協力者
これから軍隊に通うなら協力者が必要になるわ。ナタリーを無理矢理引き込もうかしら。いえ、ダメだわ。もしもの時罰せられるのはナタリーだもの。
私が悩んでいる時だった。
「お嬢様、奥様がお茶をご一緒にとのお誘いです」
「わかったわ」
私は母のサロンへと向かった。
「お母様、お招きありがとうございます」
「まあ、アンジェリアったら他人行儀ね。早く座って。あ、人払いをお願い」
お母様は自分の侍女に伝えた。皆が出ていったところでお母様が口を開いた。
「王妃教育はとりあえず合格したようね。しばらくは新しい先生はいらっしゃらないわ」
「王妃教育が無事に終わって安心いたしました」
「先生も褒めてらしたわ」
「ありがとうございます。お母様」
「……ところで最近クリスチャンと二人だけで出掛けているようね」
ドキン
気づかれてる……? まさか軍隊のことも……?
「やりたいことがあるのは良いことだわ。あなたは魔法もあまり使えないようだし……。でも毎日抜け出すのは大変でしょう?」
やっぱりバレてる! どうしよう。やめろと言われても、やめられないわ。
「アンジェリア、何て顔をしてるの? 感情を出しすぎよ」
「お母様、あの……」
「大丈夫。知ってるわ。軍隊に入りたいのでしょう?」
ぎゃー、やっぱりバレてる!
「だからそんな顔をしないの。反対してる訳ではないのよ」
「……え?」
「あなたには話したことはなかったけれど、私は以前軍隊に属していたの。まあ、魔法部隊だけれど」
「そうなのですか……」
「ふふ、だから協力してあげるわ」
「お母様?」
「毎日出掛けるのは大変でしょう? あなたは王妃教育の一環として市井を見に行くのよ。つまり旅に出るの。護衛は私が決めます。それなら軍隊にしばらくはいられるでしょ?」
「お母様、よろしいのですか?」
「任せて」
お母様は茶目っ気たっぷりに笑ってみせた。でもこれで協力者を得たわ! しかも最高の!
「お母様! 私、立派な戦士になってみせます!」
「自分の身を守ることも大事だもの。魔法が使えないあなたには必要なことだと思うわ。頑張ってらっしゃい」
「はい!」