眠り王子の呪いを解こうとしたら、なぜか気に入られました
こんにちは!見つけてくださり、ありがとうございます。楽しんでくれたら、嬉しいです。よろしくお願いします。
「たのもうーーーー!」
私、コレットは城の大門の前で叫ぶ。
ぎぎっと門が開き、いかつい騎士が出てくる。
「この大会、今からでも参加できますか?」
ばかでかい看板を指さしながら問う。
なんて素晴らしい看板。オークの大木を使っているのか、よい手触り。
なんといっても厚みが凄い。
『 聖女全国大会 』
指示出したやつのネーミングセンスが問われるな。
国中の聖女が集められ、一番を決めるらしい。
いやちがった。
数か月眠りから覚めない王子の呪いを解く、真の聖女を探しているらしい。
「そのセンス、嫌いじゃないわ」
大会とあれば、私の出番。
ーーー道場破りのコレット。
数々の道場の看板を手にしてきた、このコレット、なんとしてもこの看板もいただくとしよう。
***
「ついてこい」
騎士に案内された先に、たくさんの聖女が集まっていた。
「私は、清めの聖女です」
「私は、遠見の聖女」
「夢見の聖女と呼ばれています」
「私は‥‥」
すごい、聖女っていろんな種類があるんだ。
「皆に王子の呪いを解いてもらいたい」
中央のベッドで青白い顔の王子が眠っている。
「王子の誕生日に呼ばれなかった魔女が、逆恨みで呪いをかけてしまった。眠ったまま目覚めない呪いだ。」
どこかで聞いた話だな。
「呪いを解いた者には『真の聖女』の称号を与える。大変な名誉だ。」
聖女ひとりひとりが、かわるがわる王子の元で祈ったり、呪文を唱えたり、必死で各自ができる事を試す。
しかし、皆一応に、「私の力では無理でした・・・」と無念な表情で戻ってくる。
最後に残されたのは、私だった。
「さあ、お前の番だ」
期待の目を向けられる。
・・・困った。そういえば私は聖女じゃなかった。ただの道場破りだった。
ここで説明しよう。
「道場破り」とは、武術を教える道場において、腕に覚えのある部外者(荒くれ者)が、その道場の長に戦いを挑む。
長に勝てば、その道場の看板を、勝利の証に頂いていくのだ。
門下生を抱える長として、文字通り看板を失うわけにいかない。メンツをかけた戦いだ。
荒くれ者にとっては、これが流しの修行ともいえる。
道場側としては、一方的に挑まれ看板を失うリスクまで負わされ、リターンなさすぎるシステムだとは思う。
女だてらに異常に強い私は、数々の道場破りをこなし、頂いた看板を街の売人に売って暮らしを立ててきた。
売れるのだ、道場の看板。高値で。
世の中にはコレクターという人たちがいるらしい。
道場の有名度によって値段は違う。
『 聖女全国大会 』
道場の看板ではないが、こんな後にも先にも一生出てこなさそうな看板、絶対プレミアがつく。
しかも王家から頂いたとなれば、それはもう・・・
「おい、なんでよだれたらしてるんだ、顔拭いてこっちに来い」
はっと我に返る。
やはりなんとしても欲しい、あの看板。
聖女でない私の戦い方に知恵を巡らす。
「お前は何の聖女だ」
「わたくしは、繋ぎの聖女です」
はったりだ。
王子の元に行き、私は他の聖女にお願いをする。
「『夢見の聖女』さん、私を王太子の夢の中に入れてください。『聞こえの聖女』さん、私の心が聞こえたら、『伝えの聖女』さんを通して会話できるよう指示を出してください。私の体を使って、皆さんの力をつなぎます。」
私は、へその前で交差させた両こぶしを、ぐっと両脇に収め、「うっす」と気合をいれる。
いざゆかん、試合会場(王子の脳内)へーーーーー
***
「いたいた、こんなところで何してるんですか」
王子は森の中でぽつんと座っている。
見覚えのある森だ。王都の外れにある、実際の場所のようだ。
王子の意識は夢の中にいるだけでなく、魂が飛び出してしまっているのか。
「お前は別の聖女か?先ほどきた、夢見の聖女とは違うな。」
「お力を借りております。どうして彼女と戻らなかったんですか?」
「まだ帰りたくないのだ。最初は魔女に無理やり魂を飛ばされたが、こうやって国境をさまよっていると、戦場がよく見える。成人したら私が向かう場所だ。私の指示ひとつで多くの戦士を失うかもしれないかと思うと、今の私に務まるのかと不安なのだ」
「ひよったんですね」
「身も蓋もないな」
「不安は、現実に真摯に向かいあった証拠です。さあ、皆さん待ってます、帰りましょう」
「でも、こうやって俯瞰しているだけでも、自分の足りないところに気付けるのだ。」
「なるほど。戻ってからそのお気づきなった足りない所、学べばいいんじゃないですか。」
「でも、私の成人の儀まで時間もない。それに私の教育係達もよくやってくれているのに、これ以上不満を伝えるのも申し訳ない」
「もう十分です」
「でも、」
「ああ、でもでもうるさいな!だったら一生眠ってますか!?あのですね、100%の自信なんて誰もないんですよ。自信なくても、腹決めて立ちむかうんですよ。 不利な環境『でも』戦う、お金ない『でも』人の物に手を出さない、羨ましい『でも』妬まない!そうやって我々庶民は覚悟決めて生きてるんですよ。それが大人になるっつーことなんですよ!」
いらいらしてついまくし立ててしまった。はあはあと肩で息をする。
夢の中でよかった。現実でやってたら処されてるわ。
「わかりました。一庶民の私の覚悟をご覧入れます。」
私は目をつぶり、強くイメージを送る。
ざざっざざっと、何かが合わさったりつなぎ変えられたりする波を感じる。
「こちら『伝えの聖女』です。『繋ぎの聖女』さん、聞こえますか、どうぞ。」
「はい、こちら『繋ぎの聖女』、よく聞こえます。『移転の聖女』さんに、私の現実の身体と武器を、王都外れの森に送るようお願いしてください。もしできれば、その後『清めの聖女』さんに森の清めも祈ってもらってください。どうぞ」
「了解しました。」
「何をする気だ?」
「これから私は、あそこにいる魔物と戦います。」
「何の力で?」
「腕力です」
「は?」
「私、実は聖女じゃないんで。ただの異常に力の強い道場破りです。」
唖然とする王子。
「相手は魔物だぞ、怖くないのか?」
「怖いに決まってますよ。いいですか、人はいつかは必ず死ぬんですよ。それでも私は、最後の瞬間まで絶対生きることを諦めないと決めています。次の一手を考えながら死ぬ覚悟があるんです。もちろん危なくなれば撤退できるよう、逃げる訓練もしています。すべて、同時なんですよ。あ、私の身体があの岩の陰に見えました。聖女たち、グッジョブ。では、私の生きざま、見といてください!」
目をつぶり、私は自分の意識を体に戻す。
再び目を開ければ、そこは深い森で、近くにいる魔物の息遣いが聞こえる。
多分、私は、ヘタレな王子に無性に腹が立っているのだ。
一国のリーダーになろうって人間が責任から逃げるんじゃないって。
教育係は今までなにやってきたんだ。甘やかすなっ
だからってなんで私が戦う必要あるのかも自分でもわからない。
王子の寝ぼけた頭をはったおしたい欲が、気づいたらこうなっていた。
きっと、誰かが貧乏くじひかなきゃ変わらない気がした。
引いてやろうじゃん。
「やってやんよーーーーー!!!」
私は岩かげから飛び出し、魔物にむかって走り出す。
***
魔物は手強かった。正直あぶなかったし、ちょっと後悔した。
しかし『清めの聖女』と『増強の聖女』の祈りのおかげで、無事私は勝つことができた。
素晴らしいチームプレーだ。
普段聖女たちは「自分が何とかしないと」と、一人で背負いがちなのかもしれない。
それを適材適所、上手く連携させればもっとできる事があるのかも。
「よくやった、『真の聖女』よ」
玉座に座る王が、目覚めた王子とともに声をかけてくる。
「コレット、君のおかげで本当の意味で私は目が覚めたよ。ありがとう。」
「いえ、聖女さん達の力のおかげです。称号はいりません。」
「では何が欲しい?褒美か?」
「看板です!!はい、それです、どうもありがとうございます!」
私は約束していた看板を、騎士から奪い取る勢いで受け取ろうとする。
王子が近づいてくる。
「待て、今後どうするつもりだ?」
「はい、これを売ってまた道場破りの旅を続けます。あ、でも、私は悪徳な道場破りではないですよ。ちゃんと見極めます。長が高齢で時代遅れなのに権限を次の世代に渡さない所とか、活性化した方が皆のためになる所にいってます。『仕方ないな~』とかいって嬉しそうに渡してくれるところ、結構多いんですよ。ウィンウィンです。」
「しかし、君には、皆の力をつなぎ合わせる能力と、自ら率先して戦う勇ましさがあった。私には眩しくて、本当の聖女にように見えたんだ。頬を真っ赤に染めて、必死に私の事を叱ってくれて…」
王子の耳が赤い。
私は、頬なんか染めてなかったが。アドレナリンは出ていたが。
なんとなく嫌な流れだ。
「はやくそれをください」
「まあもう少し待て。これも付け加えておこう。」
王子は腰から剣を抜き、看板の裏側にざくざくっと、切り込んだ。
貴重な看板に何しやがんだと一瞬焦ったが、いや王子直筆とあればさらに高値が、と計算が働く。
「これでよし。」
渡された看板の裏に刻まれた文字は。
『 王子の妃決め大会 』
おおい!センス!
王子はにっこり笑う。
「優勝、おめでとう」
いやあああ!と叫びながら、看板を抱え走り出す。逃げるしかねえ。
「捕らえよ」 「「「はっ」」」
数十分後。
使用人の勝手口から逃げようとして、大きすぎる看板がつかえて出られない所をつかまってしまった。
「看板、縦にすれば抜けられたのにね」
「まあこれで、コレットは城の看板娘ね」
城の者や聖女たちが、ほほほと笑っていた。
おしまい
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