第2話 「オレが姫ってどういう事!?」
「よかった!! 姫!! ご無事でなによりでございますーー!」
「わーーん! わーーん!! よかった〜!!」
「ぇ、あの……、ッス」
大の大人、数人に取り囲まれてオレはなす術もなく固まっている。抱き締められても困ってしまうし、え、そんなに感涙しなくても……。
「よかった! よかった!! お目覚めになられて本当によかった!!」
「このままずっとお目覚めになられないかと心配しておりましたのよ!」
「あっ、あの〜…… その、あっ」
どうしよう。何か聞き出そうにも取り付くしまもないくらいに捲し立てられる。
「あの……」
「姫様ーーーーッ!!」
「その……」
「お目覚めになられて本当に嬉しゅうございますーー!!」
「ひと……聞い……」
「わぁああーーーー!! 姫ーーーーッ!!」
「ひと……」
「姫ーーーーッ!!!」
ダメだ。コイツら……! 人の話を全然聞きやしない。
「姫ーーーーッ!!」
「あの、その、ひと……」
「ひと……?」
「ひ、ひと……」
渾身の声を振り絞ってオレは叫ぶ。
「ひとりにしてーーーーーーーーーーっ!!!」
その声に周りにいた奴らはキョトンとして、その後に、
「いや、これは失礼しました!!」
「姫様申し訳ありません! 私達も嬉しくて舞い上がっておりましたわ!」
「そうですよね! そうですよね! 姫様もお目覚めになられたばかりで混乱しているご様子。我らは一時退室致しましょう」
と、ようやくゾロゾロと引き上げるのだった。
「ふぅ……」
誰もいなくなった部屋でベッドに胡座をかいて頬杖を付く。
状況を整理しておきたいけど、とりあえず分かった事はオレはどこかの国の姫になってしまっていて、やたらベタベタしてくる家来がいて……、分かっているのはそれだけ?
いや、違う。もっと考えろ。
この部屋に置いてある物の様子からここは中世に近い世界か? タイムスリップ……した訳じゃなさそうだ。
あの家来達だって明らかに外人みたいな風貌なのに言葉が通じた。オレは日本語しか話していない。
それにこの短い手足と目線。明らかに以前のオレよりも数十センチは背が低い。
「あー、あーあー」
声もそう。どう考えても大人の声じゃない。かと言って完全に子供って訳でもなさそうだ。
そうか。この部屋、鏡がないのか。という事は待てよ?今の状況だと自分の顔がどんな風に変わっているのか分からないのか!!
それに何日眠っていたんだ? 仮に一週間は風呂に入ってないとして……、臭くないよな?! オレ!
くんくんと自分の腕を鼻に近づけて嗅いでみる。
「なんにもわからねぇ。自分の匂いは自分じゃ気付かないって言うし」
「嗚呼‥‥‥、あの姫様がこんなに自己主張してくださるとは.…」
「ええ、お目覚めになられた後、命が吹き込まれた様に生き生きとしておいででしたわ!」
「ああ、姫様……!!」
……。聞こえてるって言うの。アイツらドアの前にいるのかよ。
はっ!? そう言えばさっきすごい近くにいたけれども、匂っていないよな!?
そう考えると途端に恥ずかしくなってきた。
「ああぁあああぁあああああっ!!!」
頭を抱えて悶絶する。その声を聞いてドアの向こうの家来達が、
「姫様ッ!?」
「どうなされました!?姫様!!」
「お怪我が!?」
「入って来るなーーーーー!!!!」
バンと開いたドアを家来達がおしくらまんじゅうみたいにぎゅうぎゅう詰めにして入ろうとするのを制する。
一喝されてスゴスゴと戻って行く家来達に睨みを効かせながらオレは考える。
兎に角、アイツらを冷静にさせて話を聞いてみないと。何も分からないままお姫様にされるのはたまったもんじゃない。
でも。
「どうやって探りを入れるか。それが問題だよなぁ。中身が入れ替わっているってバレてもいいもんなのか?」
そう。オレのコミュニケーションスキルじゃ絶対にボロが出るに決まっているのだ。
「あっ、国王様…!」
「姫様は今、おひとりに……」
「ん?」
ドカドカと部屋の中にまで聞こえてくるような大きな足音が聞こえたと思ったら、勢いよくドアが開いてその向こうから大きな熊のようなシルエットが表れて、
「ひっ、姫ーーーーーーーーーーーーーッ!!」
「わ、わぁああああああーーーーーーー!!?」
一目散にこっちに突進して来たと思ったら、またしても抱きかかえられてギューっと、締め上げられた。
ガッチリと固定されてビクともしない。なんつー怪力だ。丸太みたいな腕しやがって。それにヒゲだらけのゴッツい顔をくしゃくしゃにして泣き喚かれても。怒るに怒れないじゃないか……。
こっちはなす術もなく、この国王と呼ばれた大男が落ち着くのを待つしかなかった。




