報告
翌日、またギルデン先生がやって来た。
「昨日言ったことは出来たか?」
「それが……炎が大きくならないのです」
そう。あれからずっと練習したが、ピンポン玉の大きさからもっと大きくはならなかったのだ。
「……」
ギルデン先生は考え込んでいる。どうしよう! 見放されたら!
「じゃあ今日は外へ出よう」
良かった。見捨てられた訳ではないのね。
ギルデン先生は花壇の前で止まった。
「次は水だ。この花壇に水を注げ。こんな感じだ」
ギルデン先生はそう言うと、また手のひらを上にして、水をじょうろのように出した。
「さあ、やってみろ」
私は水を出すように念じた。
ポタポタ
なんともお粗末な水滴が出た。だからどうして? こんなに明確なイメージがあるのに。
またギルデン先生は考え込んでいる。
「じゃあ次は風だ。あの木々を揺らすんだ」
ギルデン先生は指の先から風を出し、ざあっと木々を揺らした。私も同じように指先から風を出すようにイメージした。
ふわり
またしても少ししか出ない。
「……」
またギルデン先生は考え込んでいる。どうしよう! 今度こそ見捨てられる!
「ギルデン先生! 私もっと練習しますから!」
「いや、お嬢さんが悪い訳ではなさそうだ。公爵を交えて話そう」
「どういうことですか?」
「あとで話そう」
ど、どうしよう! 家庭教師をやめるのかしら。お父様は立派に魔法を使いこなしていると聞いているわ。その娘である私が魔法を操れないなんて……。
「公爵がお呼びですわ」
ナタリーの声がした。
私はギルデン先生とお父様の執務室へ向かった。
「ギルデン先生、どうなさったのですか」
お父様は驚いているようだわ。それもそうよね。家庭教師がいきなりやって来たんだもの。
「公爵、お嬢さんだが、魔法の才能がないようだ」
私はギルデン先生の言葉に愕然とした。才能がない?
「……ギルデン先生、どういうことですかな」
「お嬢さんは立派に魔法のイメージは出来とる。水や風をすぐに出せたのだからな。だが、少ししか出せないのだ。少しは使えるが、大したことは出来んだろう」
そんな! 攻撃魔法を習うつもりだったのに!
「そうか……。たまにそういう者もいると聞く。それがアンジェリアだとは……」
「才能はないが、講義は全て行う。何かの拍子に増幅する可能性もあるからな」
「わかりました。ギルデン先生、よろしくお願いします」
私はショックから立ち直れないでいた。
「お嬢さん、とりあえずは魔法について全て教える。時として知識は武器にもなり得るからな」
「……はい」
ギルデン先生の講義は一ヶ月続いた。実技はなく講義だけ。でもギルデン先生の言う通り、役に立つこともあるかもしれない。知識は大事だもの。私はなんとかギルデン先生のスパルタ式講義を頭に詰め込んだ。