第5話 「メイドから聞き出す作戦」
「はっ?! うっ、……! もう、何でございましょう! 何で御座いますか! 姫様」
効果は高いらしい……。
今のは会心の振る舞いだったんじゃないか?よしよし、立ち回り方が分かって来たぜ。
「その……、皆には言わないで欲しいのだけど、実は……目が覚めてからこれまでの記憶が分からないの」
「分からない、とは……」
「うん、私がどんな風にしていたか……とか、ここが何処か……とか、あなたが誰なのか……、とか、自分の名前すら忘れている……みたいで」
「そんな…… そんな…… 姫様」
メイドがポロポロと涙を流す。
「えっ、あの…、え、なん…はぇっ」
「おいたわしや姫様…。もっと早く打ち明けてくだされば私もご協力出来たのに……。そう言う事だったのですね、今までの姫様が不可思議な素振りをしておられたのは」
「ふかっ……、そ、そんなに?」
そんな風に見られてたのか!危ない所だった…。
「はい、それはもう…。人が変わったかの様に別人のような振る舞いでしたわ」
別人なんですが…。
「ご、ごめ……ごめ……ごめんなさい。戸惑ってしまって混乱してたから」
「いえ、いいのですよ姫様。私はガーレットと申します。姫様の身の回りのお世話を担当させて頂いております」
「ガーレット……、よろしくね」
「はい、姫様。よろしくお願い申し上げます。ですが……宜しいのですか?記憶を思い出す事は姫様に取って御辛い事かも知れません。ドルイド様には、お会いになられたのですよね?」
「ドルイド……?」
「ええ、婚約者の」
「ああ……あの」
クソジジイか。
「うん、会った。会ったわ。ひっぱたいてやったけど」
「ひっ……、ぱ、……えええええぇぇええっ!??」
メイド……、ガーレットはオレの今までの人生でこれ程までに驚いた人間を見た事が無いというくらいに驚いていた。
「ドルイド、ドッドッ、ドルイド様ぅをっ……!?!? それで、何事も無いのですかっ!?」
「えっ、うん……。別に何も……。どうして?」
ガーレットはオレの言葉を聞き、暫し……物思いに耽った後、オレの耳元でこう呟いた。
「姫様、御提案なのですが……私は記憶の事を喋りません。その代わりに何も知らないまま、この国から離れませんか?」
「え、でも……そうすると借金が……」
「ええ、そんな物放っておけばよいのです。この国と国民と王が作り出した物、姫様には何の責任など御座いません。それなのに何故、姫様が全ての責任を背負って受け皿になる必要がありましょう。私は常々、疑問に思っていたのです」
成る程、確かに一理ある。そりゃそうだ。
「姫様、姫様がそのおつもりなら私は全力でお手伝い致します。私と一緒に逃げませんか……?」
ガーレットの提案にオレは考え込む。
オレは、ガーレットと共に、
「逃げ……」
「逃げ……ない」
「え?」
信じられないといった面持ちでガーレットがオレの言葉を聞き返す。
「逃げないわ。私は逃げません。ありがとうガーレット。私を思い遣ってくれて。でも、この国の姫に産まれた以上、全ての責任を背負って生きるべきなのです」
そう。大体さ、こんなに燃えるシチュエーションも無いだろう?どんな名作SLGにもこんな巫山戯た難度のステージはなかったぜ?
……攻略しがいがあるってもんよ。
「お願い、ガーレット。私からの質問に答えて。全てを話す必要はないわ。私の知りたい事だけ教えてちょうだい」
情報は最低限でいい。
「ひ、姫様……」
ガーレットは何故か打ち震えながらオレからの質問に快く答えてくれるのであった。




