第2話 主婦、交える。
愛情、略奪、誇示。
人は生きながらにして、慈しみ、奪い、そしてマウントをとりたがる。
美貌を守るため、彼女は毎週末、自治会の地域緑化活動に参加している。
像の足ほどもある杉の木を、あちらの山からこちらの山へ。
もっぱら、彼女の夢は居るだけで筋肉が付く庭園であり新天地「肉之園」の開闢であった。
腹六 割枝は商店街の薬屋と手を組んでいる。それもすべては「肉之園」のため。自治会内に杉を大量に移植することによって、地域内の花粉飛散量は増量。それにより、薬屋自作の怪しげな「花粉症対策薬」が売れ、マージンは割枝の懐、ひいては園のための資金に充てられるのだ。
彼女は70から先の年齢は数えていない。一昨年に商店街会長の奥様に
「割枝さんってこの間、喜寿を迎えられましたよね?」
と聞かれてから、怒りのあまり数えることをやめてしまったのだ。
彼女にあるのは夢と業腹な仕打ちに対する怒りだけだ。
そして同時にこうも考えた。
業腹。そう、これは「腹」である、と。
割枝にはまだ割れていない腹がある。
この「業腹」を割るために【商店街主催筋肉大会】へ参加する。
最大99%オフ割引券を手にする権利を獲得し、奇才の自宅を灰燼に帰し、そして夢の土地へと変えるため。
割枝には、これといって欲しいものがあるわけでは無かった。夢は夢のままに、と。
しかし、天の巡り合わせはなんとも数奇な運命を紡ぐ。
彼女の屈辱を晴らすため、そして業腹を割るため、彼女は大会へ参加する。
顔に泥を塗られたままで肉を骨に帰すことはできない。
彼女の一世一代にして最後のチャンスが降り注ぐ。
「奥様、是非とも優勝のあかつきには腹を割っておしゃべりしましょう。」
彼女は今日も植樹をする。
日がな一日、夢のために。
そしてプライドのために。




