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6月■日 9

 瑞希と蓮、裕太、慧子の四人は、薄暗くなった廊下を並んで歩いていた。玲も身体の痛みが引いたら一緒に寮へ帰る予定でいたのだが、なかなか痛みが引かず、今も保健室で寝ている。市田が後ほど寮に送る事で話がまとまり、四人は一足先に寮へ帰る事となった。


「体中が痛いって、やっぱり私の霊力が原因なんでしょうか……?」


「まあ、血縁関係があれば霊力の性質が似るらしいし。瑞希ちゃんと市田さんの相性が悪いんだから、市田さんと血縁関係がある玲ちゃんとも相性悪くても、不思議じゃない、か……な……?」


「どうしたんですか?」


 最後が尻すぼみになり、難しそうな表情をしている蓮を、瑞希は怪訝そうに見上げた。


「あ、うん。その、えっと……。もしかして、僕とも相性悪いのかな~って。あははは……」


「ありえますね。霊力の性質が似るって話が真実ならですけど。市田さんの甥で、玲先輩の従弟の蓮先輩が相性悪くても誰も驚かないと思いますよ」


 蓮の言葉を慧子が冷静に肯定する。それを聞き、蓮はショックを受けたように顔を歪ませた。


 市田と蓮、玲が親戚関係という事を慧子は知っていたようだ。その隣で裕太が驚いた様子もなく頷いているところを見ると、裕太も市田と蓮、玲の関係は知っていたようだ。


 蓮としては慧子と裕太に否定か慰めてもらいたかったのだろう。しかし、冷たい二人の言動に蓮は泣きそうな顔になっていた。


「やだやだ! そんなのやだ! い~や~だ~!」


「んなもん、試してみれば良いじゃないっすか……」


 駄々をこね始めた蓮を見て、裕太は心底面倒臭そうに溜め息を吐いた。裕太の発言に蓮の表情がパッと明るくなる。


「そっか! 裕ちゃん、あったまいい~! 瑞希ちゃん、手。手、出してよ。ね?」


 蓮は目を輝かせ、瑞希に笑みを向けた。瑞希は必要以上に接近する蓮と距離を取り、心底嫌そうに顔を歪ませた。


「え? 嫌です! もし本当に相性が悪かったらどうするんですか。 あれ、私だって多少は痛いんですよ!」


「そんな……」


 瑞希の表情を見た蓮は、再び泣きそうな顔になってしゃがみ込んだ。


「おら。つべこべ言わず手、出してやれ」


「そうよ。蓮先輩、泣きそうになってるわよ?」


 裕太と慧子に言われ、蓮を見た瑞希は凍りついた。廊下の隅にしゃがみ込んだ蓮は、口を尖らせ、床に「の」の字を書きながら拗ねていた。蓮の目元に光るものが溜まっているのは瑞希の気のせいではないだろう。


 瑞希が困惑しながら裕太と慧子を見ると、二人は無言で瑞希を見つめていた。二人の目が「面倒臭いから付き合ってやれ」と雄弁に語っている。


「う~……。分かりました。少しだけ、なら……」


「ホント?」


 瑞希の言葉に蓮が顔を上げ、上目遣いに瑞希を見る。その目は好奇心でキラキラと輝いていた。


「少しだけですよ? 指先だけですよ? 一瞬ですからね?」


「わくわく!」


 瑞希が左手の人差し指に霊力を込めると、蓮もそれに倣って指先に霊力を込めた。そして、ゆっくりとお互いの指を近づける。


――昔、こんな映画があったような気が……。


 瑞希がどうでも良い事を思い付いた瞬間、近づいた二人の人差し指の間で小さな火花が散った。お互いの霊力がはじけ飛ぶ。


「んあぁ~! 指がぁぁ! 指がぁぁぁぁ!」


「あれ? 痛くない……?」


 指を押さえて叫んだ蓮とは対照的に、瑞希は不思議そうな顔で自身の人差し指を見つめた。市田との霊力の接触も玲へ霊力を送った時も、強弱はあったにしろ、瑞希自身にも痛みはあった。だから、蓮との霊力の接触でも当然痛みがあるだろうと身構えていたのだが、それは無駄になったらしい。


「考え方によってだけどさ、あいつと一番相性悪いのって……」


「蓮先輩ね。可哀想に……」


 裕太と慧子は顔を見合わせて苦笑した。痛みにもがき苦しんでいる蓮と、不思議そうに自身の人差し指とそんな蓮を見比べている瑞希を眺めながら。

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