武器
王宮での夜会が終わったあと、クリスチャンがまた来てくれた。今度は馬と一緒に。馬にくくりつけられているのが例の荷物だろう。
馬はさすがに屋敷には入れない。私が荷物を下ろそうとすると、側仕えが慌ててやって来た。
「お嬢様、私どもがいたします」
私はクリスチャンに目配せをした。クリスチャンは小さく頷いた。
「では、皆にお願いするわ。私の部屋まで運んでちょうだい」
「かしこまりました」
大きく布地にくるまれたものを私の部屋へと運びこむ。
「お嬢、人払いを」
クリスチャンが言った。
「ええ、わかってるわ。ナタリー、お茶を淹れて下がっていて」
「かしこまりました」
「それでクリスチャン、どうなの?」
「とりあえずナイフ10本とお嬢が着られそうな服を調達してきたぜ」
「さすがね。ありがとう、クリスチャン」
私はお礼を言うと、クリスチャンが持ってきてくれた包みを開け始めた。小型のナイフ10本と騎士見習いが着るような服を見て、私はにんまりとした。
ナイフは私の腕にくくりつけられるくらいの大きさだ。投げるのにも最適。接近戦でも有利となるものだ。そして服。これも目立たないように灰色の見習い服。それに加えて、私の頭を隠す帽子のようなものまで入っていた。
「クリスチャン、凄いわ!私の注文通りのものだわ」
「そうかい。お嬢に気に入ってもらえて良かったぜ。ところで、体が引き締まってきてないか?」
さすがクリスチャン。見る所が違う。
「ええ、少しずつ以前の勘を取り戻すために、簡単な武術を始めたの。これからはナイフ投げで武器にも体を慣らすわ」
「……お嬢、本気なんだな?」
「何が?」
「戦いに身を投じるのかってことさ」
「……そうね。この世界では魔物?魔獣?がいるんでしょ?アンジェリアの記憶にあるわ。それで人的被害があることも。それらと戦うのもいいかと思って」
「なるほどな。それも面白そうだな。ところで、お嬢、しばらく滞在してもいいか?」
「もちろんよ。クリスチャン。また旅の話を聞かせてね」
「ああ、今のお嬢に有益な情報もあるかもな」
「ふふ、楽しみね」