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巨乳の彼女を恥ずかしがらせるだけの話  作者: りむ
春の章

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2/21

#2 登校するだけの話

春の朝、まだ肌寒さが残る空気の中、僕たちはいつもの時間に家を出た……はずだった。


「しずくちゃん、急がないと……電車、そろそろ出ちゃうよ」

「……う、うんっ……!」


改札を通り抜け、ホームに向かう階段の前に立った瞬間、しずくちゃんの足が止まる。


「……やっぱり、階段、怖い……。足元、見えなくて……」

その声は、まるで春風に紛れてしまいそうなほど小さかった。

でも、ちゃんと僕には届いた。


彼女の両手は、無意識のように制服の胸元に添えられていた。

そこにある膨らみが、彼女の視界をほとんど覆ってしまっている。

中学卒業時点で、バスト102センチのJカップ。不安を抱くのも納得する。


僕が先に一歩、階段を降りて振り返る。下から覗くと、しずくちゃんの表情が胸の膨らみに隠れて見えなくなる。


まるで、ヒールに慣れない初心者のような足取り。

つま先を慎重に一段ずつ下ろし、身体を前に倒すようにして重心を移す。

そのたびに、ブレザー越しにやわらかな曲線が、ふわりと揺れた。


「……その、手、貸そうか?」

「い、いいっ! ……けど、ちょっとだけ……持ってて……」


僕がそっと手を差し出すと、彼女はためらいながらも、袖の端をつまむようにして掴んだ。


きっと、手を繋ぐのは恥ずかしい。

でも、何もなしで降りるには、不安が勝ったのだろう。


彼女の指先は、かすかに震えていた。

その小さな手のぬくもりが、じんわりと僕に伝わってくる。


途中、何度か足を止めながらも、ようやく、ホームにたどり着いた。

でも、そこにあったのは、すでに閉じたドア。

発車のベルが遠ざかる中、電車はゆっくりとホームを離れていく。


「うぅ……やっぱり……遅れちゃった……」


しずくちゃんは、申し訳なさそうにうつむいた。


「次の電車でも間に合うよ。ちょっと急げば」


僕が声をかけると、彼女はそっと制服の襟元を引っ張る。

階段を降りただけなのに、顔にはうっすら汗が浮かび、息も少し荒い。

肩――いや、胸が上下していた。


それでも彼女は何も言わず、じっと電車の来る方を見つめていた。

ブレザーの袖口をぎゅっと握るその横顔には、静かな覚悟のようなものが見えた。


やがて、新しい電車がホームに滑り込んでくる。

窓越しに見えるぎゅうぎゅうの車内。

吊り革はすべて塞がり、扉の前の人たちは肩がぶつかり合っている。


「……いくよ、しずくちゃん」

「……う、うん……っ」


ドアが開いた瞬間、背後から押し寄せる人の波に、ぐっと押される。


ぎゅう、と背中が密着する。腕も動かせない。

目の前には、しずくちゃんの顔。


ほんの数センチ。見つめるつもりはなくても、視界に入ってしまう。


「っ……ご、ごめんなさいっ……!」


しずくちゃんが、真っ赤になりながら視線を逸らす。

僕も同じだった。意識しないようにしても、どうしても視線が逸れない。


制服越しに伝わる、形と柔らかさ。

わざとじゃないと分かっていても、距離はゼロに近い。


呼吸が浅くなる。心拍がどんどん速くなる。

僕は平静を装って、そっと目を閉じた。


(……朝からこれは……刺激が強すぎる……)


彼女は小さく俯きながら、自分の胸元をちらりと見た。

そして、眉を寄せて、唇を噛む。


「……う、うぅ……私のせいで、こんな……っ」


消え入りそうな声。でも、僕には聞こえていた。


彼女は、自分の体が他人との距離感に与える影響を、痛いほど意識している。

どうしようもないのに、責任を感じているなんて。


「もうすぐ降りるから……大丈夫だよ」


できるだけ優しく声をかけると、彼女は小さく頷いた。


車内の揺れに合わせて、彼女はほんの少し身体を引こうとする。

でも、動けるスペースはどこにもなかった。


わずかな摩擦と、深い沈黙。

誰も何も言わないけれど、互いの存在を強く意識していた。


やがて、アナウンスが流れ、電車が減速しはじめる。


「……もうすぐ、着くから」

「……うん……」


彼女の声は、ほんの少しだけ安心したように聞こえた。


ドアが開くと同時に、僕たちは一斉に身体を動かした。

わずかな隙間を縫うように抜け出し、ようやく外の空気を吸う。


しずくちゃんは、小さく肩で息をした。いや、胸が、揺れていた。


「……間に合いそうだよ。急ごう」

「えっ!? ま、まって、走るの……!?」

「走らないと、ホントに遅刻しちゃうよ」

「っ、う、うん……わ、わかった……!」


僕が先に駆け出すと、彼女も胸元を押さえながら走り出す。

制服の中で揺れるものを両腕でぎゅっと抑える。

でも、抑えきれない。


(……視線、感じる……!)


きっと、彼女の頭の中ではそんな声が鳴っていたはずだ。

控えめな足音、かすれた息遣い。

ギリギリのダッシュで、ようやく教室にたどり着いた。


チャイムが鳴る、ほんの数秒前だった。


「は、はぁ……っ、はぁ……っ……」

「間に合ったね。……おつかれさま」


しずくちゃんは席に着いたまま、息を整えている。

……いや、整っていない。胸の上下がまだ収まらない。


そして――ボタンがひとつ、外れかけていた。


「……っ、やば……。取れそう……」


慌てて胸元を押さえるしずくちゃん。


「……見てないよ。大丈夫」

「~~っ、見たじゃん……見てたじゃん……!」


耳まで真っ赤にして、制服の裾をぎゅっと握りしめる。


「……あとで直してあげるから」

「だ、だいじょうぶ、自分で……っ……」


でも、そう言いながらも、どこかほっとしたように、彼女は小さく笑っていた。


僕らの朝は、まだ始まったばかりだ。

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