第11話 「パピルスを求めて」
くそっ。紙がそんなに貴重だなんて誤算だったぜ……。
「それに、パピルスをご所望と言うのならば」
インテリ片メガネは指をパチンと鳴らすと、部屋の向こうから、ズラズラと紙の山を持って彼の部下が入ってくる。机の上にドッサリと山積みになった書類の山を叩きながら、
「パピルスならここに。全て借用書ですがね」
「し、借用書?! これ全部!!?」
オレはその紙を手に取り内容を確認する。
「うえぇっ。なんだこりゃ……、しかもほとんどドルイド……、あのジジイ宛の書類ばかり……、ん? しかもこの紙の請求額も含まれているぞ!? いち、じゅう、ひゃく……せん、まん……、ふざけやがってあのジジイ!!」
憤慨するオレに片方の眼鏡をくいっと上げて、片メガネは言う。
「仕方ありません。パピルスはドルイド卿の専売品です。正確にはあの方以外にはパピルスを製造出来る者がいないのです」
「んあ? なんで? どの国でも作ってないの?」
「無論です。我々にはパピルスがどの様にして作られているのか想像すら出来ない。この様な真っ白な板状の形、そしてこの軽さ。魔法としか言いようが無い」
「えっ、紙くらい簡単に作れるでしょ」
「は?」
オレのその言葉は片メガネの逆鱗に触れた様だ。
「姫様。お言葉ですが、この魔法を再現するのに各国の叡智達がどれほどの血と、汗と、涙と、その他もろもろ、恐ろしい程の労力と時間を掛けて尚、未だに欠片ほども到達していないのですよ? それを貴方は……。いとも簡単に言って頂けますね」
「だって……、材料があれば……そうだ! えーっと、名前……」
「ヨハネです。姫様」
「そう! ヨハネ! この辺りを一望出来る場所ってある?」
「この辺りを? ならば城の見張り台に行けばいいと思います」
「よし! 行こう!」
オレは片メガネを連れて、城の天辺にある見張り台まで行く。
「おー! 絶景! って、感動してる場合じゃない。うん、自然が豊かないい地形じゃん。えーーっと」
オレはぐるりと見渡して、目当ての物を見つける。
「うん、アレならいいんじゃないか?」
「姫様、ハァ、ハァ、何をするおつもり…ですか」
「これくらいで息が切れるなんて、運動不足じゃない?」
「姫様が健脚なのです……。それで何を探していたのですか」
「アレだよ、アレ」
オレはそう言って東の方にある森林を指差して言った。
○◇○◇○
「ちぇっ、本当なのに……」
何故か片メガネにこっぴどく叱られ、オレは不貞腐れながら部屋に戻る。
「なんであの森林に行っちゃダメなのさ」
姫であるオレは気軽に外に出てはダメらしい……。外に出るには国王の許可、って……メンドくさ。
「大体さ、国王が何処にいるかすら知らないのに……」
片メガネは国王の許可が得られたら同行するとか言ってたけど、絶対に信じてないなあのメガネ。
部屋に戻ると綺麗に書類は片付けられ、散らかった物は整頓されていた。ベッドに寝転がって、腕枕をしながら考える。
「しかし……だ。なんとなくこの国の借金のカラクリが見えて来たぞ。国の運営に必要な技術をほとんどドルイドが独占しているんだ。それを法外な値段で売り付けて、あっちは莫大な利益を上げ、こっちは従うしかない。なるほどねぇ、体よく嵌められているのか、とは言え……ドルイドの持っている技術をこっちが作れない限りは借金は嵩むばかりか。うん、方向性が見えて来たぞ」
他の国がどうなっているのか気になるが、おそらく同じような状況なのだろう。と、すると……。その取り決めを一緒に行っている国もグルか。
「それも見つけ出さないとな……。だけども、とりあえず目下の目標は紙を作り出す事だな。うん」
「紙を作る事が出来ればその分の余計な出費が減る。それにドルイドの独占してる紙の製造に食い込む事が出来るなら、国の収入も増えるだろう。どの国も安価な紙を必要としてるだろうからな」
そう、公務で使うと聞いた以上、紙の需要、他の国でも紙を使っているのは確実だ。そこにスルリと割り込めれば、かなりの収入になるはずだ。
「よし。じゃあ、やっぱりあの森に行って使えるかどうか確かめないとな」
オレは弾む心持ちでベッドから起き上がると、国王の居場所を探す事にした。ちなみに寝間着のままだったのでガーレットに見つかってすぐに着替えさせられた……。




