6月×日 日記
瑞希日記
6月×日
お父さん、お母さん。今日、廃ビルへ【影】の駆除に行っていた真田君が大けがをして入院してしまいました。意識が無いそうです。もしこのままと考えてしまうと、怖くて眠れません。私はこれ以上、悲しい思いはしたくありません。
お父さんとお母さんが亡くなった時、私は小さかったので死という概念が分かっていなかったかもしれません。でもね、だんだん大きくなるにつれて、何で私にお父さんとお母さんがいないんだろうって、すごく悲しくなった覚えはあります。世の中には私よりもっと不幸な人がいるとも分かっていますが、それでも悲しいものは悲しかった。今日も、もしお父さんとお母さんが生きていてくれたら、電話して、お話して、弱音を吐いて……。そんな事が出来たのにって思います。三井先輩の事も相談出来たのにって……。
今日、三井先輩は真田君と一緒に廃ビルへ行っていました。真田君の事、とても責任を感じているようで、さっき会った時には普段の三井先輩とは明らかに違っていました。落ち込んでいる三井先輩を元気づけてあげたいのに、私はどう接したら良いか分かりません。
ねえ、お父さん、お母さん。何故お二人は私を残していってしまったのですか? 悲しくて、寂しくて仕方ありません。一目だけでもいい。一言だけでもいい。会って話がしたいです。
玲日記
6月×日(木) 雨
今日、真一さんが【影】の駆除中に怪我をして入院しました。【影】の駆除中は二人で行動するのが原則ですが、蓮さんと真一さんは廃ビルの中で別行動を取り、その最中に真一さんが階段から転落したとの事です。蓮さんは責任を感じているようで、食事も取らずに寝てしまいました。
真一さんの転落事故に関して、市田さんから、第三者介入の示唆もありました。もしかしたら、件の廃ビルでの駆除作業から手を引く事になるかもしれません。正直、核の見つからない現場を、何故、特待生に任せきりにしていたのか、以前より疑問に思っていました。特定現象調査室の職員不足は知っていますが、少々お粗末に感じます。今回の件に関して責任があるとしたら、特待生に任せきりにしていた調査室でしょう。我々特待生は、単純な駆除作業限定で手伝いを行っているはずですから。蓮さんの代わりに、市田さんと調査室室長の伊勢さんに苦言を呈しても問題はありませんよね。
蓮日記
6月×日(木)
今日、真ちゃんが階段から転落して大怪我をした。僕の判断ミスが招いた事だ。今日も核が出ないだろうと高を括っていたし、駆除作業を早く終わらせたかったんだ。
調査室室長の伊勢さんが、状況説明を求めに病院へ来た。別行動を取っていた事、僕は二階下にいた事、非常階段から逃げるような足音を聞いた事、全部話した。伊勢さんは僕を責めなかった。ただ静かに聞いていた。本来だったら、別行動なんて認められないのに、別行動をとった理由も聞かれなかった。責められない事が逆に辛い。玲ちゃんなら僕を責めてくれると思っていたけど、玲ちゃんですら僕を責めなかった。逆に温かい言葉を掛けられて、泣きそうになった。昔と立場が逆転した。
真ちゃんにもしもの事があったらと思うと、怖くて眠れない。今、この瞬間ですら、上月先生から電話が入るんじゃないかとビクビクしている。こんなに不安になった事は、今までに一度も無かった。怖いよ。




