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適正値ゼロのリミィジュ  作者: 藤苺めぇ


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届かない光

黒い霧が広場に広がっていた。


さっきまで明るかった空が、少しだけ暗く感じる。


中央広場の真ん中。


エスターが静かに立っている。


その前には、生徒会の三人。


エイミー、アンナ、ウィリアム。


三人ともまだ戦闘態勢だ。


しかし――


さっきの一撃で、空気が変わっていた。


エスターはほとんど動いていない。


それなのに。


圧倒的だった。


ダニーが小さく呟く。


「……強すぎない?」


ハイジが腕を組む。


「Aクラスでも止められてない」


ジェイドは静かにエスターを見ていた。


その視線は冷静だが、警戒が強い。


「別格だ」


広場の空気が張り詰める。


そのとき。


エスターの視線が動いた。


ゆっくり。


そして――


ノエリアで止まる。


ノエリアの心臓が大きく鳴った。


ドクン。


エスターが静かに言う。


「あなた」


広場に風が吹く。


「ゼロの子ね」


ノエリアは剣を握った。


その手が少し震える。


エイミーがすぐ前に出る。


「やめて」


鋭い声。


「この子は関係ない」


エスターは少しだけ目を細めた。


「本当に?」


エイミーの表情が揺れる。


エスターは続ける。


「この子」


ノエリアを見る。


「光を持っている」


ノエリアの胸がドクンと鳴る。


(光……?)


そのとき。


胸の奥で、小さな声が響いた。


『ノエリア』


ベル。


ノエリアの呼吸が少し変わる。


エスターはゆっくり言った。


「確かめさせて」


次の瞬間。


エスターが動いた。


消えたように見えた。


ドン!!


衝撃音。


気づいたときには――


エスターはノエリアの目の前にいた。


「……!」


ノエリアの目が大きくなる。


エスターの剣が振り下ろされる。


ノエリアは反射で剣を構えた。


ガン!!


衝撃。


腕がしびれる。


ノエリアの体が後ろへ弾かれた。


石畳を滑る。


「ノエリア!」


フィアの叫び。


ノエリアは立ち上がる。


でも足が震える。


(速い……)


さっきのエイミーよりも。


重い。


怖い。


エスターは静かに言う。


「逃げないのね」


ノエリアは剣を握る。


震える手。


でも――


下がらない。


ハイジが叫ぶ。


「無理すんな!」


ダニーも叫ぶ。


「ノエリア!」


でもノエリアは前を見る。


エスターを。


「……逃げない」


小さな声。


でもはっきりしていた。


エスターが少しだけ驚いた顔をする。


「どうして?」


ノエリアは言う。


「守りたい」


広場の空気が静まる。


ノエリアの胸の奥で、光が揺れる。


「ここ」


剣を握る。


「私の学園だから」


エスターは少し黙った。


その瞳に、ほんの一瞬だけ感情が浮かぶ。


そして。


剣を構える。


「なら」


静かな声。


「試してあげる」


エスターが動く。


黒い光。


ノエリアも前へ出る。


ピンクの光が剣に集まる。


二つの光がぶつかる。


ドォン!!


衝撃。


しかし。


次の瞬間。


ノエリアの剣が弾かれた。


「っ……!」


エスターの剣がノエリアの肩に触れる。


ノエリアの体が後ろへ倒れる。


石畳に膝をついた。


呼吸が乱れる。


(強い……)


エスターは剣を下ろした。


「まだ」


静かな声。


「遠い」


そのとき。


エイミーが前へ出た。


「もういい」


エスターを見る。


「これ以上は許さない」


二人の視線がぶつかる。


エスターは少しだけ笑った。


「安心して」


黒い霧が広がる。


「今日はここまで」


その体が霧に溶けていく。


最後に。


ノエリアを見る。


「でも」


小さく言う。


「あなたは」


霧が消える直前。


「きっと、来る」


そして――


消えた。


広場に静寂が戻る。


ノエリアはまだ膝をついていた。


呼吸を整える。


ハイジが駆け寄る。


「大丈夫か!」


フィアも来る。


「ノエリアちゃん!」


ダニーが心配そうに言う。


「やばかったぞ今」


ノエリアは少し笑った。


「うん」


胸を押さえる。


そこに、温かい光がある。


(ベル……)


ノエリアは空を見上げた。


(次は)


小さく呟く。


「負けない」

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