表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5√  作者:
4/10

噂話は蜜の味[連載・SF]

噂って知る人が増えるほど、大きくなって。そのうち…… とっても美味しいご馳走になるんだよ?





〜〜〜おモグラさん〜〜〜





「おモグラさん?」


「そうそう! ほら、うちの学校の近くの住宅街あるじゃん。 そこに何箇所かマンホールがあるわけ。 それで、そこを三回ノックして当たりなら…… おモグラさんが願いを叶えてくれるらしいよ!」




友人がとても楽しそうに話を続ける。 それを私は、正直あまり興味を持てずに聞いていた。 そもそも……… おモグラさん? モグラなの? だとしたら、なんでモグラが願いを叶えるのさ。 都市伝説とか噂話はいちいち胡散臭くて好きじゃない。


「ごめん、トイレ行ってくるね」


聞いてるのもだんだん疲れたので、私はその場から逃げた。






♦︎♦︎♦︎




「おモグラさん、ねぇ……」

「近藤さん」

「ひぇ! あ…… 小野くん」


ボケーっとしていた私に声をかけてきた。 …… イケメンだなぁ。 小野くんとは今年から同じクラスになった。 私はただ今絶賛片想い中である。 好きになった理由は…… ズバリ顔。


「どうしたの? ぼーっとしてたみたいだけど?」

「……あのね、実は」


私は小野くんと会話がしたいと思って、信じてもいないおモグラさんの話をしてみた。








「願いを叶える、おモグラさん?」

「そう。 ……ま、まぁ私も信じてないんだけどね!」

「……ふふ。 学生って、噂とか都市伝説とか、好きだよね」


そう言って、小野くんは笑った。 ……同い年なのにどこか大人っぽいんだよね。 そこがまた良いんだけど。


「でも……本当に、願いが叶うなら僕も会ってみたいな」

「へぇ〜、小野くんてそういうの信じない人だと思ってた」

「そんなことないよ。 むしろ、好きな方だよ」



いつもクールだから、そういうのには興味を持ってないのかと。 …… 小野くん、何をお願いするのかなぁ………



「近藤さん」

「え、あ、なになに?」

「そのおモグラさんの噂って…… それで全部?」

「う、うん。でも私が聞いた部分だけだから、他にもあるのかもね」

「……へぇ、そうなんだ」



なんだろ? 何か、気になることでもあるのかな? なんだか一瞬…… 小野くんが、とっても楽しそうな顔をした気がした。





♦︎♦︎♦︎






「……で。なんで、来ちゃうかなぁ」


時刻は夜の9時。 私は学校近くの住宅街へと来ていた。 目的は一つ、おモグラさんに会うため。 だってもし会ったら…… 小野くんとまた話せるかもしれないし。


「よーし、頑張るぞ!」


私は気合を入れて、マンホールを探し始めた。








「……うーん、これも違うのかなぁ?」


何箇所かマンホールを見つけ、それを足で三回鳴らしてみたけれど…… 特に何も起こらなかった。 やっぱり噂は噂なのか。 半分諦めながら、再び見つけたマンホールを足でトン、トン、トン、と踏んだ。







……コン。




「………へ?」



気のせい? 今、なんか音がしたような。 私はもう一度足でノックをした。








トン、トン、トン。




……コン、コン。



…やっぱり。 このマンホールの下から、音がした。 もしかして、本当に…… おモグラさん? だったら……



「……っ! わ、私が好きな人と、付き合えるようにして!」


夜だとか、住宅街だとか。 そんなん忘れて、私は大声でそう叫んだ。



コン、コン…… ボコ。



瞬間、マンホールの真ん中当たりが鈍い音と共に盛り上がった。 ……え? おモグラさん、頭ぶつけた? え、てか出て来てくれるの? もしかして、土地神とかいうやつなのかな? え、私もしかして今すごい瞬間を目撃するんじゃ………






コン、コン……… ガシャ。




「………え?」


マンホールの蓋が外れた。 その下の真っ暗な穴から出てきたのは………




ポタ…… ポタ…… ポタ……




大きな花。 大きく花びらを開いて、痛そうな棘がいっぱいついている。 それは私を包み込みーーーー




グシャッ。 ……グチュ、ゴリッ、ゴリッ、グシュ。









【オ イ シ イ】




「なるほど、これがおモグラさんの真実か」



ポタ、ポタ、ポタ。


「なるほど、普段は口を閉じて地下をさまよってるのか。 口を開いたら穴に入れないもんね。 しかし君は…… モグラには見えないねぇ。 口を閉じたらただの黒い物体。 でも……… 」



グアアアアア!!


開いた口は可憐な花のようだ。



「……なんて、言うと思う?」



少年は手に持ったナイフを前に突き付けた。花びらのような口の中心、そこにある一つの目玉に向けて。



「目玉を中心に咲く花なんて、グロテスクだよ。 いいかい、おモグラさん? はた迷惑な話だが、君は人間どもに噂されている。 願いを叶える存在と言った風にね。 だから………」



【オ ワ ラ セ テ ア ゲ ル ヨ?】




少年は目玉に向けてナイフを刺した。



ギュアアエアアイア‼︎‼︎



「ははっ、何語ですか? でも良かった、痛みが分かって。 …君が食べた子はね、一応知り合いなんだ。 美味しかった? …その方が僕も嬉しいんだけどね、だって……」




【イ マ カ ラ キ ミ ヲ タ ベ ル カ ラ サ】






♦︎♦︎♦︎♦︎






「ごちそうさま。 …近藤さん、かわいそうに」


手を合わせ、その場を離れた。



「……ぶふ。 ふ、ふはっ。 あはは!」



か、可哀想とか。 何、心にもないこと言ってるんだろ、僕は。 彼女を餌にしたのに、可哀想なんてさ。 おめでたい頭してたから、可哀想とは思うけど。


「まぁおかげで、おモグラさんの噂を美味しく食べれたよ」




君たち人間が、噂を信じる限り。それは現実となる。 今回は近藤さんが疑いを捨てて本気で信じてくれたから、おモグラさんはあそこまで気色悪い化け物となり。 一層、僕を満たす美味な食事になれた。 そこだけは、感謝するよ。





「あ、おモグラさんの話。 しっかり変えとかないとな。 美味しかったけど、もう食べる気は無いし」


少年は携帯電話を取り出し、あるサイトにアクセスした。









[都市伝説、噂話の館]




噂の1.おモグラさん



○○県○○市○○○高校近くの住宅街にて。 マンホールを見つけたら注意すべし。 三回叩き、ノックがかえってくると…… おモグラさんの願いを叶えなければならない。




「……こんなもんかな? いやぁ、それにしても…… ほんと、人間って噂が好きだよなぁ」




そう言いながら、少年は口についていた血をペロリと舐めた。








噂の1.おモグラさん 完食






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ