入隊まで
さて、お母様という協力者を得たのだから、これで軍隊に入隊出来るわ。でも旅に出るというのが名目。護衛もついてくるし……。どうするのかしら。お母様に聞いてくるのが早いわね。
「ナタリー、お母様との面会をお願い」
「かしこまりました」
うーん、護衛に荷物もいるし、きっと馬車で行くことになるのかしら。
「お嬢様、奥様がお待ちです」
「ありがとう、ナタリー」
私はお母様の部屋へと向かった。
「お母様、アンジェリアです」
「入りなさい」
側仕えが扉を開けてくれる。
「お母様、突然申し訳ありません」
「気にしなくていいわ。ああ、人払いを」
お母様が言うと、部屋から皆が出ていく。
「それで? これからのことかしら」
「はい、そうです。旅といっても護衛がいますし、軍隊に入隊というのは出来るのかと……」
「大丈夫よ。護衛は私が決めると言ったでしょう」
「え? でも……」
「ふふ、はっきり言えば護衛はいないのよ。見せかけだけよ。出発するときだけのね」
「お母様、それで大丈夫なのですか?」
「平気よ。あとはクリスチャンに任せるわ」
「え? クリスチャンが着いてきてくれるのですか?」
「もう交渉済みよ。ただ軍隊の中には入れないから、近くの宿にいるって訳」
「でもクリスチャンは旅に出るのでは?」
「貴女が心配なんですって」
そんなに心配されるほどかしら? 女なのに男の軍隊に入るから? とにかくクリスチャンに確認しなくては!
「お母様、お話し中失礼します!」
私はお母様にきちんと挨拶もせずに、部屋を飛び出した。
「あらあら、アンジェリアったら。ふふ、これからが楽しみね」
お母様の呟きも私の耳には入らなかった。私はクリスチャンの部屋へ飛び込んだ。
「クリスチャン!」
「お? お嬢、どうした?」
「私の軍隊の入隊に着いてきてくれるって本当?」
「ああ、まあな。旅に出るよりも楽しそうだからな」
「本当にいいの?」
「ナイフ投げや短剣の練習にも付き合ったんだ。最後まで見届けさせてもらうぜ。お嬢の本気をな」
クリスチャンはにやりと笑った。
これは負けるわけにはいかないわ。
「もちろん立派な戦士になってみせるわ」