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放課後の光

グランドフォール学園、放課後。


校舎の窓から夕方の光が差し込み、廊下の床をオレンジ色に染めていた。


授業が終わったばかりで、生徒たちの声があちこちから聞こえる。


「今日の訓練やばかったな」


「ハイジの蹴りすごかった」


「ゼロの子もさ――」


そんな会話が、廊下の向こうへ流れていく。


ノエリアとフィアは並んで歩いていた。


ノエリアはまだ少し興奮している。


「チーム戦って、あんな感じなんだね」


フィアがふわっと笑う。


「うん」


手を後ろで組みながら言う。


「でも楽しかったでしょ?」


ノエリアはすぐ頷いた。


「すごく」


二人は階段を上がり、屋上へ続く廊下へ出る。


そこは少し静かだった。


遠くから運動部の掛け声が聞こえる。


フィアが窓の外を見る。


夕焼けが空を染めていた。


「綺麗だね」


ノエリアも窓の外を見る。


グランドフォール学園は小さな丘の上に建っている。


遠くの森までよく見える。


風が少しだけ吹いた。


ノエリアがぽつりと言う。


「私さ」


フィアが振り向く。


ノエリアは少し恥ずかしそうに笑った。


「今日、楽しかった」


フィアは優しく頷く。


「うん」


ノエリアは少しだけ目を伏せる。


「入学したとき、すごく不安だったんだ」


胸のバッジに触れる。


「ゼロだったし……」


小さく笑う。


「みんなすごいし」


フィアはゆっくり言う。


「でも」


ノエリアを見る。


「ノエリアちゃんもすごいよ」


ノエリアは驚く。


「え?」


フィアは窓の外を見ながら言った。


「私ね」


少し考える。


「ノエリアちゃんの光、好き」


ノエリアの胸が少し温かくなる。


「……光?」


フィアは笑う。


「うん」


「ふわふわしてて、優しい感じ」


そのとき。


ふっと風が吹いた。


屋上のドアが、少しだけ揺れる。


キィ……


小さな音。


ノエリアの胸が、ドクンと鳴った。


(……あれ?)


なぜか分からない。


でも――


何かがそこにいる気がした。


ノエリアはゆっくり振り向く。


屋上のドア。


誰もいない。


でも。


夕焼けの光の中で、ほんの一瞬だけ。


小さな光が揺れた気がした。


まるで、誰かがそこに立っているみたいに。


ノエリアの口から、自然に言葉が出る。


「……ベル?」


その瞬間。


光がふっと消えた。


フィアが不思議そうに聞く。


「ベル?」


ノエリアは少し戸惑う。


「えっと……」


首をかしげる。


「分かんない」


胸を押さえる。


「なんか、そんな名前が浮かんだ」


フィアは少し考える。


でも、すぐに笑った。


「きっと」


夕焼けの空を見る。


「ノエリアちゃんの大事な人じゃない?」


ノエリアは窓の外を見る。


空はオレンジ色。


その奥で、小さな星が一つ光り始めていた。


(ベル……)


胸の奥が、少しだけ温かい。


そして同時に――


少しだけ、寂しい。


まだ思い出せない。


でも。


確かにそこにいた気がする。


とても大切な誰かが。







同じ頃。


学園の外の森。


暗い木々の間で、三つの影が立っていた。


カリンが楽しそうに言う。


「ねえ」


森の奥の光を見ながら笑う。


「面白くなってきたね」


キースが肩をすくめる。


「まだ弱いだろ」


カリンがくすくす笑う。


「だからいいんじゃん」


その後ろ。


エスターは静かに学園を見ていた。


長い沈黙のあと。


小さく呟く。


「……まだ」


風が木を揺らす。


「目覚めていない」


エスターの視線は、ずっと同じ場所を見ていた。


ノエリアがいる学園を。

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