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コミュ障なのに転生した先で勝手にされた婚約を破棄する為に王国を立て直す話  作者: 冬踏よーかん


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第8話 「姫とフルコース」

「え、あっ、ん……」


 まじまじと置かれた料理を見つめる。


 なんか真っ赤なカニカマみたいなのに野菜が下に敷かれてちょこんと乗っている。え? こんだけ? 異世界の人間は少食なのか。

 とてもじゃないが、オレには少な過ぎて足らないのだけど。用意されたフォークでペロリとたいらげると、国王がポカンとこちらを見て固まっている。



 え? あれ……? またやっちまった?


「失礼します」


 メイドが皿を下げて、テーブルの上に何もなくなる。オレは物足りなさを感じながら、席を立とうとすると次の料理を持って来るのが目に入る。


「あ、そ、そーゆう事?」


「失礼します。こちらは『季節の野菜の盛り合わせ』になります」


 なるほど、少しずつの皿が順番に出て来るのか。なんか見た事あるぞ。オレは次の皿も平らげて、待つ。ほぼ三口くらいで食べられる量の料理しか出てこないので、割と手持ち無沙汰だ。


「失礼します。こちらは『(かも)の燻製。オレンジの香りとサラダ仕立て』になります」


 んまっ。普段食ってるコンビニ弁当とは雲泥の差だ。

 こりゃ異世界世界も、悪くないかも〜!


 自然とニコニコ顔になってしまい、オレは上機嫌だ。だって、出て来るメシ出て来るメシの全てが美味いんだもん。


「こちらは『コンソメと雲丹(うに)の冷製のミルフィーユ』になります」


 んまっ!? 何だこりゃ。今まで食った事もないぞ!?



「……ん、おい……し」



 オレがポツリとそう言うと、近くにいた執事とメイドが驚きの余りに固まり、同時に盆を持っていた別のメイドが口をあんぐりと開けたまま、手に持っていたお盆を落とす。

 そして、プルプルと打ち震えて、感動の涙を流しながら走り去ってしまう。



「あ、え……??」


 しばらくすると調理(コック)服を来た初老の男性が奥から涙を流しながらやって来た。


「姫様、私……長年給仕を務めさせて頂きましたがお褒めの言葉を頂くなんて初めてで御座います。姫様のお口に合う料理を作る事が出来る境地に立てる日が来ようとは夢にも思っておりませんでした。誠に……誠にありがとうございますっ!!!」



 ど、土下座?!!



「な、へっ!? あ、あの…、ど」


 動揺しちゃいけないっ!! そう、そうだ。オレは寡黙な姫……。寡黙な姫……。



「え、あ、うん……。腕を上げたわね。これからも精進してちょうだい」


 その言葉に初老の男性はさらに涙を流し、


「はいぃぃぃ!!! 勿体なきお言葉!! ありがとうございますぅ!!」


 と、バッタの様に土下座を繰り返すのだった……。



「あの……、そろそろ次の料理が食べたい…わ」


 オレがそう言うと、しばらくの間、土下座を繰り返していた初老の男性はハッと気付いた表情で「大変に失礼致しました!」と厨房に戻って行った。


「国王様っ!?」

「ワシはもういい……。そう伝えてくれ」


 男性と入れ替わる様に国王が席を立ち、部屋を去ってしまう。



「あ……」


 オレは引き止める事も出来ずにそれを見送った。食事中ずっと静かだったもんな……。オレの態度に怪しんでるのだろうか……。

 ただ……、心なしか声が震えてたような。


 ん? 待てよ。部屋に取り残されたオレは独りで夕食を食べる事になるのか?


 そう考えた瞬間、忘れていた緊張がまた舞い戻って来るのだった。


 ○◇○◇○ ○◇○◇○


「ふぃ〜、お腹いっぱい……」


 ガーレットに連れられて部屋に戻ったオレは鉄仮面を外し、ベッドに横になる。

 あれからさらに手の込んだ料理が出て来て、結局全部食べ切ったら腹がパンパンになってしまった。


「姫様、お着替えはよろしいですか?」

「ん、する……」


 ドレス姿のままだと腰のリボンが苦しくてツラい。言われるままにバンザイの姿勢をとって、ドレスを脱がしてもらうと寝間着に着替える。


「ふぁ〜〜、やっぱりこの姿が一番落ち着く」

「ふふ、もうお休みになられます?」


「うん、国王にも話出来なかったし、明日に備えてゆっくりしようかな」

「わかりました。私はお呼び下さったらいつでも参ります。姫様、今日は大変にお疲れ様でした。失礼します」

「うん、ありがとう。おやすみ」


「はい、おやすみなさいませ」


 ガーレットは深々とお辞儀をすると部屋を後にした。


 ふわふわとした眠気に誘われる。バタバタと慌ただしいまま過ぎて行ったがなんとかなった気がする。これからの計画はまた明日以降に考えればいいだろう。

 そして何よりも、一番の収穫は側にいるメイドのガーレットが親しみやすい子だった事か。

 あの子と一緒にいると不思議と緊張しないで済むんだよな。


 ウトウトとしながら、オレはベッドでゆっくりと眠りに付くのだった。

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