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ゾンビだって必死なんです!  作者: 木村カロム
第一章 HELLO NEW WORLD
6/6

移動


女性の腕をつかんで逃げるなんて結婚式に乱入した元カレみたいな気分だ

そもそも彼女が居た事無いのになんて自分に突っ込んでみたりする


俺以外の面子はそんな事も考えれないくらい必死な形相で階段を駆け下りている

遠くで男の悲鳴が聞こえる度、女性の表情がこわばり瞳に涙を溜めていた

金髪は「やべぇ!まじやべぇ!」とブツブツ言っているし

おっさんはおっさんだった


5階から1階へ駆け下り1階のロビーに出た所で一旦立ち止まる

「どうずんだよ!余裕じゃなかったのかよ!」と金髪が俺に向かって怒鳴る

そう言われてもねぇ…


「ここに居ても逃げ場がないし、食糧も無いと困るんで食堂にいきませんか?」


「は?食堂とかゾンビめっちゃいるしお前やれんのかよ!」

金髪が俺に突っかかってくる

「君、ちょっと声が大きくないかいぃぃ」

おっさんが肩で息をしながら注意する


「は?!てめえ誰に助けてもらったと思ってんだよ!」

金髪に胸ぐらを掴まれておっさんタジタジ


「さっき食堂に行ったらやつらは数体だけで、静かに行動すれば大丈夫ですよ

 それに、うまく誘導して封鎖できれば当面の食糧も確保できるだろうし…」


金髪は少し間を置いてゆっくりとおっさんの胸ぐらを離した

3人ともこんな状況に置かれて余裕が一切無いんだろう



「とりあえず静かに移動しましょう」



俺が先頭に立ってさっき通ってきた道を戻る

細い通路に入る時に皆の足が一瞬止まるが俺が先に行くと置いてかれまいと必死で付いてくる


細い通路の曲がり角に近づくとなにか音が聞こえる

ジェスチャーで「止まれ」「静かに」と伝え

ゆっくりと片目をだす


ヤツだ…


細い通路は1本道で戻るとゼミ棟、進めば食堂

小さく響かない声で「1人だけです」と伝える


「1匹ならぶっ殺して進もうぜ」と金髪

まてまて…誰がやるんだよと考えてみる

俺は襲われないけど、他の人は違うみたいだしここは安全第一だな


少し戻ると用具室があったな…

「やり過ごしましょう、良い考えがあります」

金髪は不満そうな顔をするが、他の2人は安堵した


少し戻って用具室の扉を少し開け

中は薄暗く小さい窓からそれが見える

ヤツらは居ないようだ


皆を中に入れて俺はもう一度廊下に出る

バイトの初給料で買ったGG-SHOCKを腕から外し

5分後にアラームをセット(音量低め)

用具室から十分距離をとって腕時計を置く

音を出さない様静かに用具室に戻った


皆は薄暗い中体を小さく丸めて座っていた

5分の長い沈黙がより不安気持ちを掻き立てる

女性は体を小刻みに震わせ鳴き声を押し殺している



ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピピピッ 



音が鳴った瞬間緊張の糸が張りつめる



「あ゛あ゛あ゛ぁあああ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁあ」



遠かったうめき声が徐々に近づいてくる

ドアのガラス窓にうつる人影がゆっくりと通り過ぎていく

ゆっくりとドアを明けて覗く

よし、おとり作戦は成功だな


ドアがヤツの視界を遮る様に開く

皆にアイコンタクトで行動開始と合図を送る

まずは俺が先に移動して曲がり角まで移動

角からヤツを確認しつつ合図を送る


次に金髪、その次におっさんと順番に来る

あれ?女性が来ない

ヤバい、そろそろアラームが切れる

仕方ないな…、かる息をすい込み音を立てずにダッシュ

ドアに付くと女性は腰が抜けて立てなくなっていた


「大丈夫、気付いてないよ」

女性は小さく頷く

小刻みに震える女性の手を取りゆっくりと移動する

あと数歩で角のまで付く時にアラームが止まった


女性の顔に絶望感が漂う

俺は腕に力を入れて女性を引っぱる

引っぱられた女性は大股で俺を追い抜き勢い良く角の向こう側へと入った

女性の手を離し、俺が角に曲がる時ヤツの方を振り返ると

ヤツは冷たい目で俺をジッと見ていた

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