えて、腰を低く落とした。
最初に対峙したときの、僕らを只の餌と認識したような嘗めた感じは消え失せ、その目には、強い怒りの炎がやどっている。
ディフェンダも盾を前面に押し出すような、防御姿勢を取ってアタッカーを守るような位置取りをする。
漸く本気になったのだろうけど、遅すぎだ!
僕は少し後ろに下がって、左前にアタッカー、右前にディフェンダが、そして真後ろにシルフィが来るように位置どる。
同時にウェンディに目配せをしてアタッカーをウェンディと挟む形を取った。
本来なら相手もヒーラーであるシルフィや、後衛を狙うウェンディを優先するべきだけど、ゴブリンアタッカーは挑発耐性が低いのか、未だに僕をターゲットにしている。
僕は、アタッカー側に体を向けると大きく前に踏み込んだ。
と同時にディフェンダに対してウェンディの邪魔をさせないように挑発をかけておく。
「ディフェンダ!お前は一番弱いから無視だ!<<挑発>>」
ディフェンダが右横から殴り掛かってくるのを躱すと、小枝をアタッカーに向けて振り抜く。
一撃目は当然のように棍棒で受け止められる。
ヴォーグ戦の後、アルベルトから教えてもらった事を思い出す。
盾役はダメージよりも相手を嫌がらせる事が大事なんだ、受け止められても躱されてもとにかく相手の注意を引き付け続けなきゃいけない!
僕は受け止められても、何度も連続でアタッカーに小枝を振り続けた。
最初はウェンディを警戒していたアタッカーの意識が完全に僕に集中したところでディフェンダの攻撃を躱して強く小枝を振り下ろす!
ゴガッ!
鈍い音がして棍棒と小枝がぶつかる。
僕とアタッカーは、そのままお互いに武器を押し合う形になった。
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