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勇者から魔王に転職したので世界征服始めました  作者: たまサラ
大1章 勇者から魔王に転職? 仲間に襲われる魔王様!?
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1-1.勇者から魔王に転職して仲間に襲われてみた

人生初の小説投稿です。

趣味で書きなぐっていた小説を改めて書き直して投稿してみました。


語彙力や表現力等まだまだ足りないところばかりですが、

楽しんでもらえるように頑張ります!!


誤字脱字やキャラブレ、設定矛盾等あれば御指摘ください。


2018/04/17 すいません、アイリの口調を普通にします。

2018/05/26 まだまだ序盤前半なのに名前被りを発見、、、修正。

「勇者になりたい」


子供なら誰もが一度は夢見て、自分の中の隠された何かを見つける為に毎日物思いに更ける。

大抵が実際に行動を起こすことなく、探さなければ見つかる筈の無い何かが、実際には自分には無いのだと悟った振りをして諦めるのだけど。

僕自身はそんな世の中の殆どの子供が通る道を、勇者や英雄に憧れて夢を追いかけたことはなかった。

僕はただ、、、

ただ目を閉じれば顔が浮かぶ人達、そんなほんの小さな世界を守れるようになりたいと漠然と思っていた。


幼い頃の僕は、どんなに夢を見たところで結局は皆、身の丈にあったごくありふれた普通の人生を生きていくのだと冷めた目で友達をみていた。


当然、自分自身を含めて。


僕の村は大きな山の裾野に広がる山林に面していて、材木や森に巣食う魔獣を狩って生計を立てている町というほどではないけど、それなりに人口は多かった。


学校だってひとつだけど建っていて、村の子供達が日々集まって勉強をしている。

木造の所々雨漏りしてしまうようなボロい建物ではあるが。

それでも、教師のような人を雇える程度には裕福だった。


森の奥には神殿のようなものもあり、幻想的な泉が名物になっていたので、神殿や豊かな自然を目当てに観光に訪れる旅人何かもくる。

そんな暇な人々は、えてして村にお金をいっぱい落としてくれる。


だから、その日もいつもと同じように目一杯の笑顔を作ってその人を迎え入れた。


「こんにちは!ようこそ※※※へ!」


その日の僕は村の案内当番。

街道から繋がる村の入り口で観光客に楽しい一時を予感させる。

それがお役目だった。


「あぁ、こんにちは。ごめんね。私は観光客では無いのだよ。

村長さんに会いに来たんだ。」


その人は穏やかに僕に微笑んでみせると、そのまま村の中へと入っていった。

その笑顔に何か違和感を感じた事は覚えている。

その後は、特に何事もない一日だった。


時折訪れる旅行者に向けて笑顔を作り、村の案内紙を手渡して村の宿場の道順を教える。

日暮れとともに交代の大人との引き継ぎを行い、家に帰って食べて寝る。


次の日も、そんないつもと変わらない日が始まるのだと思っていた。

小鳥たちの囀りと共に目を覚まして、身辺を整えたら朝ごはんを食べて学校に向かい、

勉強をして、午後からのお役目の時間。


でも、その日。

不意に、突然に、僕の人生は思いも掛けない方向に流れ始める事となった。

学校の先生は、僕ら全生徒を集めて村から少し離れた森の奥の神殿に連れていった。

そこには前の日に出会った旅人。


そばに跪いて頭を下げる村の重役達の姿が、彼女が特別な存在であることを告げていた。


眼前に広がる木々に囲まれた小さな泉。

雲の隙間から差込む直線的な光が湖面で反射して、キラキラと眩しく煌いている。

幻想的で何か”違う所”と繋がっていそうな、そんな怖さを感じる。


虹色の長くてサラサラとした綺麗な髪をした彼女はゆっくりと子供達の前に進み、大きな杖で地面をコツンと叩いた。


その瞬間、辺りが静寂に包まれる。

子供達は勿論だが、風に揺れる木々のざわめきも、森のなかに住まう住人達の囀りも、全てが彼女に支配されたかのように静まりかえった。


凄く神秘的で、怖さを感じたのをおぼえている。


彼女は不意に”将来の夢”は何か?と聞いてきた。

集まっていた子供は皆口々に「ゆうしゃ」「えいゆう」「せいじょ」になりたいと言っていた。


僕は何も言わなかった。

別に勇者になりたかったわけじゃなかったし、体の悪い両親や幼い妹を置いて貴重な労働力である自分が家を出るなんて考えたこともなかった。

その日、彼女は声をあげていない僕を見つけると、僕の手を取ってみんなの前に誘う。


「アルは何になりたいんだい?」

「ぼ、ぼくは、、、」


今思えば、何故彼女は僕の名前を知っていたのか。

いや、名前どころか愛称で呼んだのだ。


でも、その時の僕はそんなことを気にする余裕はなく。

自分が何を言えばいいのかわからなくって、彼女の顔を伺い見る事しか出来なかった。


彼女の表情は柔らかくて、なんて表現したらいいかわからなかったが。

ただ、人というには余りにも綺麗で優しくて心がほぐされていく。


「思った事をそのまま口にしてみてごらん?」

「ま、まもり、たい、かな?」

「何を守りたいの?」

「い、いもうと、とか、おとうさん、おかあさんも!」

「そっか!」

彼女は胸の辺りで手のひらを合わせて嬉しそうにしたが、友達はドっと笑い出した。

親友も年下の子も、、、好きだった女の子もみんなが俺を笑っている。

「夢が村人かよ。」

馬鹿にするような声が聞こえて、小さ過ぎる夢を言った事が恥ずかしくなって、少しだけ背伸びをした。

「あ、あと、あと、ぼくは、みんなもまもれるようになりたい。」

「みんな!?」

驚いたような表情でお姉さんが聞き返す

「うん!み~~~~~~~んな!!」

小さな手を大きく広げて、背伸びをしながらグル~っと大きな円を描いた。

それは家族だと小さ過ぎると感じた俺が()()みんなを対象にした、ほんの小さな背伸びだったのだが。

先生は僕の手をとってギュッと力強く握りしめた。

少し痛くって、びっくりして先生を見上げる。

「そうか、()()()みんなを守りたいのか!」

「え!?ちがっ!」


村のみんなであって、世界のみんなでは断じて無かったのだが。

僕が否定の言葉を口にするよりも早く、彼女は僕の手を両手でぎゅっと握りしめた。


「わっ!!」


僕の手を握った彼女の手から眩い光があふれ出す!


「じゃぁ、君は”ひとまず”勇者になりなさい」


彼女がそう言った瞬間、凄く強い風が僕の体を一気に突き抜けていった。


その後の事はあまりにも急激な変化に細かくは覚えていない。


幼すぎる勇者の誕生に大人たちが大騒ぎして、お城の兵隊がやってきて、気づいたら僕の故郷の王都にある騎士学校に入学させられていた。


もう、彼女の顔をはっきりとは思い出す事は出来ない。


あの人は本当にそこにいたんだろうか。。。

僕が勇者になった日の出来事。


その日から勇者としての教育を受け、伝説的な戦士に師事した。

そして出会った仲間とパーティを組み勇者の試練を終えて、いよいよ魔王討伐に向かう。


はずだった、ほんの数十分前までは、、、


はぁ!はぁ!!はぁ!!


ゴツゴツとした舗装のされていない道を全力で駆け抜ける。

ボロボロに崩れかけた小さな家々が視界に入っては一瞬で消え去っていく。


「まぁてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


間近に迫る声に反応して、少しだけ背後に目をやる。


ポニーテールの淡いピンク色の髪を左右に激しく振りながら、少女が猛スピードで追いかけてきているのだか、あの華奢な体で勇者である俺の全力に追い付いてくるのだ。


「くっそ!!追い付かれる!」


俺は全力で帝都の外へ出る門に向かって貧民街を駆け抜ける。


「諦めてお縄について下さい!!」


彼女は魔物や魔族を眷属化する魔物使いのスキル「捕縛チェーン」を発動させた。

彼女の手から飛び出すいくつものチェーンをギリギリの所で回避した。


かわしたチェーンが正面の街路樹をなぎ倒す。


あれは捕縛と言うより、明らかに()りに来ている。


俺は倒れてきた街路樹に飛び乗って、それを後方に蹴り飛ばす。


その反動で大きく前に進むと同時にアイリに向かって街路樹を飛ばしたのだが、

アイリは気にせず左腕で街路樹を受け流す。


異常だ、、、どこの世界に街路樹を片手で受け流せる女の子がいるというのか。


背筋に冷たいものを感じてさらにギアを上げた。


彼女の名はアイリ。

類稀なる身体能力と戦闘センスを兼ね備えた魔物使い。


そして、俺の勇者パーティの仲間だった女の子だ。


ちょっと前までは史上最強の勇者ともてはやされながら、人々の尊敬と感謝のまなざしをこの身にうけていたはずなのに。


「なんでこんなことに!!」


全力で逃げながら、空に向かって叫んだ。


珍しく雲一つない、一点の曇りもない真っ青な空に。


数十分前。


勇者の旅の最終試練、神授の儀式を受けにいった時に起こった事故が全ての始まりだった。


        ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



俺達は世界最強クラスの軍事力を誇るヴィスタル帝国の首都に来ていた。

帝都は喧騒と言ってもいいほど人々の活気に満ち溢れ、まるで魔王や魔族なんてものは自分達とは無縁のものだと感じているようにすら見える。


勿論、この地域を縄張りにしている魔族や魔物との突発的な戦闘は発生するが、直ぐに帝都直轄の聖騎士団がそれを追い払う。

そのため、帝都に暮らす人々の危機意識は緩みきっていたのだ。


「まぁ、その都民の緩みこそが帝都の平和と聖騎士団や為政者の優秀さの証だから悪い事ではない、、、か。」


含みのある物言いをしてしまった事に気づき、護衛兵の顔色を伺うが特に顔色に変化はない。

最も、そのような会話を耳にしてもポーカーフェイスを貫けるように訓練されているのだろうけど。


人々が普段の生活の中で生命の危険を感じることなく平和を享受できる。

それ自体は素晴らしいものなのだが、それは重厚な城壁に囲まれて常に騎士団に守られている帝都の中に限った話である。

勇者として各地を巡る中で目を覆うばかりの惨状も目にしてきた。


「外に戦力を割いて、帝都の守りが手薄になったら元も子もないか。」


帝都の外と中のあまりの格差に釈然としない感情を抱きながらも、『悪いことではないのだ』と自分を納得させて目の前にある大神殿の門を見上げる。


遥か神話の時代から連綿と続く人間と魔族の闘いの歴史。

勇者は世界8柱の神の試練を克服し、大神殿で聖剣デュランダルに神授の力を授かって魔王との闘いに挑む。

俺たちも神々の試練を乗り越え、神授の儀式を受けるところまで来た。


魔王は倒しても100年程で復活するのだが、それでも人々は魔王に怯える必要のない凪の時代が訪れる事を待ち望んでいる。


今、世界には6柱の魔王が世界を蹂躙しており、どの時代の勇者でもその全ての魔王を倒す事は出来ずに命を落としている。

中でも最強とされる暗黒魔王:ルシフェルや竜魔王:イオルムに勝つことができた勇者は存在せず、彼らは歴史にその名を刻んでからこれまで消滅したことが無い。


最もその2柱は特に世界征服や人間への敵意も強くはなく、時折気まぐれに襲ってくる天災扱いなので残り4魔王を倒せば勇者としては合格とされていた。


4魔王を倒して合格したところで、神託という名の命令は次を倒せと言ってくる訳で、勇者になったという事は事実上の死の宣告でもあった。


「天涯孤独の俺におあつらえ向けの仕事だな。」


7歳で勇者になって王都に引っ越した少し後に俺の村は魔王軍の襲撃にあって滅んだと聞かされた。

体の弱かった両親、最愛の妹はその事件で、今はもういない。


「あれから、約10年か。」


王都に行ったばかりの頃は早く強くなって、両親を、妹を、村のみんなを殺した魔王に復讐するために毎日必死に修行をしていたっけ。


「結局15歳で成人する迄は神の試練は受けられなかったんだが」


それまでの間にも勇者の立場と王都で培ったコネを使って村が滅んだ時の状況を調べてもらったのだが、どうもきな臭い。

魔王に滅ぼされたという割には村の建物等は綺麗に残っており、死体などは一切なく。

まるで、ある日突然に村人全員が神隠しにあったかのようだったと聞かされた。


成人してからこの2年間、勇者の試練をこなす為に世界各地を巡る中で、家族の生存の可能性を信じ、行方を探していた。


「勇者様、どうかされましたか?」


幼さを残る顔立ちの神官の女性が大神殿に続く門前で立ち止まっていた俺の様子を不安気にのぞき込んできた。


「あぁ、いえなんでも。」

「私は勇者様御一行の案内役を賜りました巫女のレイ・ホウヅキと申します。」

「勇者アルベルト・ヴィクトールです。名誉貴族に叙された時に適当に付けた家名ですので、できればアルとお呼下さい。」

「まぁ!それでは私の事もレイとお呼びくださいませ。アル様。」

「ありがとうございます。レイ。」

彼女は恥ずかしそうに顔をそらした。

呼び捨てはいきなり距離を詰め過ぎただろうか、まぁ今更なのでそのままでいこうと思う。

「レイ。神授の儀式の時間まで神殿内や転職儀式の様子を見学させて頂けるんでしたよね。」

「あ、はい。ちょうど間もなく転職の儀式がはじまりますので、まずは転職の様子を見学いたしましょう。」

「ありがとうございます。」

神殿入り口に歩を進める。

「まぁ、俺達は何度も転職してるから今さらだがな」 

めんどくさそうに頭をかきながら横に並ぶのはパーティ最年長の竜騎士グラナド。

「そう言うなよ。グラナドも大神殿は初めてなんだろう?」

「あたしは興味有るけどな、こんな立派な神殿で転職したことないし。」

聖歌手カルナは目をキラキラと輝かせて会話に割って入る。

「私も大神殿は初めてです。荘厳な作りが格別です。」

聖騎士ドルトムントはうっとりと大神殿を見渡している。

大賢者シエルと大魔導士リル・アルファは静かに後をついてくる。


もっともシエルの方はキョロキョロとあちこちに視線を動かして落ち着きがないのに対して、リルは視線をどこかに固定してりんとした表情のままついてきている。

さすが、世界に名を馳せる大魔導士リル様は常にクールだ。

帝都出身という事もあるのだろうが、おそらく初見でも彼女は同じだったと思う。

俺達はこの6人パーティで魔王との闘いに挑む事になる。

最後の試練迄はリルは参加しておらず、魔物使いのアイリを含む6人だった。


アイリは俺が王都にいた頃に奴隷として主人から虐待されていた所を助けた縁で俺の奴隷となり、以来ずっと俺の傍で支え続けてくれた。

だが元々俺の奴隷として否応なしに旅に参加せざるを得なかった彼女を、この先の魔王との闘いにまで巻き込みたくなかった。

皇帝陛下との会食の際にそんな話をしたところ、アイリの奴隷身分解放と皇宮での仕事まで融通してもらえる事になったのだ。

またアイリが抜ける穴についても、皇帝陛下より大魔導士リルを仲間にくわえる事を打診され補って余りある。

ちなみに交換条件として第十王女殿下を婚約者とする事になったのだが、王女はまだ十歳になったばかりだし、実際の結婚は魔王討伐後という事なので、俺は暗黒か竜魔王に殺されているだろう。

陛下としては勇者の名声を利用して、国民のコントロールに利用したいのだろう。

史上最強の勇者などと言われていても、やはりあの2柱に勝てるとは思われていないのが悲しい。


「こちらが転職の儀式を行う神託の間です。」

レイが大きくて重そうな扉に触れると、魔法仕掛けが起動して自動的に扉が開く。

神託の間は正面に巨大で威圧感のある転職神アーガイルの像が鎮座し、その足元に転職者と巫女が儀式を行うスペースがある。

また、扉からは観覧者用の長いすが何列も配置されている。

「まるで、結婚式場だな。」

「ふふ、そうですね。実際、こちらで結婚式が執り行われる事もあるのですよ。」

とレイが可笑しそうに笑いながら転職について説明をしてくれる。

冒険者はまず見習い期間としてアタッカー・タンク・キャスター・ヒーラーという基本クラスについて

簡単な依頼をこなす。

そこから剣士や戦士、魔術師、僧侶などの下位職、さらに中位、上位、超位という風に上位の職業に転職するらしい。


ちなみに、アタッカーの派生職業からキャスターの派生職業への転職は不可能で、キャスター系になりたければ、またキャスター系基本クラスから始める必要がある。

さらに超位クラスになるとアタッカーとキャスターの上位クラスをカンスト、つまり最大レベルに上げる事が前提となったりもするのでかなり大変だ。


「結構大変なんだな。」

おれは後ろに控える従者達に視線をやる。

みんな各クラスの上位職についている、ちなみにグラナドの竜騎士はアカッターとキャスターの超位クラスだったりする。

さすが歳の功!無駄に歳は取っていない。


観覧させてもらっていた転職の儀式が終わり、関係者が退室していく。

人がいなくなると、その広さがより強く感じられる。

神像の足元まで移動して神像を見上げると余りの大きさと神々しさに威圧される。

「この場所で祝詞をとなえて最後にこう言うんです。」

レイが儀式の真似事をしてくれたので、俺も先ほどの転職者の真似をして跪く。

「偉大なるアーガマの祝福により、汝の新たなる道を指示さん。」

俺はレイの台詞に合わせて頭を下げる。

「え!?うそ!?」

突然、レイが叫び声をあげた。

「何!?」

レイと俺の周りを儀式の光環が幾重にも重なって取り囲んでいる。

「そんな、勇者はクラス替え出来ないのに!!」

ーヤバい!!

そう直感した俺はその光環の外にでようとするが、何かに支配されていて体が思うように動かない。

「お、おい!!アル!!何が起きてんだ!?」

「アル!早く逃げて!!」

グラナドとカルナも身を捩らせているところを見るに、おそらく二人も、いやこの場の全員が同じように体を何かに支配されている状態だろう。


レイと俺の間に小さな光球が現れた刹那、弾ける様に室内が目を開けていられない程の眩しい光に包まれる。

同時に体の中を何かが駆け巡るのを感じ、身を震わせる。

次第に光が薄まり、元の静けさを取り戻した。


自分の体に特に異変が無いことを確認し、レイや仲間達を見渡す。

仲間の方もキョトンとした表情で俺を見ているので、彼ら自身には問題無さそうだ。

だが、この部屋で唯一レイだけは顔面蒼白でガタガタ体を震わせていたので、近づいてそっと抱き寄せた。


「大丈夫、大丈夫ですから。」

彼女の耳元でそっとつぶやくと、涙を流しながら俺の腕から抜け、その場に崩れ落ちた。

「う、うぅ、ごめんなさい。ごめんなさい。」

そう謝り続ける彼女に俺は一抹の不安を覚えて問いただしてみる。

「俺の方は何もありません。レイ、かなり震えていますが大丈夫ですか?」

彼女は震える手で、儀式の間にある神台を指さす。

そこには神より授かった四角い箱のような魔法石がおいてある。

どうやらそれに手をかざすと、今の自分のクラスや状況、俗に言うステータスが確認できるようだ。

俺は促されるままに、神台に手をかざす。

”ブン”という機械音と共に青い光で文字がつづられる。

その1行目にはこう書かれていた。

「転職成功、職業:魔王に更新されました。」


。。。


。。。。。。


。。。。。。。。。


「ん?」


時が止まる。


目をこすってもう一度読み返す。

魔王になりました、魔王になりました、魔王になりました

頭の中で何度もこだまする。

「どうなった、、、んん!?」

グラナドが突然背後から声をかけながら覗き込んでくる。

「うっはぁ!!」

見られたら不味い!

俺は咄嗟に手を外して、表示を消した。

「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

泣きながらも、少しずつ確実に俺から距離を取り始めるレイ。

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!殺さないで、お願い、許して下さい!!」

は?

いや、いやいやいやいや!

「えっと、、、」

なんだ?これは?なんの冗談だ。

んで人をどこかの殺人鬼みたいに、、、さすがに傷つくぞ。

チャキッ!と音がしたのでそちらに視線を移す。

「おいおい、グラナド、、、なんで俺に槍構えてんだよ、、、」

「いや、、、だって、、、ほら、、、とりあえず捕まえて後で色々聞かせてもらうぜ!!」

「待てって、俺は勇者だから!!何かの間違いだから!!魔王に転職とかないから!」

俺の固有スキルの一つ「危機関知」が発動し、ゾクリッ!と背筋に冷たいものを感じた瞬間

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!喰らえや!!桜花乱舞ぅ!!」

正面から舞うような、それでいて苛烈な槍撃が襲ってくる。

一撃でもくらえば俺の魔法障壁を突き破って致命傷になりうるような攻撃だ。

「うあぁぁぁぁ!!」

必死で躱しながらテラス側に逃げ込んだ刹那

「クリムゾンエクスプロージョン!!」

これはヤバい!

先ほど感じた悪寒、それは正面のグラナドではなかった。

咄嗟に俺の死角に回り込み詠唱を始めた帝国一、いや人類最高の魔導士リル・アルファの最強呪文であった。

俺の危機感知能力が「全力で逃げろ!」と告げている

「こんなところで!!」

単体への効果魔法とは言え、その余波で周囲に甚大な被害が及ぶ。

回避は無い!

「インヴィンシブル!!」

俺は自分の最強防御アビリティで物理・魔法を問わず、すべてのダメージを弾く防御結界を展開した。

魔王に転職させられたが、職業に関係なく取得できる「究極アビリティ」は有効だったのが助かった。

俺がテラスから全力で大神殿の外に向かって強く跳躍すると同時に飛翔魔法「フライ」を発動する。

その刹那にインヴィンシブルの障壁にぶつかった、爆発の強烈な爆風によって激しく吹きとばされた。


これが、俺の新たな人生、、、いや、魔人生かな?

とにかくそんな前途多難な日々の始まりだった。

小説書くのは難しいですね。

特に頭の中のイメージを相手にわかるように表現するのが難しいです!!


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