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巨乳の彼女を恥ずかしがらせるだけの話  作者: りむ


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13/21

#13 会うだけの話

舞踏会の後、二人きりになった控えの間で──

お嬢様が「女の子同士でも、愛しては駄目かしら」と呟く。

従者は驚きながらも、「誰よりも大切に思っています」と答える。


お嬢様がそっと従者の手を握る。

「あなたの存在は、私にとって誇りなの」


***


それは、お嬢様が庶民の女の子に惹かれる話だった。夢姫さんの新作SSのページをスクロールするたび、私・園宮しずくの胸はくすぐられるように高鳴った。


(……女の子同士の、こういう距離感……わかる。好きって言わないけど、伝わる感じ……)


読み進めるうちに、まるで自分が従者の立場になったみたいで、気づけば枕をぎゅっと抱きしめていた。


(……なんで、あの人の顔が浮かんじゃうの……)


小さな声が、夜の静けさに溶けていった。スマホを伏せて、枕に顔を埋める。

深呼吸をしてから、思い切ってスマホを開き直した。夢姫さんの新作ページの下、コメント欄に指を伸ばす。


『新作、拝読しました。お嬢様と従者の距離感がとても素敵で……特に最後の手を握る場面、胸がぎゅっとしました。明日お会いするのが、ますます楽しみになりました!』


送信ボタンを押した瞬間、心臓が跳ねた。

それが、昨日の夜。


***


駅前の広場に着いた瞬間、私は足を止めた。目の前に、私とほとんど同じカーディガンを着た女の人が立っていたから。


(……あ、たぶん……夢姫さん……)


一気に心臓の音が速くなる。想像より、ずっと小柄で、でも、存在感がある女性だった。カーディガンの下からちらりと見える、ギャルっぽい派手めなトップス。長いネイルに、ゆるく巻かれた明るめの金髪。肌はつやつやしてて、目元のメイクもばっちり決まっている。

でも、不思議と「きつい感じ」はなくて、むしろ、どこか柔らかい雰囲気をまとっていた。


(背、小さい……え、私と同じくらい……? でも私よりずっと細い……)


華奢というより、「コンパクト」って言葉がぴったりで。細い腰、華奢な手足、それでいてお尻や胸のラインがちゃんと女性らしいのが、また目を引く。


(同じカーディガン……わかってたのに、いざ並ぶと、なんか……恥ずかしい……)


まるで、あかぬけ動画のビフォーアフターみたい。わざわざ注釈を入れるまでもなく、私が「ビフォー」だ。仮に私がアフター側に出てきても、「オチで草w」とか言われちゃう。

……こういうネットのノリみたいなのって、リアルでは出さないほうがいいのかな?

思わず柱の陰に隠れて、スマホの画面を見つめる。「もう着いてます」のメッセージを打ちかけて、消す。いや、もう目の前にいるんだし……。

でも、声かけるのって、なんでこんなに勇気がいるんだろう。


(このまま帰っちゃいたい……でも……)


自分で会おうって決めたのに。楽しみにしてたのに。逃げたら、絶対後悔する。

一歩踏み出す。もう一歩。息を吸って、声を出す準備をする。

でも、名前を呼ぼうとして、一瞬躊躇う。


(ゆ、夢姫さんって……呼ぶの……? ハンドルネームって、リアルで呼ぶと変な感じ……!)


もう恥ずかしすぎて、逆に開き直ってしまいそうだった。


「……あのっ、夢姫……さん……ですか?」


ようやく声が出た瞬間、女の人がぱっと顔を上げた。


「あっ……! もしかして、リリーさん……?」


そう言って微笑んだその顔は、柔らかくて、どこかあたたかかった。


(……あ、笑ってくれてる……よかった……)


体の奥にぎゅっと詰まっていた空気が、ふっと抜ける。さっきまで耳の奥で鳴っていた心臓の音が、すうっと静まっていくのが自分でもわかる。


(でも、やっぱり……並んでみたら、余計……!)


私と同じ色のカーディガンを着ていて、だから余計に自分の胸が目立つ。緊張と羞恥で、顔が熱くなる。カーディガンの前をそっと引き寄せて、無意識に胸元を隠した。


「会えてうれしいです。思ってたより、全然怖くなかった……」

「えっ、あたし、怖そうに見えました……?」

「いえいえ、違います違います! なんかこう……文体とか、とんでもない限界オタクの方だったらどうしようって……」

「でも、それはお互い様ですよ? あたしもめちゃくちゃ緊張してました」


夢姫さんが少し照れたように笑って、少しだけ肩の力が抜けた。


「……あの、場所、移動しませんか? 立ち話もあれですし」

「はい、ぜひ……!」


そして私たちは、駅前から少し離れた静かなカフェへ向かうことにした。

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