目覚め
ん?ここどこ?
暗闇がわたしを覆う。無の世界。一人漂うわたし。
「お嬢様、おはようございます」
ん?お嬢様?
「お嬢様?いかがいたしました?」
「……なんでもないわ。おはよう」
「お食事のご用意が出来ておりますわ。お召しかえをしましょう」
「そうね」
「では、失礼いたします」
侍女が私の夜着を脱がしにかかった。
「ひっ、一人で出来るから!」
「お嬢様?どうなさいました?」
「服を出しておいてちょうだい。終わったら呼ぶから、部屋から出ていて」
「……かしこまりました」
ふう、いきなり服を脱がそうとするんだもの。驚いたわ。それにしても、ここは……。そうだわ。私は『アンジェリア』。公爵家の一人娘。でも「わたし」は違う。わたしは日本で生まれた「佐藤章子」。テロ組織を壊滅させるために仲間と暗躍していた。最後は殺されたけど。でもテロ組織は壊滅寸前だったから、きっと仲間がなんとかしたわね。
それよりもそのわたしがなぜ公爵令嬢になっているのかしら。この国はエルファネア王国。私はその筆頭公爵であるヒューメリンタ公爵家の長女。
これが「転生」ってやつ?私は明日十四歳になる。どうして今、「わたし」の記憶が甦ったのかしら。