怪談 ー死者の日記ー
死者の日記
ある老人が亡くなりました。ある朝、食卓に降りてこないのを同居しているその息子が不審に思い、部屋に行ってみたら冷たくなっていたのでした。大往生でした。
彼の死とともに、数冊の日記が残されました。そのうちの一冊はまだ数ページしか書き込まれていないものでした。最後の日付は、遺体となって発見される前日でした。
通夜、告別式が済み、初七日が過ぎた頃、息子の子供、つまり老人の孫がハードカバーの一冊の本を読んでいるのに気付きました。ただ、孫はまだ小学生で、そんな本が読めるとも思えません。よく見ると、それは本ではなく日記です。老人の残したあの日記です。一番新しいものでした。葬儀の慌しさ等ですっかり忘れており、どうしたものかと何気なく捲っていると。
新たに書き込みがなされていました。以前に確認した日付の、次の日付から数日分が。その最初の方は何行かに渉って、自分の身に起こった違和感について記述されていました。酷く戸惑っている様子でした。それが進むにつれ、記述が淡白になってゆきます。悪い冗談かとも思ったのですが、筆跡は紛れもない老人のものでした。気味が悪いので、息子は日記を自分の書斎に仕舞いました。
しかし、いつの間にか孫が日記を見ています。どこに隠しても無駄でした。幼稚園児には到底持ち出せない様な所に隠してもです。孫が見ているときには、日記が書き進められていました。日が進むうちに、記述は意味不明なものとなって行き、最後にはもはや日本語、いえ言語とは呼べないものとなっていました。そして四十九日が来、ぱたりと孫が日記を見る事は無くなりました。逆に気になった息子が日記を調べてみると、四十九日の日付で日記は終わっていました。
後に息子はこの頃の事について孫に訊ねてみましたが、何も覚えていなかったそうです。