2-8. 魔王様の憂鬱!(8) アイリが本当に欲しいもの
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趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
応援、よろしくお願いします。
Twitter:@TamaSala_novel 次回予告を呟くとかつぶやかないとか
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広場を出て、ゆっくりとした歩幅で家に戻る。
後ろ髪をひかれる思いもあったが、かつて師匠に似たような場面で『フラグ立てるなら責任持てよ?男なら立てたフラグは全回収だ。折ることは許さんぞ!』と窘められた記憶があるので自重しておこう。
そして、師匠の顔を思い浮かべるなり、自分の顔が緩んでくるのを感じる。
本当に滅茶苦茶な人だった、素行も悪く、いつも雑な身なり、高貴な出なのに貴族連中からは白い目で見られ、金に汚く、女癖も悪く、毎日違う女性の家にいるので探すのが大変だった。
師匠の癖に何も教えてはくれず、ただ俺を命掛けの窮地に追い込んでは傍から眺めて、酒を呑みながら楽しそうにガハハッと豪快に笑う。
でも、あの日々の教えが魔王となった今も根強く息づいている。
何で今、こんな事を思い出したのだろう。
かつて、平民上がりの出来損ない勇者と貴族の子弟達にバカにされ続けた自分を思い出す切っ掛けがあったからかもしれない。
そんな事を考えながら歩いていると、気づけば家の前までたどり着いていた。
恐らく俺を寝ずに待っていてくれていたのだろう、リビングを照らす灯りが窓から外に漏れだしている。
この灯りを見る度にどんなに冷えきった心もポカポカと、温まって行く。
家に入ると、寝間着に着替えたアイリがいつものように出迎えてくれた。
「おかえりなさい。御主人様。」
心がやわらかく落ち着いていくのを感じる。
「先に寝ていても良かったのに。」
「そんなわけにはいきません!!御主人様が頑張ってくれているのに!」
アイリはギュッとこぶしを力強く握って、前かがみに俺に詰め寄る。
「それに、、、少しだけ、お話がしたかったから。」
「そういえば、帝都をでてから全然落ち着いて話もできていなかったよな。シルフィ達は?」
「二階で寝てます。」
ウェンディはまだシルフィの傍にいてくれているんだな。
バタバタと帝都から逃げ、ウェンディ達をたすけ、村を襲った盗賊を倒し、漸く落ち着けると思った矢先に盗賊団の事件が発生。
今後の話とか殆どゆっくりと話す機会もないままに、6日も経っている。
俺がソファに腰掛けてくつろいでいると、アイリが用意しておいてくれた晩御飯二人分をソファテーブルに並べ始めた。
「晩御飯は先に食べておいても。」
「一緒に食べたかったんですぅ!!」
不満気に語尾を高めて口を尖らる。
「そ、そう?」
一緒に食事をするのも二日ぶりか。
「ところであれは何?」
テーブルの上に可愛くラッピングされたプレゼント風の包みがおいてある。
「あ!アレですか。御主人様が出られた後で避難所の様子も見てきたんですが。結構小さい子供も多くて。」
「あぁ、確かにそうだったな。」
俺は盗賊達の根城からこの村迄の移動を思い出す。
訳も分からずに、きゃっきゃと暴れまわる子供の世話が本当に大変だった。
「で、カルナの玩具だらけの荷物からいくつかプレゼントしようかなって思ったんです!」
玩具だらけの荷物って、、、というか。
「それは、カルナのものじゃ?」
「勇者資金を使って勝手に集めていたので、これは御主人様のものです!」
「え!?」
初耳だけど?カルナめ!無駄遣いしていないのに金が足りないとグラナドがぼやいていたのはそういう事か!
キリっとした表情を作ると、親指を上向きに立ててグッドサインを出す。
「ならばよし!」
「はい!」
アイリも同じようにして反応した。
カルナめ、今度会う機会があれば、絶対にとっちめてやる!
ま、その時はきっと敵として戦う事になるのかも知れないけど。
さて、せっかく温め直してくれたご飯が冷めない内に食べながら、鬼の砦の偵察?ってか突撃結果を話すことにしようか。
俺は、砦の様子や明日はアイリ単独で鬼人族を全員倒してもらうつもりである事も一緒に話しておいた。
「戦った感触ではアイリ単独で余裕、フェンリルすら出番ないかも。」
「何か、ディアブラの話とずいぶん違いますね?」
「あぁ、首領が亡くなったとは聞いたけど、それだけでそこまで戦力落ちるものかな?」
「ん~、、、首領が亡くなって、一緒に主戦力の人たちが抜けちゃったとか?次期様は1本角なんですよね?」
1本角をボスと仰ぐ事に反発して内部分裂か、、、あり得るな。
「だけど、、、それよりも何かこう、切羽詰まったものを感じた。」
「う~ん、そもそも何で首領は亡くなったんでしょうか。」
「ごめん、そこまでは、、、」
それを聞く程の心理的余裕が俺に無かったな。
下見の目的を情報収集から威圧と宣戦布告にシフトした時点で明日にどう繋げるかしか考えていなかった。
だが、もしかしたら最初のプラン「制圧しつつ、問題解決で円満支配」の線も復活するんじゃないか?
力での支配は、さらに大きな力で簡単に覆るだろうし、そっちがベストだ。
「でも、この村の次は鬼の砦ですか、魔王軍が形になってきましたね!」
何故か嬉しそうに語るアイリ。
そんな予定はなかったんだけどな。
「じゃぁ、このまま世界征服でも目指しましょうか?」
そんな冗談を言ってくる。
「世界征服したら、何が欲しい?」
少しだけ乗っかってみる。
勿論そんな面倒くさい事をする予定はないが。
「う~ん、、、」
ここに来ての長考?適当でいいのに。
「なんでも良いよ?世界の半分でもやろうか?」
胸を張って、何でもどうぞという仕草をとる。
「じ、じゃぁ、、、御主人様の、、、」
キスとかいうつもりなのか?
いつものグリグリを準備しておこうかな?
アイリは少しテーブルとにらめっこをしてから、閃いたという感じで人差し指を立てた。
「世界全部!」
こいつ、怒られると思って途中で変えたな?ってか。
「全部かよ!欲張りか!ダメだ!」
「えぇぇ、くださいよ、ケチィ!減るもんじゃなし!」
「いやいやいや、俺の取り分が減ってるどころか無いんだけど?」
そう言って二人で大笑いした。
この感じ、久しぶりだなと思いながら。
食事を終えて、またゆっくりくつろぎながら明日の動きをシミュレーションしていると、食器を片付けたアイリが隣に座る。
「ねぇ、御主人様、、、」
「ん?」
真面目な感じのアイリが、いつになく艶っぽく見えてしまい、高鳴り始める心臓を必死に落ち着かせる。
恐らく、今日起きて待っていたのも、今から話そうとしている事を俺に伝える為だったのだろう。
「あたしがもし、そのネイさんみたいにされたら。」
俺はドキッとしてアイリの顔を見つめる。
いつか聞かれると思っていた質問だった。
そしてその答えは、俺の中で決まっていた。
「させないよ。必ず助ける。」
でも、アイリの反応は俺の想像していたものとは違っていた。
アイリはゆっくりと首を横に振る。
「あたしにとって、御主人様の邪魔になることが一番の悪夢だから。」
アイリは少し体を傾けて、頭を俺の肩に乗せるようにして体を預けてくる。
「ちゃんと、あたしを終わらせて下さい。絶対に。」
真剣なアイリの目を見る事ができずに天井を見上げる。
その願いだけは何があっても聞くつもりはないから。
「そんな事にはならない。絶対に。」
そう言ってごまかすと、アイリは静かに目を閉じた。
「信じてます。ずっと。」
「ア、アイリ?」
破裂しそうになるくらいに胸を高鳴らせながらアイリの顔を覗き込む。
スゥ、スゥーと聞こえてくる寝息。
思えば常に俺より早く起き、ウェンディ達の相手もしながら、ディアブラやフェンリルの魔力を供給し続けていたアイリが一番疲れているはず。
それは俺なんかよりも遥かに。
俺は彼女を起こさないように気を付けながら、ゆっくりと傾けてアイリの頭の上に自分の頭を乗せる。
彼女には届いていないであろう、だが確かに俺の中心にある大切な想い。
かつて、俺を救ってくれたアイリに密かに誓った想いを再び口にする。
「今度こそ絶対に守るからな。」
俺はアイリの眠りが深くなった頃を見計らって、彼女を抱き抱えて二階に上がってベッドに寝かせた。
アイリの部屋を出ようとして立ち止まり、聞き耳を立てる。
寝言で『・・・がほし・・・です』と言ったように聞こえた。
良く聞こえなかったので、もう一度言わないかと待ってみたが言いそうに無かったので大人しく扉を閉めた。
何か、本当に欲しいものかありそうだし、どこかで聞き出してプレゼントして上げよう。
アイリが喜びはしゃぐ顔を思い浮かべて、心が高揚してくる。
「サプライズとか良いかもな」
俺はそんな計画を考えながら、風呂へと向かうことにした。
初登場キャラなどは、そのキャラのメイン会で容姿などの説明を織り交ぜていくようにしています。
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小説書くのは難しいですね。
特に頭の中のイメージを相手にわかるように表現するのが難しいです!!
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