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コミュ障なのに転生した先で勝手にされた婚約を破棄する為に王国を立て直す話  作者: 冬踏よーかん


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第4話 「姫と国の借金」

「この国の収入の百年分…」


 途方も無い話だ。

 普通に考えたら無理ゲーもいい所。だが… あれだけの啖呵を切った以上、不可能を可能にひっくり返さないとオレとこの国に未来は無い。


「うん、今こそSLGで(きた)えた腕前を披露(ひろう)する時。劣勢(れっせい)(くつがえ)した瞬間こそが一番気持ちいいんだよなぁ。SLGの醍醐味(だいごみ)と言っても過言ではない。うん」

「エス、エル……ジー?」


 キョトンとした面持(おもも)ちで国王がオレの言葉を聞き直す。


「あっ、いや、へへっ、へへへっ、…、その」


 しまった。すっかりゲーマーの気分で独り言を言っていたが、目の前に国王がいたのを失念していた。それに現代社会でも無いのにSLGなんて単語が通じる訳がない。

 オレは必死に言い訳を考えて…、考えた後、



「わ、忘れろビーーーム!!」

「わ…? ビ、ビーム?」


 やべ、やっちまった……? 思わずポーズを取ってみたけど、国王の呆気(あっけ)に取られた顔から(さっ)するに絶対に分かっていない。


「ひ、姫……、忘れろビームとは何じゃ。何かの意味があるのか…?」

「あっ、いひっ…、これは…その、うふふ、冗談です。冗談。暗い顔をしてたので元気が出るかな〜って」

「う、うむ…? ワシはそんなに悲壮(ひそう)な顔をしておったか」

「えええ、えっと、うん、はい。して…ました。はい」


「そうか……。それはすまなかった。気をつけよう。しかし、姫がその様な気遣(きづか)いをしてくれるなぞ…、以前では考えられないような出来事じゃ」

「えっ、そりゃ、そりゃ…、その……」


「それに、……そのような粗暴(そぼう)な言葉遣い、今までしておらなかったはず……。一体、誰がそのような物を姫に吹き込んだのじゃ」

「あ、え……、あの……その、ち、ち、ち、ち、違いますわお父様。少しだけ気が(たかぶ)ってしまって、うっ、まだ体調が優れません。姫は自室に戻って休んできま……参ります」

「そ、そうか……、それは大変じゃ。ゆっくり休むとよい。すまなかったな」


 オレは戸惑う国王の(わき)(くぐ)り抜ける様に部屋から出て、一目散に走る。

 危ない。話せば話すほどボロが出る。以前の姫様がどんな人物か知るまでは下手な事を喋れないぞ、こりゃ。


 オレはうろ覚えの道を辿(たど)って姫の部屋に戻ると、ベッドに直行し、シーツを(かぶ)る。


 借金の前に、いろいろとリサーチする必要がある…。

 考えてみりゃ当たり前の話か。


 見ず知らずの世界、人物に成り変わっている以上、オレの前のこの身体の持ち主の事も把握しておかないと中身が違うのがバレる。バレても問題は無さそうではあるが……、いや、待てよ。確か、歴史の世界では偽物が入り込もうとして悲惨な目に()う話が無かったか?



 そう考えると、……うぅ、ブルブル。


 オレはその末路を想像して震え上がる。


「と、とりあえずは記憶が分からないって事で押し通そう。(さいわ)いにもこの姿でいる限りは偽物扱いされていないからな」


 暫定(ざんてい)の方針を決めておくだけでも随分(ずいぶん)と気持ちが楽になった。

 この姿で目覚めてからバタバタと矢継(やつ)(ばや)に色んな事が起きて気が休まる時間がなかった。ふわぁ〜とあくびをすると、オレはベッドの中でいつのまにか寝入っていたのだった。



 ○◇○◇○ ○◇○◇○



「コンコン」


「コンコン」


 部屋をノックする音で目が覚める。


 いつの間にか眠っていたのか……。寝惚(ねぼ)(まなこ)で扉を開けると、先程いた家来の一人が立っていた。


「なに…?」

「姫様、髪が乱れておいでですわ。直して差し上げましょう。それにお召し物もはだけてしまって……、肌が見えてしまっております」

「あ、ああ……、うん…この服スベスベだから…、ずり落ちちゃう」


「まだお目覚めになっておりません(よう)ですね。国王様が心配しておいででしたわ」

「あ、…うん。それな…、いや、それね」


 メイドは部屋に入ると、オレの寝癖だらけになった髪を()かし、ずり落ちた寝巻きを整えてくれる。


 ぽんやりとしたままオレは再びベッドに戻るとシーツを鼻の所まで(かぶ)る。


「まだ体調が良くありませんのね。ゆっくりお休みなさってください。何かありましたらお声がけしてくだされば何でも致します」

「うん……ありがとう」


 その言葉にメイドは驚愕(きょうがく)面持(おもも)ちをして、持っていた布を落とす。


「姫様が…姫様が……お礼を……!?」

「ふぇっ、あ、……、」


 オレは思い出す。下手な振る舞いは命取りになると。しかし、何だ?お礼を言うだけでこんなに驚かれるなんてこの身体の持ち主はどんな性格をしていたんだ?? 国王だってそうだ。オレとしては普通の受け答えをしているつもりでも何故か意外な行動をしたかの様に振る舞われる。



 丁度いい機会だ。このメイドから何か聞き出そう。


「あの、少しだけ…聞いてくれる?」

 オレは出来る限り可愛く、上目遣いでメイドに向かって話しかけるのだった。

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