王妃教育
私は皇太子の婚約者となっているらしい。らしい、というのは、私が認めたくないだけだが。私に何の打診もなく、不意討ちだったのだから。私は認めたくはないが、国内のほとんどの貴族の前で発表されてしまった以上、表面的には大人しくしているしかないようだ。
そんな時だった。朝食の席でお母様が私に言った。
「アンジェリア、今日から家庭教師の先生がいらっしゃるからそのつもりでね」
「家庭教師……ですか? 今までの先生方とは違うのですか?」
「今日からいらっしゃるのは、王妃教育の先生よ」
「!!」
「あなたは王妃になるのだから、今までよりも洗練された所作を身に付けないとね。それに王妃として王を支えるように、外交の勉強もあるわ」
またしても突然である。王妃教育だなんて!王妃にならない私には必要ないわ。なんて言えないし……。
「わかりました。お母様」
これしか答えようがないじゃない!
「午前中にはいらっしゃるから、粗相のないようにね」
「はい、お母様」
これでは鍛練の時間が減ってしまうわ。くそー、エサイアス王子め!
「アンジェリア」
「なんですの、お父様」
つい冷たい声が出てしまった。元はと言えば、私に断りもなく婚約者を決めたお父様が悪いもの。
「……アンジェリア、なんだか冷たくないかい?」
「お父様の気のせいですわ」
「そうか? 王妃教育で忙しいのはわかってるが、魔法の家庭教師も今日の午後に来ることになっている。貴族として少しずつ学んでいくんだよ」
魔法! これは楽しみだわ! 攻撃魔法を習うんだから!