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巨乳の彼女を恥ずかしがらせるだけの話  作者: りむ
夏の章

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16/21

#16 気にするだけの話/水着を着るだけの話

期末テスト、身体測定、健康診断――。ここ数週間は「評価されること」が続いた。

そして、今日。それぞれの結果が返ってきた。


「……どうだった? テスト」


しずくちゃんの部屋で、僕がそう訊くと、彼女はプリントをぎゅっと抱きしめたまま、視線を落とした。


「ふつう……だったよ」


控えめな声。でも、僕は知っている。しずくちゃんが自分自身に課している“ふつう”の基準は、相当高いところにある。テストなら全教科で90点以上、成績ならオール5という意味で、ひとつでもそれに達していないと、本人だけはどこか浮かない顔になる。

しずくちゃんの中には、いつからか“減点方式”の物差しがある。満点が当たり前。そこから少しでも欠けたら、「私はダメだ」と思ってしまう。中学3年の学年末の体育の成績が「4」だっただけで、ため息をつくくらいに。


「ふつうって……体育以外オール5だったよね?」

「……っ!」


バレたというより、「やっぱり知ってたの!?」という顔をするしずくちゃん。顔を赤くして、プリントの束をぎゅっと抱きしめた。


「……だって、体育……、あんまり……がんばれないし……」

「まあ、走ると揺れちゃうからね」

「~~~~~っっ!!」


机をばんっと叩くしずくちゃん。反動で胸が揺れる。小さな反撃が、むしろ可愛らしい。


「……そういうの、ほんとにやめて……!」

「……走ると、胸が……。どうしても、全力でできなくて」


彼女の言葉は途中でしぼんでしまった。でも、その気持ちは痛いほど伝わる。周りに見られてる気がして、視線が怖くて、身体が思うように動かない。そんな自分にも「減点」をつけて、ますます自信をなくしてしまう。だけど、こういう女の子にありがちな“胸の大きさを理由に体育を休む”ということがない。


「……で、テストの結果、どうだったの?」


何気なく聞いたつもりだったけれど、しずくちゃんはぴたりと動きを止めた。視線はそらしっぱなし。答えは返ってこない。


「……ふつう、だったよ」


さっきと同じ返事。曖昧な笑顔と一緒に。それが“本当はめちゃくちゃ頑張った結果”なのを、僕は知ってる。

だから僕は、わざとらしく手を叩いた。


「よし。じゃあ恒例の――やろうか」

「……え? な、なにが……」

「テストカードバトル。結果はカードで示そうのやつ」

「~~~っ……また、それぇ……」


しずくちゃんは顔を赤くしながら、机の引き出しから小さなメモ用紙を9枚取り出した。

各教科の点数を書いていく――カードゲームみたいに。恥ずかしがって点数を見せない人も、ゲーム形式にするとノリノリで見せるようになる。


「うぅ……やっぱり、このルール考えたの、間違いだったかも……」

しずくちゃんはぶつぶつ文句を言いながら、メモに点数を書いていく。



ルールは簡単。

・教科は、国語、数学、英語、理科、社会、保健体育、技術家庭科、音楽、美術の9科目。

・それぞれのテスト結果を1枚のカードに書いて、それらを好きな順番で 1枚ずつ出し合って、点数の高い方が1勝。


でも、たぶん、彼女にとっては簡単なんかじゃない。

しずくちゃんは、いつも“比べられること”に敏感。数字はその象徴みたいなもので、“ふつう”って言葉の裏には、誰よりも自分に厳しい彼女の心が隠れている。カードを1枚を出すたびに、彼女は少しだけ息を詰める。僕は点数よりも、その横顔ばかり見てしまっていた。


「数学、95」

「英語……96。やったっ!」


嬉しそうな笑顔。でも、勝ったというより、“ちゃんとできてた自分”を確かめるような表情。


「理科、90」

「社会、99……勝った! けどせっかくの99点が……」


そんな調子で、僕としずくちゃんは一進一退の勝負を繰り広げていった。

そして、最終戦。8枚出し終えて、現在のスコアは4勝4敗。残すは、互いに最後の1枚。


「……わぁ、最終戦で決着って、ほんと定番すぎるね」

「うう……もう、お腹痛くなってきた……」


僕の手元に残っているのは、97点の国語。これなら勝てる。

しずくちゃんに残された手札は保健体育。今回の範囲は、“発育”や“生殖”で、一生懸命勉強すること自体が恥ずかしいはず。

だけど、しずくちゃんの最後のカードを見た瞬間――思わず、声を失った。


「……保健体育、100点?」

「~~~~っっっ!!」


顔を真っ赤にしながら、しずくちゃんはカードを見せると、そこには、確かに「保健体育 100点」と書かれていた。


「な、なんで最後にそれ出すの!」

「だって、これを出さずに勝ちたかったんだもん……っ!」


しずくちゃんは、指先でカードの端をつつきながら、うつむいた。


「…………がんばったもん……! それで、走れないのを帳消しにしたかったの。……ちゃんと全部覚えたの。ほんとにがんばったの……だから……」


最後の言葉は、声にならなかった。それでも、彼女のカードに書かれた“100点”の数字が、何より雄弁だった。


「……ま、まさか、勝ちにきてたとはね……」

「そうだよ……。勝負って言ったら、ちゃんと勝ちたいもん」

「……でも、ちゃんと勉強したんだね、保健体育」

「~~~……っ、もう、その話やめて~~~っ!」


顔を両手で覆いながら、しずくちゃんはぷるぷると震えた。いつものように、恥ずかしさでいっぱいだった。でもその手の奥から、ちょっとだけ――笑ってるのが見えた。

それは、彼女が自分との戦いに勝った証のように映った。


「健康診断も“異常なし”だったし、問題なしだね」

「……こんなに大きいのに、“異常なし”って、どういうことなんだろうね……。教科書にも載ってなかった……」

「え?」

「な、なんでもない!」


しずくちゃんはぷいっと顔を背けた。耳が真っ赤になっている。でも、その横顔を見て、僕は思う。ほんとは、もっと自信を持っていいのに。

けれどそれを今、口に出すのはきっと違う気がした。


そして、自然と身体測定の話題になる。


「……ねえ、さっきのって本当?」

「うん。本当」

「身長、私より10cm高いのに……体重、同じって……」

「しずくちゃん、54キロなんだ」

「~~~っっ!! もぉ~~~~!! それ言わないで!! 本当に怒るよっ!」


僕は、身長160センチ、体重54キロ。

しずくちゃんはボールペンを握ったまま、ぴたりと動きを止めた。頬にじわじわと赤みが広がっていく。


「……うそ……」

「いや、うそじゃないよ。身体測定の数字、そうだったんだから」

「だ、だって……っ」


ということは、しずくちゃんは、身長150センチ、体重54キロということになる。同じ体重だということを認めたくないって、すごく伝わってくる。

彼女は声を詰まらせ、手元に視線を落とす。両手で測定結果をぎゅっと挟む仕草は、まるで秘密を隠そうとするみたいだった。


「私、そんなに……、みゆさんも身長148センチ、体重44キロって言ってた」


僕の知らないしずくちゃんの友人の名前。数字を聞く限りは小柄な印象。


「服も、胸がきつくなったんじゃなくて、ただ太っただけだったんだ……」

「部活で着物を着るときに、違和感がなかったのも、太ったからだったんだ……」

「カーディガンを買うときも、『大きいサイズのコーナー』に案内されたの見たよね?」

「運動部じゃなくなって、体育以外で体を動かさなくなったからかな……」

「『BMI 24』 で検索しようとしたら、サジェストに『太ってる』って出てきた……」


しずくちゃんが闇に堕ちつつある。なんとかしないと!


「いやいや、全然! 見た目とか、普通に……」

「ううん……普通じゃない……」


しずくちゃんは、小さな声でかぶりを振る。そして、ぽつりと――。


「今度のプールの授業ですべてが明るみになるから!」

「大袈裟だよ」

「今のうちに試着しておかないと! ちょっと待ってて」


そう言って、しずくちゃんはバタバタとクローゼットをあさり、中学のスクール水着を取り出してバスルームへ駆け込んだ。

ドアが閉まる音のあと、しばらくの沈黙。……が、すぐに焦った声が響いてきた。


「……え? ちょっと、え……?」


バスルームの中から、布ずれの音と、戸惑うような気配が伝わってくる。


「……入らない、うそ……なんで……?」


ドア越しの声は小さい。でも、焦りと戸惑いがはっきり伝わる。

やがて、バスルームの扉が少しだけ開いた。タオルを胸元まで巻いたしずくちゃんが、ひょっこりと顔だけ覗かせる。


「……あの、お願いがあるんだけど……」

「なに?」

「後ろ、ファスナーが……上がらないの……」


それだけ言うと、しずくちゃんは顔をそむけ、タオルの奥で身じろぎした。バスルームからそっと出てきた彼女の体には、中学時代のスクール水着がなんとか入ってはいる……けど、明らかに胸の部分だけがパンパンだった。


「……うわ……」


思わず僕がそう呟いてしまうほど、布地が張り詰めていた。胸のラインに合わせて無理やり伸びているせいで、生地の縫い目が目立つ。ロゴの印字はゆがみ、胸下の切り替えラインが本来の位置よりだいぶ上にせり上がっている。


「……なんか、苦しい……」


しずくちゃんは、胸のあたりをそっと押さえながら、小さく唇を噛んだ。


「……背中のファスナー、あと少しなんだけど、ここから先が……ぜんっぜん上がらないの……」

「う、うん……ちょっと、やってみるね……」


僕は彼女の後ろに回り、そっとファスナーに手をかけた。だけど、生地がこれ以上伸びそうになく、引っ張ればどこかが破れそうだった。


「……うーん、ごめん、これ……たぶん、ムリかも」

「やっぱり……」


しずくちゃんは鏡の前に立ち、じっと自分の姿を見つめた。胸のふくらみだけが不自然に強調されていて、水着というよりもサランラップみたいに体に巻きついているように見える。


「……なんで、こんなにキツいの……?」


ぽつりと漏れた声。


「胸だけ……入らない……前は、普通に着れてたのに……」


手でそっと自分の胸をなぞるように押さえながら、しずくちゃんは呆然としていた。


「……高校入ってから、ちゃんと測ってないけど……明らかに、大きくなってるよね……」

「……うん。そうだと思う。これ着てたとき、GかHくらいだった」


正直、成長というより、“進化”レベルだと思う。でも、彼女は素直に喜んでいる様子ではなかった。


「こんなの……学校で着たら、絶対変に見られるよ……ていうか、これ授業で着たら、破れるよね……?」

「さすがに、それは……新しいの買わないとね」

「……でも、合うサイズが売ってるのかも、わかんない……サイズ、どうしよう……」


しずくちゃんはバスタオルを引き上げ、胸の下にしっかり巻き直す。


「……ちょっとショック。太ったとかじゃなくて、なんか……もう、“服がついてこれてない”感じ……」

「……たぶん、そうだね」


彼女は苦笑する。けれど、その表情はどこか複雑だった。


「ねえ……ちゃんと、変じゃない? 見てて、変じゃなかった?」

「ううん、全然。むしろ、すごく――」

「言わないで! そういうの、今は聞きたくないっ!」


しずくちゃんが顔を真っ赤にして、僕の言葉を遮った。だけどその直後、ちょっとだけうつむいて、ぽつりと呟いた。


「もしかして……胸のせい?」


そう言って、彼女はもう一度タオルを巻き直して、バスルームに戻っていった。


「……もう、どうしても気になるから、ちゃんと調べる!」


そう言って、しずくちゃんは脱衣所の体重計を引っぱり出してきた。


「え? 体重はもう測ったでしょ?」

「ううん、そうじゃなくて……“胸だけの重さ”を測るのっ」


僕がぽかんとしている間に、しずくちゃんはさっさとタオルを胸の上に巻くと、大きさの違う洗面器を2つ取り出した。小さいほうには水が満ちている。どうやら本気だ。


「まず、ぜんぶ着たままで体重を測るでしょ?」


ピッ、と体重計に乗るしずくちゃん。表示は「54.2kg」。


「次に……。いいって言うまで向こうむいて」

「それは構わないけど、鏡で全部見えるよ?」

「もうっ! ……いいから、外に出て!」


言われるがままに脱衣所を出ると、曇りガラス越しに、しずくちゃんがバスタオルを外したのがわかる。シルエットだけでも、大きさが伝わるようだった。


「……これで、“胸だけ”状態を作って……っ」


ガラス越しに、しずくちゃんが胸を持ち上げたのがわかる。しっかりと両手を使って左胸を持ち上げると、右胸との差がシルエットで伝わる。

持ち上げた胸を洗面器の中に入れると、水が溢れ出る。伝わるのは音だけだけど、結構な量が流れていったように感じる。


「冷たっ!」

(……僕は何を聞かされているんだろう)


「もう入ってきていいよ」


バスルームに入ると、しずくちゃんは溢れた水の体積を測っていた。水は、体積と質量がほぼ等しいので、この数字が、“胸だけ”の重さになる。


「5.2キロ!? う、うそでしょ……!?」

「えっ、それって……」


目をまんまるにして、自分の胸と水を交互に見るしずくちゃん。


「て、てことは……私の本体、49キロってことになるよね!? 150センチで49キロなら、標準体型だよね!? ねっ!?」

「う、うん、というか……胸だけで5キロもあるの、逆にすごいよ……。それはそれで、標準体型ではないかも」


しずくちゃんは、胸を支えたままガクッと膝を折った。


「そ、そんな……重いはずだよぉ……体育で走るたびに揺れて痛いし、肩こるし……そりゃ制服もパツパツになるよぉ……っ」


でも、その顔はちょっと安心したようでもあった。


「……でも、よかった……太ってるんじゃなくて、胸が重かっただけだったんだ……」


しずくちゃんは、タオルをぎゅっと握りながら、小さく笑った。


「……ねえ、これ、保健体育の自由研究にならないかな……。今回の試験範囲だし、“関心・意欲・態度”の点数になるよね?」

「たぶん、“発育”や“生殖”に興味津々だと思われちゃうよ……」


僕が苦笑しながら答えると、しずくちゃんは顔を真っ赤にして、タオルの端でぺちんと僕の腕を叩いた。


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