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慈悲を乞う奴隷少女、主人は罰を下すために無双する

アマ大賞一次突破記念に更新!


 地響きを上げ砕ける大地。乱舞する稲妻の中で、巨大な体躯が踊る。

 禍々しき黒の鎧は砕け、幾たびも首を落とした刃は折れて、それでもなお、踊る、踊る、踊る。

 否、踊ってはいない。死にものぐるいで、それは戦っていた。

 武器を失ってもなお卓越した戦技が、魔術が、そしてなお折れぬ意志が、死地を舞う。

 それでも──それでも、やがて終わりはくる。彼を──魔王を追い詰める存在によって。


魔王「ぐぅうわあああああああ!!!」


 やがて決定的な一撃が、魔王を貫く。衝撃と、そして敗れたという感覚が全身を貫いた。


魔王「な、なぜだ……魔王たる我を傷つけるには伝説の聖剣のみなはず……なぜ、ただの人間のお前が……武器も持たず素手のお前が……」


魔王「悪人顔のデブのおっさんがこの我を倒せるのだ!?」


主人「うるせーなバカやろう! レベル上げて物理で殴りゃ大抵どーにかなるって老師もいってたんだよ!!」


魔王「なんという理不尽!?」


主人「黙れとっとと封印されろ! じゃねーと帰れねーんだよ! おい僧侶ツボもってこいツボ! こないだ買った封印に使うやつ!」


僧侶「あ、あの市場で買ってきた安物ですかー。はい!」


魔王「え、ちょっとそういうので安物とかやめてよなんか小さいよねそれ」


主人「文句いうな入れよオラァ!」ギュウウウウウ


魔王「いたたたたたたたやめてやめて肩が肩があああ」


主人「ふぅ……これで魔王は封印された……あとは自動的に召還陣が開いて俺は元の世界に帰れるはずだ……さすがに20時間で異世界救うのはキツかったな」


僧侶「いやー、まさか聖剣無しで倒せるとは」


主人「聖剣のある場所まで船旅で行き来して半年かかるとかやってられるかバカらしい!」


魔法使い「手下も四天王も三人衆も魔王も全部おっさんが素手で蹴散らしたから、私らなんもしなくてただ見てるだけだったわね……しかしこのツボは誰の手にも触れぬように厳重に封印しなければ」


主人「オマエ等のレベルアップまで待ってられないからな。ツボ? めんどくさいから肥溜めにでも沈めとけ。そうすりゃ誰も触らんだろ」


ツボ<エエチョットソウイウノヤメテヨォォ


姫「ありがとうございます勇者様……本当に帰ってしまわれるのですか? 今なら召還陣を破壊してこの世界に止まることもできます……ここでは名誉も財宝もあなたのものになるのですよ」


主人「出会ったころのお転婆から随分とおしとやかになったものだな姫よ……悪いが止まる気はない。帰らせてもらう。名誉だの財産だの向こうでも元々もっておるわ」


主人「俺にはそんなものよりも帰らねばならん理由があるからな」


姫「それは……なんですか?」


主人「それはな…さて、ではアレをやるか」


姫「?」


主人「ああああのクソ奴隷がああああ!!!」


姫「」


僧侶「」


魔法使い「」


ツボ「」


主人「お前にトラックの前に押し出されて轢かれると思ったら異世界行きになったじゃねーか!! 急いで魔王倒して世界救ったからいいものの、帰ったらどう仕置きしてやろうか!!!」


 △ △ △


主人「というわけで今帰還したぞこのクソ奴隷がよおお!!」


奴隷少女「申し訳ありません! もう二度といたしませんからお許しください! ──でも異世界行って魔王倒してきたとかご主人様良い年してなろう小説の読み過ぎですよぉ……」


主人「うるせぇなほんとにやってきたんだよめっちゃ大変だったんだぞ!!」


奴隷少女「なんですか素手で魔王軍壊滅ってセガールじゃあるまいし」


主人「こないだコカインマフィア全滅させたときよりは楽だったわ! お前にわかるか! 『ステータスオープン』というと目の前にウダウダ数字が並んでくるこのウザさ! 頭のなかに「新しいスキルを習得しました!」とか声が聞こえるんだぞ、狂うかと思ったわ!」


奴隷少女「異世界いったのは私のせいじゃありませんよぉ……」


主人「うるせぇバーカ全部お前のせいだ! やはりお前には痛みと苦しみで身の程を理解させないといけないようだな! こっちにこい!」


△ △ △


主人「よし、やれ」


奴隷少女「う、うぅ……みんなぁ! 今日も奴隷男の娘アイドルのYouTubeチャンネルにようこそ!」


奴隷少女「今日はファンから沢山の質問のコメントをもらったからお答えするねー!」


奴隷少女「『ほんとにちくわが栽培できると思ってるんですか?』

……お、思ってるもなにも家で毎日ちくわ収穫してるよぉ! 青いうちに収穫すると磯部揚げ、熟してから収穫するとカレー味になるんだよ!」


奴隷少女「『演技ですよね? じゃなかったらちくわ埋めるとかしないでしょ』

え、演技じゃないよぉー! いつもちくわ埋めてるよー!」


奴隷少女「『埋めるとかちくわ作ってる人に申し訳ないと思わないんですか?』

あ、えっと、あの水産加工業の人たちごめんなさい……」


奴隷少女「『いつもみてます おねぇさんのまねをしてちくわをうめてみたけどおかあさんにおこられました わたしもちくわのうかになりたいです 5さい』

ごめんなさい…ごめんなさい…許してください…」


奴隷少女「『頑張ってちくわ埋めてください』

もうやりたくない……」


主人「早くも心が折れてるな! まだまだいくぞ!!」








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