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ゼロバッジの少女

世界には、人々の希望を守る戦士がいる。


その名は――リミィジュ。


選ばれた少年少女だけがその力を扱うことができ、

闇から生まれる怪物と戦い、人々を守る存在。


そして、その戦士を育てる学園がある。


世界の中心に建つ、白い塔のような校舎。


グランドフォール学園。


今日もまた、未来のリミィジュを目指す生徒たちが集まっていた。


教室の窓から差し込む光が、静かに床を照らしている。


「――リミィジュの頂点と呼ばれる存在は、何という名前でしたか?」


前に立つ教師が、教室全体を見渡しながら問いかけた。


「……はい、エイミーさん」


「グランドリミィジュです」


すぐに答えたのは、最前列に座る金髪の少女だった。


落ち着いた声。

迷いのない答え。


教師は満足そうにうなずいた。


「その通り。では、なぜ現在グランドリミィジュが誕生していないのか――」


そこで教師はふと、教室の後ろへ目を向けた。


「……25番。ノエリアさん」


「は、はい!」


突然名前を呼ばれて、後ろの席の少女が慌てて立ち上がった。


淡いピンクの髪が、ふわりと揺れる。


ノエリア。


この学園の新入生の一人だ。


しかし――


彼女には、他の生徒とは決定的に違う点があった。


胸元につけられたバッジ。


そこには、本来なら輝くはずのダイヤが――


一つもなかった。


適正値。


ゼロ。


学園の歴史の中でも、前例のない数値だった。


教室のあちこちから、小さなざわめきが起きる。


「……あの子だよね」


「ゼロバッジの」


「なんで入学できたんだろう」


小さな声が、ノエリアの耳に届く。


(やっぱり……)


胸の奥が、少しだけ痛んだ。


(私なんかが、ここにいていいのかな……)


教師が静かに言う。


「答えられますか?」


ノエリアはぎゅっと拳を握った。


みんなの視線が集まっているのを感じる。


恥ずかしい。

逃げ出したい。


それでも――


「……たぶん」


ノエリアはゆっくり口を開いた。


「みんな、強くなろうとしてるけど……」


言葉を探しながら続ける。


「自信をなくしてる人が多いから……だと思います」


教室が静まり返った。


教師は少し驚いたような顔をしたあと、穏やかに笑った。


「……なるほど。興味深い意見ですね」


そのときだった。


突然、校内に警報が鳴り響いた。


赤い光が天井に回り始める。


「闇反応を確認! C地区!」


放送が響く。


生徒たちがざわめいた。


「怪物?」


「こんな昼間に?」


教師がすぐに指示を出す。


「Cクラス以上は出動準備! Dクラスは教室で待機!」


椅子が引かれる音。


廊下を走る足音。


次々と生徒が動き始める。


ノエリアはその様子を見ながら、胸の奥がざわつくのを感じていた。


(まただ……)


なぜか分からない。


けれど――


遠くで、何かが呼んでいる気がする。


ノエリアはそっと胸元に触れた。


制服の下。


そこにあるのは――


一本の剣。


まだ誰にも見せていない、自分の武器。


その柄が、微かに震えた。


(……え?)


小さな光が、手のひらの奥で揺れる。


まるで、誰かがそこにいるみたいに。


その瞬間。


ノエリアの耳元で、かすかな声がした気がした。


『……ノエリア』


とても小さくて、

懐かしい声だった。


ノエリアは思わず振り向く。


「……今、誰か……」


けれど、そこには誰もいない。


ただ窓の外に、青い空が広がっているだけだった。


そして遠くで、黒い煙が立ち上っていた。


闇の怪物が現れた証。


ノエリアは無意識に剣を握る。


胸の奥で、何かが静かに目を覚まそうとしていた。


まだ、彼女自身も知らない――


本当の光が。

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