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迷路脱出の果て

作者: 頭山怚朗

 何時の間に私は迷路に迷い込んでしまっていた。“早くここから出ないと! ”と、私は焦った。しかし、その迷路は複雑で簡単に抜け出すだすことが出来なかった……。

 また、壁に突き当たった。どうしたらいいだろう? 右に行くべきか、それとも左に行くべきか?

 壁に矢印があるのに気づいた。矢印は右を示していた。一瞬、躊躇したがそれに従うことした。次の壁に突き当たった。左の矢印が出ていた。それに従った。次は右。次は左。右、左、右、右、左、右、左、右……。

 私は表に出た。明るい太陽が空にあった……。

 私は奇妙な夢から目覚めた。そこは、古い木造旅館の一室だった…。

 辺りは何か異常だった。点けていたはずの蛍光灯の小さな補助灯が消えていた。変な臭いもした……。

「火事だ! 火事だ! 」と、遠くで誰かがヒステリックに叫んでいた。

 私は慌てえて飛び起き廊下に出た。いやな煙の臭いがした。昨夜、建物が複雑で出口が判りにくかったのを思い出した。朝が開けかけていて、何とか見えたのだけが救いだった。

 宿泊客が逃げ惑っていた。彼は言った。「廊下が複雑で訳がわからない。折角の非常も荷物でふさがれ開かない。逃げられない! 焼け死ぬ!」

 そこは二階で、その下は高い崖になっていて抜け出すことは出来なかった。

 彼は右から左へと通り過ぎていった。

 どちらに行くべきか? 

 私は迷った。私はついさっき見た夢を思い出した……。

 最初は右だった。次は左、その次は右……。左、右。左、次は火に近づく選択だったけれど右に曲がった。右、右、左、右。次は熱く燃え盛る火に近づく左を選択。右に曲がるとドアがあった。

 ドアは開いた!! 

 私は外に出た。

 私は助かった……。


 火事では七人の宿泊客全員が死んだ。宿泊客で助かったのは私だけだった。結局、あの男は助からなかったのだ。

 当然、私は多くのマスコミからインタビューの申し出をを受けた。ちょっと躊躇したが、それを受けた。

 何台ものカメラとマイクが並び、記者が私を囲んだ、ちょっとした英雄だった。

 私は地元の警察と消防を申し出を受け、近くのホテルに滞在することにした。料金は官費ということだった。助かる申し出だった。でも、服から財布、スマホ。乗ってきた車まで失った。それくらいして貰わないと困るのも事実だった。

 ホテルに泊まって二日の目の朝十時、部屋でテレビを見ているとドアがノックされた。ドアを開けると見知らぬ男が二人立っていた。

「K県L署の佐々木です。こっちは須藤です」 彼等は警察手帳を提示した。「この度は大変でしたね!? 」

“L署、地元の警察署ではない。何だろう? 第一、ここはK県ですらない! ”

 でも、暇だったので二人の警官を部屋の中に入れた。

「一ヶ月程前、L市で強盗殺人事件があったのはご存知ですか? 」 年嵩の佐々木巡査部長が言った。

「そう言えば……」と、私は言った。「それが何か私に関係があるのですか? 」

「それが、実はこの事件には目撃者がいまして……」

「……」 私は沈黙した。

「今回の火事の件でインタビューを受けるあなたを見た目撃者が“殺人犯はあなただ”と言い出しまして……」

「……」 私は沈黙した。

 若い須藤刑事のスマホが鳴った。須藤刑事は席を外し電話に出た。

 彼は戻ってきて嬉しそうに言った。「合致しました」

 佐々木巡査部長がさらに嬉しそうに言った。「実は強盗殺人現場には持ち主不明の指紋も残っていまして、それが、今朝、食事を取られた珈琲カップのあなたの指紋と一致しました。他の県でも数件、同じ様な強盗殺人事件が起こっています。ゆっくり、あなたのお話をお聞きしたい」


 私は、今、五件六人の強盗殺人事件で有罪が確定し、死刑待ちで独房にいる。

 刑務所の迷路のような廊下にも出られない。


ヤフーブログに再投稿予定です。

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