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適正値ゼロのリミィジュ  作者: 柑橘みかん


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もう一つの学園

森の奥。


崩れた石の校舎。


そこにも「学園生活」はあった。


ただし――

グランドフォール学園とは、まるで違う形で。


廊下には静かな足音だけが響く。


教室の机は古く、窓は割れている。


それでも、そこに集まる者たちはかつて同じだった。


リミィジュ候補生。


希望の戦士。


守る側の人間。


今はもう違う。


教室の奥。


キースが机に座っていた。


腕を組み、窓の外を見ている。


外は霧の森。


静かな景色だった。


カリンが机の上に座る。


足をぶらぶらさせながら、キースを見る。


カリン

「機嫌悪いね」


キース

「別に」


カリン

「嘘」


笑う。


「また思い出してるでしょ」


キースは答えない。


少し沈黙が流れる。


やがてキースが言った。


キース

「……昔のことだ」


カリン

「リミィジュ試験?」


キースの目が少し揺れる。


あの日。


学園の試験場。


ジェイドがいた。


ダニーがいた。


みんな強かった。


でも――


キースは選ばれなかった。


教師の言葉。


「適性が足りない」


その言葉だけだった。


キース

「くだらねえ」


小さく吐き捨てる。


「守るだの、光だの」


拳を握る。


「結局、才能だ」


カリンはしばらく黙っていた。


それから小さく言う。


カリン

「でも」


「頑張ったでしょ?」


キース

「……」


カリン

「私も」


小さく笑う。


「頑張った」


視線を天井に向ける。


「でもね」


「意味なかった」


教室は静かだった。


外の風の音だけが聞こえる。


そのとき。


扉が開く。


エスターが入ってきた。


部屋の空気が一瞬で変わる。


カリンが手を振る。


カリン

「おかえり」


エスターは何も言わず、窓の前に立つ。


遠くの森を見る。


エスター

「準備は?」


キースが立ち上がる。


キース

「いつでも」


カリン

「遊びに行く?」


エスター

「違う」


静かな声。


「今回は」


少し間を置く。


「戦争よ」


部屋の空気が凍る。


キースの目が光る。


カリンは楽しそうに笑った。


カリン

「やっとだ」


エスターはゆっくり言う。


エスター

「グランドフォール学園」


「リミィジュの本拠地」


「光の象徴」


窓の外の闇を見つめる。


エスター

「それを」


「壊す」


キース

「全部か?」


エスター

「いいえ」


首を少し振る。


「光だけ」


カリンが首を傾げる。


カリン

「どういう意味?」


エスター

「希望を壊す」


静かな声。


「そうすれば」


「誰も絶望しない」


その言葉には、奇妙な優しさがあった。


カリンは少しだけ黙る。


それから言う。


カリン

「じゃあ」


笑う。


「ゼロの子も?」


エスターは少しだけ目を閉じた。


ノエリア。


あの少女の姿が一瞬浮かぶ。


倒れても立った。


何度も。


エスター

「……まだ」


カリン

「ふーん」


くすっと笑う。


「気になるんだ」


エスターは答えない。


ただ静かに言う。


エスター

「出発は三日後」


「準備して」


キースが頷く。


カリンが椅子から降りる。


そして小さく呟く。


カリン

「楽しみ」


同じ頃。


グランドフォール学園。


夜の会議室。


生徒会が集まっていた。


エイミーが地図を見ている。


その表情は真剣だった。


アンナが腕を組む。


アンナ

「闇の動き増えてるなぁ」


ウィリアム

「はい」


「怪物の発生が三倍です」


エイミーが静かに言う。


エイミー

「来るわね」


アンナ

「エスター?」


エイミー

「ええ」


そのとき。


扉が開いた。


学園長ゴードンだった。


ゴードン

「どうやら」


ゆっくり言う。


「嵐が来るようだ」


窓の外。


遠くの森。


その闇の奥で――


大きな戦いが、静かに動き始めていた。

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