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 私は卒倒しそうになった。倒れなかったのは、ラッセが支えてくれたからだ。


「ど、どうしてここにクリスチャンが……」

「話は後だ。とにかく食べようぜ」


 私はくらくらする頭で席についた。

 使用人がスープを注いでくれる。

 久しぶりの豪華な食事。私はゆっくりと食べ始めた。私はマナーもしっかりと身に付いている。元々貴族だから当たり前だが。しかしそんな私を見て執事が驚いていたことなど気づかなかった。

 食事が終わると、ラッセは自分の部屋へクリスチャンと私を連れて行った。使用人にお茶を入れてもらうと、ラッセは言った。


「人払いを。しばらくこの部屋へは近づくな」


 使用人たちは頭を下げると、すっと部屋から出ていった。そしてラッセは話をきりだした。


「アンリ、驚かせてすまない。だが、腹を割って話すためにもクリスチャンが必要だと判断した」

「……なぜクリスチャンをご存じなのですか?」

「アンリは知らないのか? クリスチャンと言えば、旅をしていて行く先々で、異形のものに立ち向かえるほどの強さを持つ者として有名だぞ。だから、たいていの所では歓迎される」


 クリスチャンが有名!? 知らなかった。


「ラッセには女だってバレてるんだろ、お嬢」

「う、うん」

「なら、本当のことを話せ。ラッセは力になってくれるぞ」

「私のことを?」

「ああ、お前が何者なのかをな。少なくとも俺はお前を信じてる。お前が言ったこともな」

「クリスチャンの言う通りだ。話してくれ」


 クリスチャンが私を信じてくれてる。そのクリスチャンを招くということは、ラッセも私を信じることに決めたのかしら。賭けだわ。ラッセが私を信じてくれなかったら追い出されるに決まってる。ラッセは真剣な眼差しを私に向けている。私は覚悟を決めた。


「ラッセ、全てを話すわ」


 私はラッセに自分が前世の記憶を持ち、暗殺集団に属していたこと。元々戦いが自分の性に合っていること。領地を守り、ひいては国を守りたいことを話した。

 ラッセは真剣に聞いてくれていた。するとラッセが口を開いた。


「強くなりたいのはわかった。それにこの短期間でこれだけ強くなったのも理解出来た。だが、これからどうするつもりだ? 公爵家に隠し通せるとは思えない。それに君は皇太子との婚約が決まっている」

「それなんです。私は皇太子と結婚したくありません。このままではおそらく私が十六歳になったら、結婚させられるでしょう。だからその前に功績を残し、皇太子との結婚を破談にしたいのです」

「功績?」

「戦士の一人として。そして皇太子の婚約者として相応しくないように」

「なるほど。だから飛び込んできたのか」

「はい。でも知られた以上はここにはいられません」

「何故だ?」

「私を匿ったと糾弾されるでしょう。悪くしたら牢獄行きです」


 本当は私を認めてくれるラッセの側にいたい。でもラッセに迷惑がかかってしまう。私はそんなことも気づかないほど愚かだったわ。


「それなら、きちんと君のご家族へ話しに行こう。私と一緒に戦ってもらいたいと」

「無理だわ。私は皇太子の婚約者である前に、公爵家の娘なのよ。私の両親もあなたも好奇の目で見られるわ」

「大丈夫さ。君のことは将軍も認めている」


「ちょっといいかい?」


 クリスチャンだった。


「お嬢は考え過ぎだ。きちんと話せ。お前の母親は少なくとも理解している。親を説得し、戦士として立ち上がれ。今のお前の強さなら、軍隊も認めざるを得ないさ」

 

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