2-16. カケル君の受難(2) アイゼンの名を冠する修行 後編
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趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
応援、よろしくお願いします。
Twitter:@TamaSala_novel 次回予告を呟くとかつぶやかないとか
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次元宿の外に設置した簡易テーブルセットに腰掛ける。
「御主人様、お茶が入りましたよ。」
ひんやりとした空気が支配する仄暗い森林の中、テーブルの近くに設置した魔法ランプの灯りがゆらゆらと揺らめきながら心身をほんのりと温めてくれる。
俺達は鬼人の砦を出て2日目の夕方を迎えていた。
フェンリルのスピードなら、あと少し進むとエルフの王都である大精霊の樹に到着するのだが、その前に王都を守るエルフの関所で審査を受ける必要があった。
勿論、上空を飛んで進むフェンリルで強行突破も可能だけど、それは友好な関係を結ぼうと思っている相手にすべき事じゃない。
ちゃんと相手のルールに則って正しく関係をスタートさせるべきだ。
『うわぁぁぁぁ!!』
魔獣との追いかけっこを再開したカケルの叫び声をBGMにしながら、俺はアイリの淹れてくれたお茶をすする。
「はぁ、美味し。」
温もりが喉を通り、胸からお腹の当たりに広がり全身に染み渡っていく。
『ああああああああああ!!』
ほんのりと届く香りが淹れたものの技術の高さを物語っている。
『こなくそぉぉぉぉっ!!』
テーブルに置かれた焼き菓子を、一つ掴むと口の中に放り込む。
『ここだぁぁぁぁぁっ! あ!? あ、、、あいった〰️!!』
口の中に広がる上品な甘さが家族旅行をさらに楽しいものにしてくれる!
『あ!や、やめろ!噛みつく、、、あ、ヤバ!?』
おや?
BGMが止まってしまったので、魔獣ホイホイの方に目を向ける。
今にもカケルを咥え込もうとする巨大な魔獣の口を、その小さな木刀で必死に抑えていた。
「うううううう!!」
何度か魔獣の牙で噛みつかれたみたいで、体が唾液まみれになっている。
まぁ、俺の<<密集防御陣>>のダメージバリアがそのダメージをほぼ吸収しているけど、普通の唾液のような特に害の無いものは通り抜ける。
病気とかにはなりそうだけど、毒性のものは通さない。
ガブッ!!
今回も魔獣の口の中に消えていくカケル。
魔獣の腹に納まるのも昨日から数えて5回目位になるか。
でも今回のカケルはかなり頑張っていた。
喰われるまでの時間もどんどん伸びてきたし、そろそろ伝説の聖剣修行も進めようかな。
俺は魔獣の腹の中に納まったカケルを再び吐き出させようと立ち上がった。
そう思っていた時だった。
ギャウッ!!
魔獣の悲鳴が聞こえてハッとする。
カケルが一際大きな魔獣の口の中で、下顎に向けて木刀を突き刺していた!!
確かに、昨日の夜にアイリからナイフを借りて木刀の先端を尖らせていたことには気づいていた。
魔獣の外皮をいくら木刀で殴ってもダメージを与えられないから突き攻撃をメインにし始めたことも。
だが、まさか体内から突き刺す手段にでるとは!!
「何度も何度も何度も何度も何度もぉ~~~~~っ!!」
口の中で木刀を突き刺された魔獣は顔をぶんぶんと勢いよく振ってカケルを吐き出そうとする。
そのまま口外に脱出するのかと思いきや、カケルは必至で堪えてその場にとどまる。
「食べられてたまるかぁぁぁぁぁっ!!!!」
なんとカケルは木刀を持ったまま、体を曲げて上顎を足で思いっきり踏みつける!!
カケルは力一杯に足に力を入れて、その反動を使って木刀を深く深く差し込んでいく。
「食べてやるぅっ!!」
ギャギャギャッ!!!!!!!!!
魔獣の悲鳴が森の中に響き渡った!!
思わず手にもっていた焼き菓子をにぎり潰しながら立ち上がる!!
魔獣にとっては口の中に咥え込んだ時点で、勝敗は決したと思っていたはずだ。
俺だってそうなると思っていた。
だが、カケルは柔らかい口の中から木刀を突き刺すという攻撃に出たのだ。
あ、あいつ、、、
顔がニヤケてしまう、体が振るえるのを抑えられない。
まさか、まさか、たった2日で<<密集防御陣>>が掛かっているとはいえ、あの魔獣を倒す迄になったっていうのか!?
基礎レベルは10にも満たない、クラスはタンクになったばかりのカケルが、基礎レベルが20超えの魔獣を!!
角が少なく、魔力量が絶対的に足りない中で、自然と彼の中に芽生えていたのだろう。
魔力・ステータスに頼った言わば脳筋的な強さじゃなく、技量・戦術に依る強さ伸ばすという事を。
『ハートの強さに勝る才能なんてないんだぜ!』
師匠の言葉が再び頭の中に蘇ってくる。
暫くは絶対的な強者の前に何度も立たせて、恐怖や緊張といった実力を阻害するものに慣れさせコントロールできるようにするつもりだった。
カケルはそれらを強気な性格で打ち払ってしまったのかもしれない。
ゆっくりとだが確実に顎に突き刺さっていく木刀。
やがて、魔獣は目を白く剥いてその場に倒れ込み、体をビクビクと痙攣させ始めた。
体格の小さなレベルの低い魔獣達も何がおきたかわからない様子で、かなり警戒している。
魔獣の口がガバッ!!と開くと、なかから唾液と魔獣の血にまみれたカケルが出てきた。
「し、死ぬかと思った、、、」
グルルルルッ!!
我に返った魔獣達がカケルの周囲を取り囲む。
カケルはその場にへたり込んでしまう。
恐怖とかじゃなく、単純にもうたっている力すら残っていないのだろう。
今日は、勝利で終わらせてあげたい。
そんな俺の気持ちを察したのか、アイリが影移動で一瞬にしてカケルの傍に現れた。
<<旋風陣!!>>
魔獣達はアイリの短剣スキルで一瞬にして結界ごと吹きとばされ、そのまま逃げ去っていった。
「ど、どう?、、、肉、、、とってきたよ、、、」
アイリに担がれて戻ってきたカケルが息も絶え絶えに、ドヤ顔を作って握りこぶしを俺に向ける。
か、可愛いじゃないか!!
よくやった!!と、頭をグシグシと撫でてやりたくなる衝動が俺を襲う。
湧き上がる嬉しさを見せないように気を付けなくっちゃ。
「お前、毎回喰われてるけど、趣味なの?」
悪者の顔でニヤリとしてみせると、カケルもドヤ顔を一気に紅潮させて怒り始める。
「!?、、、いつか殴ってやる!!」
「期待してるよ。」
まぁ、喰われている時点でダメなんだけど、カケルよりレベルの高い冒険者であったとしても、喰われた時点で命を諦めるだろう。
弟子の成長って凄く嬉しいんだな、、、師匠もそんな風に見ていてくれたんだろうか?
酔っぱらった表情しか思い出せなくてよくわからない。
アイリが、カケルを介抱している間にカケルが倒した大きな魔獣を大きな木の枝に吊るして下処理をし始めてしまい、作業が一段落ついたところで、漸く皆がお腹を空かせた顔をしている事にきづく。
「さて、今日はカケルが今朝獲ってくれた肉でご飯にしよう。」
今朝の修行では、大きい魔獣を出し抜いて小さな魔獣の討伐には成功していた。
結局、その後大きな魔獣に喰われたんだけど。
「お肉にゃ!!カケルありがとにゃ!!」
「カケル君。あ、ありがとう。」
「う、うん!! 男が食糧を獲ってくるのは当たり前だから!!」
恥ずかしそうに明後日の方向を向いて鼻をこする。
「さ!お料理開始ね。3人共手伝って。」
アイリが3人を連れて次元宿の中に入っていく中、俺はさらに強い魔獣をおびき寄せる餌を仕掛けておく事にした。
あと、あのでっかい魔獣の解体もしておかないとね。
次元宿の扉には魔獣除けの結界を張るので、相互に邪魔しないように結界を張るのが大変だ。
「思ったよりも、かなり早く次のステップに進めそうだな。」
俺は次のステップに向けて計画を練り始めた。
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小説書くのは難しいですね。
特に頭の中のイメージを相手にわかるように表現するのが難しいです!!
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