王宮夜会へ
ああ、この日がやって来てしまった。今日は王宮夜会がある日だ。私は昼間からお父様に贈られたドレスを着て、待機していた。そして公爵家の馬車へ乗り込む。
王宮夜会では、当然王族が主催だ。私は先日の私の誕生日会でのエサイアス王子の顔が気になっていた。嫌な予感がする。しかし行かない訳にはいかない。私の社交界デビューでもあるのだ。
私の暗い気持ちとは裏腹に、馬車は王宮へと向かって行く。
「アンジェリア、どうしたんだい? 緊張してるのかな?」
「アンジェリア、大丈夫よ。貴女の作法はどこへ出しても恥ずかしくないもの」
「お父様、お母様。私、不安で……」
エサイアス王子に何かされそうだなんて言えないわ。とにかく、また挨拶をして逃げるしかないわね。他の貴族から挨拶を受けなければいけないのだから、私にかまっている暇はないはず。
だが最近、私は体幹を鍛える運動を始めた。周りからは緩やかに舞っているようにしか見えないだろう。しかしこれは古武術であり、ありとあらゆる武器にも精通する。私が属していた暗殺集団でも行っており、体を鍛えるのに最適なのだ。アンジェリアの体は公爵令嬢らしく、運動不足で最初は筋肉痛が酷かった。でも今は毎日の鍛練でそれもなくなり、少しずつ鍛えられている。何かあっても多少は動けるだろう。
私が考えこんでいると、馬車が王宮へ到着した。