Do clones dream of real humans?
SFファンの現実の捉え方は、他の人とは少し異なっているのかもしれない。
たとえば、昨年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故の際に流れた“放射線量予測”を見て、
「P.K.ディックの『アンドロイド』らしい世界になってしまったなぁ」
なんて複雑な気分で思うわけだ。
SFの世界が“fiction”でなくなりつつある今は、SFファンにとっては色々と考えさせられる時代でもある。
遠い未来のことが、いつの間にか手の届くところまで来ているような状況なのだから。
という前置きは、久々に本文とリンクする。
さて、今回はひとまず、ノーベル賞を受賞された山中教授におめでとうの一言を。
今年は日本人がイグ・ノーベル賞も本家ノーベル賞も受賞した年なのだから、これは喜んで然るべきだろう。
今年山中教授が受賞されたのは、皆さんご存知のiPS細胞の研究によってだ。
本来ノーベル賞が“人類社会の発展に貢献した偉大な発見や業績”に贈られるものであることを考えると、この研究がいかに重要なものか分かろうというものだ。
ひょっとすると、医学界に革命をもたらす可能性すら秘めた技術だ。これは、異例の受賞を為し遂げたのも頷けよう。
さて、このiPS細胞を活かした“再生治療”というのが現在注目を浴びているわけだが、これはまさにSFの世界である。
冒頭の文章がここで意味を持ってくるというわけだ。
山中教授はiPS細胞の活用に関する倫理的問題について考える必要性もご指摘なさっているが、これはSFの世界ではかなり昔から考えられてきたものでもある。
たとえば、iPS細胞を用いて精子と卵子を作れば、至極簡単に自分のクローンが作れるかもしれない。
失った脳細胞を復元できるかもしれない。
こういった状況ではどこまでが“倫理的にOK”なのかが曖昧になってくる。
“どこまでが人間として認められて、どこからは人間ではないのか?”
“人間をどこまで再生していいのか?”
と聞かれて、一つの答えを出すのは相当難しい。
だからこそ、こういう時代だからこそ、作者はSFを読むことをおすすめする。
これから人類が直面していくであろう様々な問題が提起されており、またその問題の一種の“解決案”が提示されているからだ。
こういった技術が絡んだ倫理的問題についてSFファンが色々と口うるさいのも、“解決案”のようなものを多く知っているからだ。
一度じっくりとSFを読んでみて、これから世の中がどうなるかについて考えてみてはいかがだろうか。