祝福
王宮の広間には大勢の貴族が集まっていた。私達が馬車から降りると、こちらへと歩いてくる人影があった。
「父上、母上、アンジェリア」
「コンラッド、遅いぞ」
「父上、申し訳ありません」
「アンジェリア、誕生日会に行けなくてごめんよ」
「コンラッド兄様。騎士団の仕事があったのでしょう? 私は気にしておりませんわ」
そういえば会ってなかったけど、兄がいたんだったわ。騎士の宿舎に泊まり込んでいるから忘れてたわ。今日は一緒に参加するのかしら。
「アンジェリア、今日のエスコートは任せてくれよ」
なんと、兄がエスコートをしてくれるらしい。兄は公爵家の次男であり、騎士でもあることから、令嬢から人気がある。そしてマダム達からも。兄は私と同じく銀髪で、瞳はブルー。妹から見ても美男子だ。兄と一緒にいるだけで目立つのではないだろうか。
そして公爵家の跡取りである長男のベルンハードは領地経営をしており、忙しくて王都まで来られないらしい。
ふむ。今知った。
「アンジェリアは綺麗だから心配だよ。私から離れないようにするんだよ」
「コンラッド兄様ったら大袈裟ですわ」
お父様がお母様を、兄が私をエスコートして広間へ入っていく。なんだか敵陣へ行く気分だ。
私達が広間へ入ると、一斉に注目を浴びた。一瞬静まり返る広間。
え?何?どうしたの?
私は不安になって兄を見上げた。すると周りから声が聞こえた。
「あの方が公爵家のご令嬢なのね。コンラッド様に負けずに可憐だわ」
「あのコンラッド様が微笑んでいらっしゃるわ」
「公爵秘蔵のご令嬢か……」
なんだろう。妙に注目されているのは兄のせい?
「アンジェリア、大丈夫だよ。私が守るからね」
「お兄様……。ありがとうございます」
何から守るのだろう。私は首を傾げた。
少し広間にいると、王族が入ってきた。国王、王妃、エサイアス王子、クリストファー王子だ。
「皆、よく集まってくれた。今夜の夜会でデビューする者達がいる。前に出なさい」
え?前に??
「さあ、アンジェリア、行っておいで」
どうやら行かなくてはいけないらしい。私は少しでも公爵令嬢らしくゆったりと歩いて前へ行った。そして私以外にも三人ほどやって来た。この三人と私の四人がデビューするということか。
「新しく社交界の仲間になる者達だ。皆、祝福を」
国王の言葉に貴族が皆手を挙げた。そして指先から光が出てきた。それが私達へと降り注ぐ。
何これ!?魔法!?ああ、ここはファンタジーの世界だったわ。