小さな光
夜のグランドフォール学園。
昼間の賑やかさが嘘みたいに静かだった。
校舎の窓から、ぽつぽつと灯りが見える。
遠くで風が木を揺らす音だけが聞こえていた。
屋上。
ノエリアは柵にもたれて、夜空を見上げていた。
今日は一日、いろんなことが起きた。
模擬大会。
カリン。
怪物との戦闘。
そして――
みんなの声。
「お前の剣だろ!」
「めっちゃカッコいいぞ!」
「私は好き」
ノエリアは胸のバッジに触れた。
小さなダイヤが夜の光を反射する。
(私……)
少し笑う。
「ちゃんと戦えたんだ」
風が吹いた。
髪がふわっと揺れる。
そのときだった。
ふわり。
目の前に、小さな光が浮かんだ。
ノエリアの目が大きくなる。
「……え?」
光は、蛍みたいに揺れている。
金色の小さな光。
それがゆっくり空中で形を作った。
小さな羽。
丸い体。
星みたいな尾。
ノエリアの息が止まる。
「……ベル?」
光は少しだけ揺れた。
そして――
小さな声が聞こえた。
『……ノエリア』
懐かしい声だった。
ノエリアの目に涙が浮かぶ。
「ベル……」
ベルは少しだけ近づく。
でも、まだ距離があった。
『……大きくなったね』
優しい声。
でも、少しだけ寂しそうだった。
ノエリアは慌てて言う。
「待って」
手を伸ばす。
「ベルだよね?」
ベルは少し沈黙した。
小さな羽が揺れる。
『……うん』
ノエリアの胸がぎゅっとなる。
「ずっと……」
声が震える。
「ずっと探してた」
ベルの光が少しだけ揺れる。
『……ほんと?』
子供みたいな声だった。
ノエリアは何度も頷く。
「うん」
涙がこぼれそうになる。
「ごめん」
ベルがびくっとした。
『……なんで?』
ノエリアは胸を押さえる。
「私」
少しだけ目を伏せる。
「弱くなっちゃって」
「自信なくして」
空を見る。
「ベルいなくなった」
静かな夜。
ベルはしばらく何も言わなかった。
そして、小さく言った。
『……違うよ』
ノエリアが顔を上げる。
ベルは少しだけ近づいた。
『ぼく』
声が少し震える。
『ずっといた』
ノエリアの目が大きくなる。
ベルは続けた。
『ノエリアが』
少しだけ笑う。
『また前を向くの、待ってた』
ノエリアの胸がいっぱいになる。
そのとき。
ベルの体が少し揺れた。
光が弱くなる。
ノエリアが慌てる。
「ベル?」
ベルは少し困ったように笑う。
『まだ』
光がふわっと揺れる。
『うまく出てこれない』
ノエリアの胸が締め付けられる。
「どうしたら……」
ベルは小さく言う。
『大丈夫』
優しい声。
『ノエリアが』
少し笑う。
『自分を信じたら』
光が少し強くなる。
『ぼく、ちゃんと戻れる』
そのとき。
校舎のドアが開く音がした。
「ノエリア?」
フィアの声。
ノエリアが振り向く。
その瞬間。
ベルの光がふわっと消えた。
「ベル!」
ノエリアが振り向く。
でも、もうそこには何もなかった。
夜空だけが広がっている。
フィアが屋上に出てくる。
「こんなとこいたんだ」
ノエリアはまだ空を見ていた。
「……うん」
フィアが隣に立つ。
夜風が吹く。
フィアが聞く。
「誰かいた?」
ノエリアは少し考えてから笑った。
「ううん」
でも胸の奥が温かい。
ノエリアは小さく呟く。
「でも」
夜空を見る。
「大丈夫」
フィアが首をかしげる。
「何が?」
ノエリアは笑った。
「まだ秘密」
遠くの星が、きらっと光った。




