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巨乳の彼女を恥ずかしがらせるだけの話  作者: りむ


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18/21

#18 部活に行くだけの話

秋の朝。日曜日なのに、リビングに現れたしずくちゃんは制服姿だった。


「……なんか、不思議だよね。日曜日に制服って」

「うん……。でも、しょうがないの。外部の先生の都合で、茶道部は毎週日曜なんだもん」


彼女はそう言って、小さくため息をつく。

部活動中は着物を着る決まりらしく、これから茶室での準備がある。


茶道で着物を着るには、体型を“着物向き”に整えなければならない。

凹凸の少ないほうが、直線的な布地には似合うらしい。


思わず、鏡の前のしずくちゃんに目を向ける。

可愛らしいシュシュを使って、髪型をポニーテールにしている

両手で髪をアレンジすると、豊かな胸も上に引っ張られるように動き、その存在感が増す。ブラウスのボタンが弾けるのではと心配せざるを得ない。

誰がどう見ても着物が似合う体型とは言いがたい。


「……んっ」

鏡越しに、彼女の頬がほんのり赤くなる。僕の視線に気づいたらしい。


「……な、なんか見てるでしょ」

「いや、ボタン飛びそうって思って」

「……ふーん。もうその手は通じないよ」


そう言って、しずくちゃんは、そっとボタンを2つ外した。

恥ずかしがらせようとした僕に対して、しずくちゃんの意外なリアクション。


「……ほら」


しずくちゃんはブラウスの第二ボタンあたりを少し引っ張って、その裏地を僕に見せる。

パチンと小さく音がして、ブラウスの間に仕込んだスナップボタンが、そのまま形を保っていた。


「前に、みゆさんに付けてもらったやつ。……これのおかげで、ちょっとだけ安心できるの」


小さな誇らしさと、どこか照れくささが混じった表情で、しずくちゃんは笑った。

その笑顔が、僕の胸の奥を優しく打つ。


「……すごいね、それ。全然開かない」

「ふふ。わざと引っ張っても、ちゃんと止まっててくれるの。……私の味方って感じ」


そう言って、手を離すと、スナップが自然とブラウスを元の位置に戻す。

その様子を見ながら、しずくちゃんは少しだけ胸を張ってみせた。


「……目立つのは嫌だけど。でも、これがあると……ちゃんと、前を向ける気がするから」

「うん。そういうのがついてるって外側からは全然わからないね。よかったね、安心できて」

「……ありがと。……ふふっ、これでボタンの心配はしなくて済むかな」

「うん。ていうか、前より堂々としてる気がするよ?」

「えっ……そ、そんなことないってば……!」


頬を赤くしながら、しずくちゃんはリボンの形を整える。

その仕草が、いつもよりちょっとだけ軽やかに見えた。


「でも……確かに、ちょっとは前より気にせずに動けるかも。それって、地味に嬉しいよね」

「安心できるって、地味だけど大事なことだよ。特に毎週のことだし」

「……うん。今日も、ちゃんとお点前できるように……頑張ってくるね」


着付けでは、体型を着物に合わせる。直線と平面で構成された布地に。

しずくちゃんの場合は、胸を潰して、胸下を膨らませることになる。


胸を潰すためによく使われるのは、和装ブラ。だけど、市販のものではしずくちゃんに合うサイズがなくて、ノンワイヤーのブラで胸を潰す。

そのブラも、なんというか使い込まれている印象……。


「こういうのをジロジロ見るの良くないよ……?」

「ご、ごめん」

「私だからいいけど、他の人にはそんなことしないでね」

「それは大丈夫。しずくちゃんにしか興味ないから」

「っっ~~~~! もうっ!」


胸下にはタオルを当てて、身体の凹凸をなくす。


「……またタオル増やさないとだめかな」

独り言のように呟いて、畳んだタオルをバッグに詰め込む。


「昔は2枚で済んでたのに……今じゃ、5枚……」

「また、大きくなったんだね」

「言わないでよ……!」


慌ててバッグの口を閉じる。その仕草さえもぎこちない。

詰め込みすぎたバッグはパンパンで、持ち上げるとずしりと肩に食い込む。


ベルトを斜めがけにした瞬間、布が胸の谷間を通り抜けてぴったりと収まる。

そのせいで、かえって胸の大きさやかたちが際立ってしまう。


「……やだ、目立つ……」

カーディガンの前を押さえ込み、俯いたまま小声で漏らす。


「別に、誰も気にしないって。平常運転だよ」

「気にするの! ……私が」


恥ずかしそうに唇を尖らせ、肩をすぼめる姿は、まるで試合前に緊張している選手のようだった。


「……でもさ、さっきスナップボタン見せてくれたとき、自然と僕に下着見せてたよね?」


言った瞬間、しずくちゃんの顔がみるみる赤くなる。


「っ……それは、ち、違うの……!」

「いや、こっちは正面から見せてもらったから、いまさら気にすることなくない?」

「ちがうの……全然ちがうの……! 好きな人に見られるのと、そうじゃない人に見られるのは……全然、意味が違うから」

「え……」


その言葉に、一瞬、息が詰まる。


「……あのときも、平気だったわけじゃないよ。恥ずかしかったし、見せたかったわけでもないけど……でも、“見られてもいい”って思えたの」

「……そっか」


しずくちゃんは、他の部員に着替えを見られるのが恥ずかしい。それに、胸の分だけ着付けの工程が多く、時間がかかってしまう。

だから、誰よりも早く学校の茶室に向かうのが習慣になっている。そこで、ゆっくりと着付けをするみたい。

でも、今のしずくちゃんには、その習慣が必要なくなっているように思える。

胸以上に、内面が成長している。……本人は自覚していないようだけれど。


「いってらっしゃい」と僕が声をかけると、しずくちゃんも「行ってきます」と応える。


……と、そのまま出て行くかと思ったら、玄関の前で立ち止まった。


「……ねえ」


背中越しに、小さな声が返ってくる。


「“行ってきますのキス”って、そろそろ、したほうが……いいのかなって」

「えっ?」

「や、やっぱりナシで! 忘れて!」

「いや、したいなら……その、僕も別に……」


僕が言いかけると、しずくちゃんがそろそろと振り返る。

頬が赤い。耳も赤い。目も潤んでて、もう泣きそうなレベルで緊張してる。


「……じゃ、じゃあ……ちょっとだけ、目つぶって……」


言われた通りに目を閉じる。僕の心臓が、ひどくうるさい。


だけど……いつまで経っても、何も起こらない。

恐る恐る目を開けると、しずくちゃんは、顔を両手で覆って、しゃがみ込んでいた。


「むり……! やっぱむり……!」

「しずくちゃん!?」

「だ、だって……顔近づけたら……ドキドキがもう……っ」


恥ずかしさのあまり、顔を隠したまま小声で抗議してくる。


「……次、絶対成功するから……今日は、予行演習ってことで……!」


そう言って、立ち上がると、そそくさと靴を履く。


「い、いってきますっ!!」

「あっ、うん、行ってらっしゃい……!」


バタン、と玄関の扉が閉まる。

僕はその場に立ち尽くしながら、思わず苦笑した。

——でも、なんかいいな。こういうのも。

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