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4月〇日 2

「私が君の家を訪ねた日、駅で我が校の生徒に会わなかったかい?」


 市田に問われ、瑞希は無言で頷いた。


「あの二人組はね、我が校の特待生だ」


「え? でも、ここから学校に通うのに、うちの駅を使う事って無いですよね?」


 瑞希が言う通り、寮から青嵐学園は、瑞希が使っていた駅とは反対方向にあった。


「そうだね。あの二人にはちょっとした能力があるんだけど――」


「能力、ですか?」


「ああ。その能力が無いと我が校の特待生にはなれない。あの日、自分達と同じ能力を持つ者を駅で見つけたと報告を受けた」


「能力ってどんな? 私にあるってことですか?」


 瑞希は市田の発言に訝しげな表情をした。


「この世には大昔から【影】というものがいてね。そうだな……。分かりやすく言うと幽霊とか魑魅魍魎とか妖怪とか、そんなものだね」


「【影】……」


「そう。【影】は人の心――妬みや嫉み、悲しみ等の負の感情から生まれる。私はそれを狩る能力のある者を集めているんだ。我が校の特待生制度もその為にある。あの日、君が会った二人の内一人が、狩る能力の他に予知というか、まあ、そんな能力があってね。不思議な予感があってあの駅に行ってみたらしい。そうしたら君と出会った。連絡を受けてすぐに私の手伝いをしてくれている元特待生に探してもらい、君を見つけた。まあ、場所が場所だけに師範の親族と予想はしていたけどね。俄には信じられないかい?」


「はい」


 予想外の話に呆けていた瑞希は、市田の問いに思わず素直に変事をしてしまい、しまったと下を向いた。


「ははは。君は本当に素直な子だ」


 気を悪くしてもおかしくない場面だが、市田は満足そうに笑っている。


「でも、私、幽霊とか見たこと無いですし……」


「見る能力の強さと狩る能力の強さはイコールではない。能力者の中には体質的に訓練無しで見える者もいるが、訓練をすれば君にも見えるようになる」


 下を向いたままの瑞希に、市田は自信満々に言い切った。


「まあ、初めのうちは信用出来ないだろう。それも仕方無い。【影】が見えない者は皆そうだ」


「あ、えっと、市田さんを信用してない訳では無いんですよ? ただ、自分にそんな能力があるのが信じられないというか……」


「まあ、それも仕方無いだろう」


 市田は瑞希の言葉に大きく頷いた。


「で、私が何故、能力者を集めているかだが――。【影】に憑かれた者は多くの場合、正常な判断が出来なくなる。衝動的に事件を起こしてしまったり、自ら命を絶ってしまったり……。あの日、君もホームの淵に無意識に移動していたのだろう?」


 市田に問われ、瑞希は小さく頷いた。


「君にも【影】が憑いていたそうだ。あの二人が引くくらい。些細な事でも落ち込む事が多かったんじゃないかい?」


 ハッとして瑞希が顔を上げると、優しく微笑む市田と目が合った。


「その顔は思い当たる節があるんだね。あの二人には大分影響されていると聞いていたが、師範には大丈夫、問題無いと突っぱねられてね。心配していたんだが……」


 市田はそう言い、少し考え込むような素振りを見せた。


「君は体質的に【影】に好かれるんだろうな。そして、身を守る為に【影】を浄化する能力がある」


「浄化……?」


「そうだ。なかなか珍しい能力だ」


 市田は苦笑していた。


「で、話を元に戻そう。能力者は先程も言った通り【影】を狩る能力がある。ただ、能力者以外の人はそういった能力を持っている訳では無い。多くの人は身を守る術を持たないんだ。だから、大昔――それこそ日本が西洋化する以前より、能力者達は【影】絡みの事件を解決するために組織を作っていた。そして、四十年程前に、国は特定現象調査室というものをつくった」


「特定現象調査室、ですか……?」


 聞き慣れない単語に、瑞希は僅かに眉をひそめた。


「ああ。国――警察庁に属する極秘機関で、主に【影】の調査と駆除を行っている。自殺とか事件とかを少しでも減らせればという苦肉の策だった。設立には私の一族も手を貸したんだが、如何せん職員が足りなくてね。現在も特待生にはここの手伝いをしてもらうという形で協力している。少し特殊なアルバイトと考えて良い。ここだけの話、君のご両親も元特待生で特定現象調査室の職員だった」


「父と母も……?」


「そうだ。因みに、師範も能力者だ。能力には遺伝的要素もあってね、優秀な能力者を輩出する家系は神職、武道家の家系と相場が決まっている。勿論、例外もあるがね」


「でも、私には何も……」


「師範はね、君は普通の子として育てると決めていたのだそうだ。しかし、あの日、私が来てしまった」


「それで祖父は、市田さんの事を一番会いたくない人って……?」


「そういうことだ」


 市田は苦笑を浮かべると、大きく頷いた。

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