大一章幕間 純然たる闇
============================================
趣味で書きなぐっていた素人小説の投稿です。
語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、楽しんでもらえるように頑張ります!!
少しずつでも、コンスタントにUPしていきたいです。
応援、よろしくお願いします。
Twitter:@TamaSala_novel 次回予告を呟くとかつぶやかないとか
============================================
2018/05/01 誤字脱字等修正
お屋敷の廊下は華やかな調度品が、通る者の目を楽しませるように絶妙な間隔で配置されている。
外光を巧く取り込むように作られた窓から差込む光が純白の壁に反射してキラキラと輝く。
私はというと、そんな目にするだけで価値のある光景を楽しむ余裕もなく、足早にこの廊下を駆け抜けると、このお屋敷の地下にある会議室に向かう。
足元の真っ赤な絨毯がこれから向かう屋敷の主が行っている実験を思い起させる。
腹の底から酸っぱいものがこみあげるのを我慢して、階段を一歩ずつおりていく。
日の光が遮断され、急激に温度が下がっていく。
廊下の両サイドにじっと立ちすくんでこちらを見るソレの視線が私をにらみつける。
少し前までは悪魔とも人とも違う何か別のモノが捨て置かれていたが、今では見た目に悪魔とわかる容姿をしており、意思も持っているようだ。
「今日はかたづけは必要なさそうだな。」
実験は着実に成功へと向かっているようで、ホッと胸をなでおろす。
魔法で鍵がかかった大部屋の扉をひらいた。
室内には我々『純然たる闇』の幹部とその従者達が控えていた。
私は跪いて彼女を直接見る事が無いように床を見続ける者達の間を真っすぐ進み、主人の座る椅子の前、主人に最も近い位置まで進んでから、他の者と同じように跪いて臣下の礼をとる。
彼女は興味もなさそうに、手に持つ写し絵をこれまでに無いほどにウットリと見つめながら果実酒を口に含む。
良かった、あの写し絵は本当に上機嫌な時しか出さない。
写し絵に映る少女は淡いピンク色の長い髪をポニーテールの形に括っている、華奢で幼い顔つきは帝都でもトップクラスの可愛さを誇るだろう。
だが、それも彼女の両サイドに映る一目見るだけでソレとわかる悪魔と、思わず息を飲む程に清らかな毛並みと荘厳な鬣を湛えた聖獣が、彼女の可憐な見た目と相まって、何か神聖な雰囲気すら出している。
「本日は御機嫌麗しく。」
そんな、挨拶の定型文に対して彼女は嬉々として答えてくる。
「あら?わかった?ついに実験が成功したの!」
やはり、相当良い事があったのだろう。
「あぁ、ようやく次の実験に移れるわ。今日はこのまま少し疲れを癒すつもりよ。報告事は適当に貴方が聞いておいて頂戴。」
ふぅ!と肩で息をする。
今日は本当に何事も無く終わりそうだ。
「恐れながら!!」
そう思ったのも使の間、北方方面の情報を纏める文官が体をビクビクと震わせながら立ち上がり声を上げる。
おや?だが何時もの彼ではない?嫌な予感しかしない、、、
「昨日から、、、イジルの反応が途絶えました。そのため北方方面での実験体の回収が滞る事に。」
なるほど、彼は死んだのか。
先日はある特別な情報を彼女に持ち込んで大層な褒美を与えられたし、実験体の供給ルートを確保したと聞いていたので、自分の隣に初めて誰かが並ぶのかと思っていたのだが。
「イジル?なぁにそれ?」
「御主人様の実験体となる娘を確保すべくポルメルン王国に差し向けた下僕にございます。」
「??」
本当に何を言われているのか理解できない様子だ。
そもそもイジルが人の名である事すら覚えていなかった。
彼女にとって自分に傅く面々の名前等は、私を含めて、その崇高なる頭脳の端に記憶するにも価しない。
「そんな子いたかしら?でも、それって私に何か関係あるの?」
「い、いえ。」
報告者ではない自分が背中に冷たいものを感じている。
「で、では盗賊団の件はいかがいたしましょうか。」
もうやめておけ!!そんなどうでもいい事で彼女の耳を汚すな!
「盗賊団?何それ?そんな下賤なもの達が、それこそ私に関係あるの?」
「え、あ、いえ。悪魔実験成功の暁には家族をもとに戻すとお約束を。。。」
「はぁ?」
明らかに室内の空気が変わった。
先ほどまでそこにあった、柔らかな雰囲気は消し飛び、視線を送っただけで絶対零度の氷の中に閉じ込められそうな、そんな感覚に陥る。
「誰が?」
心臓に突き刺さる恐怖。
「この私と?」
心胆が凍り付く。
意識を強く持たないと!
自分の心が命を手放そうとしているのを感じる。
「約束を交わせると?」
彼女は何もしていない、ただ静かに、淡々と言葉を発しただけ。
だが、室内にいる高位の魔導士達が凍り付くように体を硬直させる。
体が芯まで凍り付いているのに、汗が滝のように溢れ出している。
後方でレベルの低い魔導士が数名倒れたようだ。
恐らく死んでいるだろう、今日も後片付けが大変そうだな、、、
「た、たいへ、、、」
そこまで言って、彼の頭はゴロンと床に転がった。
私の手に握られた銀色に輝く聖剣が、彼の頭と胴を二つに分ける。
さて、床掃除までする羽目になってしまったが、果たして、一応ここにいる者達の上司である自分は命を無くさずにいられるのだろうか?
まぁ、私がいなくても崇高なる彼女にとっては然したる支障もないか。
「お耳汚し失礼いたしました。」
深く、床に額が着く程に頭を下げる。
「あら?どうしたの?」
冷たい空気が再び柔らかく温かいものに変わっていく。
「御主人様と約束を交わせる者などこの世に存在いたしません。部下が妄言で御耳を汚した事この身をもって償いたく。」
私はその首を切り落としやすいように前方に伸ばして、その時を待つ。
「ふふふ、いいのよ。今日は機嫌がいいの。それにしても可笑しな事を言う子だったわね。魂が融合して変化したモノが元に戻るわけないじゃない。」
彼女は面白そうにケタケタと無邪気に笑う。
そう、彼女が以前、盗賊達のボスに向かって『そんなに大事なら、実験が成功したら返してあげようかしら』何ていう言葉は彼女の気まぐれに出た言葉でしかない。
いや、そもそも『返す』とは言ったが、『元に戻す』とは言っていないな。
であれば、あの異形のモノを即座に返した彼女は、既に約束を果たしているのではないだろうか?
あぁ、なんと慈悲深い、盗賊達も感謝しているに違いない。
もしかしたら、彼女ならば本当に元にもどせるのかもと思っていたのは事実だが、それは決して約束ではない。
彼女を縛れる者などこの世に存在しないのだから。
私は心が感激に満ち溢れるのを感じながら、彼女の後方に立つ護衛達に視線を移す。
「悪魔召喚に成功なされたようですね。」
「えぇ、完璧な形でね。でもまだ低位だわ。彼女の使い魔には到底かなわない。」
完璧な形の意味するところは、対価なく命令に従う奴隷にしたと言うことだ。
この御方以外に悪魔を契約無しに隸属させるなどという偉業が可能な人物は世界に一人しかいない。
「閃光の奴隷将軍:アイリ、、、様ですね。」
敵、しかも奴隷の身分。
だが、奴隷のアイリを敬称を付けずに呼び捨てにする事は、彼女の前では許されない。
この部屋の誰か一人がアイリを呼び捨てにした瞬間に、この部屋にいるレベルのカンストした魔導士全員が世界に還っている事だろう。
これは想像ではなく、実際にそうなった事があるから確実に言える。
「そう!!彼女が従える二匹の使い魔を見た時の衝撃がわかるかしら?」
興奮気味に話す。
「悪魔の中でも上級?いえ、上級の中でも最上級と呼ばれる悪魔:ディアボロスと、誰にも靡かない聖獣フェンリルを二体同時に従える見目麗しき少女!!」
つぅっと彼女の鼻から鮮血が流れ落ちる。
「あら、やだ。興奮しすぎたようね。アイリの話になるといつもこう。」
彼女は慌てた様子でハンカチを取り出して鼻元を拭う。
「次は天使召喚の実験に取り掛かるつもり。やっぱり彼女には悪魔じゃなく天使がにあっているもの。」
うっとりと再び、写し絵を見つめて果実酒を飲み始める。
「あぁ、アイリ。もう少し、もう少しで貴方を、、、」
その時は少しずつだが、確実に近づいている。
あの二人と戦う事になるのかと思うと気が遠くなるようだが、確実に勝たなければならない。
キュっと口に力をいれ目の前の彼女を見据えた。
私は暗黒騎士ゼエル。純然たる闇の深淵に飲まれ、惹かれしもの。
チキンは相変わらず。
盗賊団編のラストです。
この後はほんわかストーリーが続きます!暫くは、、、
後少し頑張って下さい!
============================================
小説書くのは難しいですね。
特に頭の中のイメージを相手にわかるように表現するのが難しいです!!
============================================