模擬大会
グランドフォール学園、訓練フィールド。
巨大な円形の戦闘場は、今日はいつも以上に賑やかだった。
石造りの観覧席には、生徒たちがずらりと座っている。
他のクラスの生徒まで見に来ていて、ざわめきが広がっていた。
空は晴れ。
風が少しだけ吹いている。
フィールドの中央に、グレタ先生が立っていた。
「静かにしてください」
その声で観覧席が少し落ち着く。
グレタ先生は説明を始めた。
「今日はCクラスの模擬大会を行います」
生徒たちがざわめく。
「ペア戦です」
フィールドの横で、ノエリアがフィアと並んで立っていた。
ノエリアは少し緊張している。
「模擬大会って……こんなに人来るんだ」
フィアが観覧席を見上げる。
「人気なんだって」
観客席ではダニーが手を振っていた。
「がんばれー!」
ノエリアが思わず笑う。
ハイジは少し離れた場所で腕を組んでいた。
「今日は本気で行くからな」
フィアが笑う。
「手加減してよ」
ハイジはにやっと笑った。
「無理」
そのとき、ジェイドがフィールド中央へ歩いていく。
今日は審判役だ。
ジェイドは落ち着いた声で言う。
「最初の試合」
紙を見る。
「ハイジ、ダニー」
ダニーが拳を上げる。
「よっしゃ!」
ジェイドが続ける。
「ノエリア、フィア」
観覧席がざわめいた。
「いきなり?」
「ゼロの子いるぞ」
ノエリアの心臓が少し速くなる。
フィアが小さく言う。
「大丈夫」
ノエリアは深呼吸した。
「うん」
四人がフィールド中央へ歩く。
広い石のリング。
白い線が境界を作っている。
ジェイドが手を上げる。
「ルールは単純」
静かな声。
「リング外、または戦闘不能で敗北」
風が吹く。
「――開始」
その瞬間。
ハイジが地面を蹴った。
ドン!!
炎が弾ける。
一瞬で距離を詰めてくる。
「速い!」
ノエリアが驚く。
ハイジの蹴りが飛ぶ。
炎のヒールキック。
ガン!!
ノエリアは剣で受ける。
腕がしびれる。
「くっ……!」
ハイジが笑う。
「まだまだだな!」
その横からダニーが突っ込む。
「行くぞ!」
拳が飛んでくる。
その瞬間。
フィアが手を上げる。
「ノエリアちゃん!」
水色の光が広がる。
地面に光のリング。
ノエリアの体が軽くなる。
ノエリアはその勢いで跳んだ。
空中へ。
観覧席から声が上がる。
「うわっ」
ノエリアは空中で剣を振る。
ピンクの光が弧を描く。
ダニーが慌てて避ける。
「危な!」
ハイジが笑う。
「いいなそれ!」
フィアが次の光を展開する。
水色の泡が空中に浮かぶ。
ノエリアがその泡を足場にして動く。
観覧席がどよめく。
「連携すごくない?」
「Dクラスだったよな?」
ノエリアが着地する。
ハイジが正面に立つ。
炎が揺れている。
ハイジは少し嬉しそうに笑う。
「成長してんな」
ノエリアも剣を構える。
「ハイジも……!」
二人が同時に動く。
炎と光。
剣と蹴り。
そのときだった。
ノエリアの胸の奥が、急にざわついた。
ドクン。
(……?)
何かが近づいている。
遠く。
学園の外。
森の方から。
黒い気配。
ノエリアの視線がそちらへ向く。
ほんの一瞬。
森の奥に――
誰かの影が見えた気がした。
長いコートの人物。
その瞳が、こちらを見ている。
「……!」
ノエリアが動きを止めた。
ハイジが驚く。
「ノエリア?」
その瞬間。
森の奥で、黒い霧がゆっくり立ち上った。
観覧席がざわめく。
ジェイドの声が響く。
「……闇反応」
次の瞬間。
空気が一変した。




