ラッセの屋敷
しまった! その前にクリスチャンに連絡しなければ!
「あの、その前に家族に挨拶をしたいのですが」
「ああ、そうだな。行ってこい」
「はい」
とにかくクリスチャンに報告! 私は走ってクリスチャンのいる宿へと向かった。私をずっと見つめているラッセがいるとは知らずに。
私はクリスチャンのいる部屋へ行き、扉を叩いた。が、返事が全くない。まさか留守!? どうしよう。とりあえず手紙だわ。
私はとりあえず、ラッセの家へ行くこと、ラッセが貴族だったことを手紙に書いて、扉の下から滑りこませた。
はあ、これからどうなるのかしら。女だってバレずに過ごせるかしら。自信ないなあ。ん? あっ! 私、自分のこと「俺」じゃなくて、「私」って言ってた! ヤバい! もしかしたら気づかれてるかも……。でも気づいた上で私を付き人にしたいなら、それでも構わないわ。ラッセの出方を見てみよう。
私はラッセのいる士官の寮へ戻った。
「お前、荷物はほとんどないな。なら、これから帰るから着いてこい」
うっ、心の準備が! でも行くと決めたからには行くわよ!
「はい!」
「いい返事だ」
ラッセはマントをバサリと翻すと、扉を開けて歩き出した。士官の寮の正門には馬車が止まっていた。立派な馬車だ。
こんなに立派な馬車だとは……。これは伯爵以上だ。まずい。ますますバレる可能性が高い。でも仕方がない。
ラッセと私が馬車に乗り込むと、馬車は滑るように走り出した。馬車はしばらく走った。王宮へ近いほど身分は高い。ラッセはかなり身分の高い人物のようだ。それから少ししてラッセの家に到着した。
これは……。この屋敷は……。かなり身分が高いわ。
ラッセが正門へ歩いていくと、扉の前に、いかにも執事らしき人が立っていた。
「ラッセンハイド様、お帰りなさいませ」
執事はそう言うと、扉を開けた。すると、使用人がずらっと並んで、おじきをしてラッセを迎えた。私はとりあえずラッセの後ろを着いていった。