家庭教師2
さあ、午後は魔法の先生がいらっしゃるわ。どんな風に魔法を使うのかしら。楽しみね。
「お嬢様、家庭教師の先生がおみえになりました」
「わかったわ。お通しして」
ナタリーが扉を開けると、おじいさんが立っていた。そしてゆっくりと部屋の中へ入ってきた。
「まったく! わしを家庭教師に引きずり出すとは、公爵くらいのもんだよ」
いきなりの悪態に、私も目が点になった。公爵とはお父様のことよね。引きずり出したってことは引き込もっていたのかしら。あ、年齢的に引退していたとか? とりあえず挨拶は必要よね。
「初めまして。ヒューメリンタ家のアンジェリアと申します。どうぞご指導よろしくお願いいたします」
私が優雅に一礼すると、そのおじいさんも答えた。
「わしは、アイモ・ギルデンだ。公爵の家庭教師もしていたことがある。だからひっぱり出されたのさ」
「お父様の、ですか……」
だから年齢が上なのね。
「わしはスパルタだ。お嬢さんがついて来られないようなら、わしは断るからな」
「大丈夫ですわ。ギルデン先生。私、魔法にとても興味がありますの。早く一人前になりたいですわ。だからご指導をお願いいたします」
「……やる気はありそうだな。では早速始めよう」
まずは簡単な講義からだった。魔法は、火、水、風、土、光、闇の六つの要素で成り立っているらしい。そして全員が全属性なのだそうだ。王宮の夜会での「祝福」は、主に光だが、他の属性もなくては出来ないそうだ。それ以外にも各属性に対する話がされた。
ふむふむと私は聞いていた。
「じゃあ、今日はここまでだ。実技は次だな」
「え? 今日は実技はないのですか?」
「年寄りに無理を言うな!」
ギルデン先生は来たときと同じように、ゆっくりと帰って行った。
こうして二人の家庭教師との顔合わせも終わり、本格的に指導が始まることになった。