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王族の前へ

 私はラッセについて訓練場へと向かった。士官全員が整然と並び、ひざまづいていた。ラッセはその前を悠々と歩き、ひざまづいている士官の前に立った。


 何故!? まさかラッセは身分ある人!?


「来たか。ラッセンハイド」


 将軍がラッセのことを呼んだ。ラッセンハイド!? まさかラッセは貴族!? 


「アンリ、こちらへ来い。将軍に紹介する」


 私はその場に縫いとめられたように動けない。するとラッセが私の腕を引っ張った。


「将軍、紹介します。私の付き人のアンリです」

「随分貧弱じゃないか? お前にしては珍しいな」

「それが、こいつは使えるんですよ。アンリ、こちらはカスパル将軍だ」


 私は慌ててひざまづいた。


「アンリと申します。お会いできて光栄です。お見知りおきを」

「ふむ、礼儀はわきまえているようだな。ラッセンハイド、そろそろクリストファー殿下がいらっしゃる」

「はい」

「準備を」

「はっ!」


 ラッセは士官の前へと立ち、呼び掛けた。


「私はラッセンハイド。副将軍にあたる。皆、クリストファー殿下をきちんと出迎えるように」


 ざわり


 訓練場が揺れた。ぼそぼそと話す声がする。それもそうだろう。ラッセは士官のふりをしていたのだから。


「静粛に! 私のことは後回しだ!」


 訓練場がぴたりと静かになる。そこへクリストファー殿下が側仕えと近衛兵と共に入ってきた。


「クリストファー殿下の御成りである!」


 将軍の声が響く。ラッセは将軍の近くでひざまづいた。それを見て、私もラッセの後ろにひざまづく。


「皆、軍隊は近衛とは違い、国の要となっている。それを心して、訓練に励むようにお願いいたします」


 クリストファー殿下の簡単な挨拶が終わると、将軍が士官に呼び掛けた。


「今日は殿下が訓練をご覧になる。全員整列!」


 将軍の言葉とともに、士官全員が立ち上がり、ざっと整列した。ラッセも立ち上がり、将軍の後ろに控えた。私は付き人なので、ひざまづいたままだ。


「カスパル将軍、この場を設けてくれて感謝します。副将軍はラッセンハイドと申したか。将軍を支えてください」

「クリストファー殿下、勿体ない御言葉をありがとうございます」

「……そちらはラッセンハイドの付き人ですか?」

「はい、そうです」

「顔を上げよ。許します」


 クリストファー殿下が私に話しかけた。げっ! どうしよう! 


「アンリ、どうした? 顔を上げろ」


 ラッセに言われたけど、私は顔を上げることができなかった。






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