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プロローグ2

 映画の帰り道、瑞希は公園のベンチに座り、幼い子ども達が楽しそうに遊んでいる姿をボーっとしながら眺めていた。瑞希の長い黒髪が偶に吹き抜ける風になびいているが、特に気に留める様子は無い。


 瑞希の両親は、瑞希が小さい頃に事故で亡くなっており、瑞希は母方の祖父で、剣道場を営む橘源三の家に居候している。そこには母の妹の橘早苗と婿養子の橘啓次、従弟の橘誠も同居している。源三は瑞希を時に厳しく、時に優しく育ててくれ、早苗と啓次は実の息子の誠と変わりなく瑞希に接してくれている。誠とは源三の道場の兄弟弟子でライバルではあるものの、仲は悪くない。昔は門弟が多かった源三が営む剣道場は、少子化の影響で弟子が瑞希と誠だけという開店休業状態だが、サラリーマンの啓次の給料と源三の僅かな資産で、裕福ではないものの何とか人並みの生活は維持出来ていた。


 瑞希はふと、今朝会った二人組を思い出した。憧れの高校に通い、憧れの制服を着ていたあの二人。名門高校で、両親の出身校。両親が出会うきっかけになった高校に興味が無い筈が無い。


「青嵐学園に通いたいって言ったら、おじいちゃんどんな顔するのかな」


 瑞希はポツリと呟くと苦笑いをした。瑞希が青嵐学園に通いたいとは思っていても、青嵐学園は私立の高校だ。しかも、学費が高くて有名ときている。道場が弟子達で溢れ返っていた時代ならいざ知らず、今の道場の状態を見て青嵐学園に通いたいと言い出せる筈が無かった。


 どんなに望んでも、世の中には手に入らないものがあることは、瑞希には十分過ぎる程分かっていた。両親が亡くなってからは源三の家に居候させてもらっている身だ。高校に行かせてもらえる事が、どんなに有難い事かも理解していた。公立高校がいくら無償化になっても、制服、学用品、その他諸々、お金がかかる。そんな中で瑞希が出来る恩返しはというと、公立高校の中でも学力レベルが高い高校に入学し、源三を喜ばせる事以外、思い付かなかった。


 瑞希が俯くと、不意に風が吹き、瑞希の長い黒髪が肩口から落ちた。しかし、瑞希はそれを気にかける素振りも見せず、暫く身動き一つせずにいた。

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